衣装バトル&今晩セビージャを発ちます。

みなさんこんにちは!いかがお過ごしでしょうか?
こちらセビージャも寒いです。今晩セビージャを発ちます。スーツケースの準備もだいたいできました。火曜に日本に着きますので、その後またブログを更新しますね。
この1週間はさんざんでした・・・出だしはよかったのです。2週間程前、風邪も治りやっと外に出ると、巷はバーゲンまっさかり。ウィンドウ・ショッピングがてらぶらぶら歩いていたら、おお!!!飛び込んで来たのです。その衣装が。私の目に。そう、こういう時、私が衣装を見ているのではなく、衣装が私を見ている。いい!この衣装!素敵だ!しかも絶対私に似合う!なぜだか分からないけど、こういう直感がある時は絶対買うべき。しかしそのお店に飾ってある衣装はひえ〜と思うほど高価なものばかり。見るからに高級な布やフリルをふんだんに使った衣装。デザインもセビージャ特有の華やかさにあふれています。でもそこは入り口の呼び鈴を押さないと開けてくれない、ちょっと敷居の高いお店。いつも外から眺めていて、素敵だな〜でも私には買えないよ・・・と思っていたお店だったのです。
でもその日は意を決して呼び鈴を押す。ドアを開けてくれたお姉さん2人は・・・美しい。美しすぎる。2人とも身長175センチはありそうなスラッとした身体にすんごく小さな顔。そこに巨大な目とすべり台のようなまつげ。セビージャの女性はきれいな人が多いけれど、この2人は群を抜いている。あまりの美しさにあっけをとられてしまいました。我に返った時に、そうか、このお店の衣装はこのお姉さん達のような女性が着る衣装なのか・・・と気づき、一瞬きびすを返して帰ろうかと思ってしまいました。が、なぜかそのままお店に入ってしまった私。これまでのスペイン生活で得たのはこの図々しさかもしれません。
聞いてみると、そのお姉さん達はモデル兼お店の売り子とのこと。どうりで美しいわけだ。フラメンコ衣装のファッションショーで日本にも行ったことがあるそうです。お店の中にはそのショーの写真が飾られ・・・って、この写真いろいろな雑誌でみたことあるよ。あ!この店はあのデザイナーの店だったんだ〜!初めて気づくおバカな私。そのデザイナーはフラメンコ界、ファッション界の人なら誰でも知っている有名な人。あれま〜。しかし驚いている場合ではありません。あの衣装のお値段は?おおお!!!なんとバーゲンで60%OFF。この値段だったら私にも買えるわ!バーゲン万歳!!!すぐに試着とお直しをお願いしてました。
気になったのは一点だけ・・・袖が短い。私は自分が踊っている時にひじが丸出しになることを好みません。別にひじにトリックがあるわけではないのですが、ひじが袖で隠れていた方が、私の場合腕の動きが美しく見えると思うのです。聞いてみると長袖に変えてくれるということなので、フラメンコの踊り用の長袖をお願いしました。
そう、ここまではよかったのです。しかし、その袖が・・・。一体この一週間、袖の試着を何度したことでしょう。少なくとも5回。とにかく腕が上がらない。上げても袖の布が腕に食い込み、この袖では踊れないのです。「最初からフェリア(春祭り)で踊る簡単な動き用の袖ではなくて、フラメンコの踊りに対応できる長袖、とお願いしたんですけど」と言っても、結局腕はきちんと上がらないまま。最終的にはお直しの方と私で大バトルになってしまいました。一緒にその直しを見に来た友達が、「あれはお客に対する態度ではない。ジュンコが東洋人だからあんな態度をとるんだよ。それにしてもジュンコもよくたたかってたよね。あのバトル、まるで映画だったよ。」いやいや、そんなことより、とにかく踊れる袖を作ってくれ〜!!!
最終的には普段お店には顔を出さない、デザイナーが衣装を見て下さることに。満面の営業用スマイルを浮かべて挨拶してきた彼女。ああ〜こういう笑顔を作る人にロクな人がいない・・・私の前に暗雲が立ちこめました。そう、責任者が出て来て丸くおさまるのが、日本。余計に話がこじれるのがセビージャ。そのデザイナーは先程のスマイルを5秒で引っ込めたかと思うと、衣装を試着した私の手首をいきなりつかみ、私の腕を頭上までえいっと持ち上げたのです。上げたり下げたり、上げたり下げたり。はああああ?・・・今の私、もしかしてアイアイ?(♪おさ〜るさ〜んだよ〜♪)あっけにとられた私に「ほら、腕上がるじゃない。踊れるわよ。」・・・・何この対応?きょとんとしている場合ではない。「腕は確かに上がりますけど、布が腕に食い込んで痛いんです。ご覧になってお分かりになりませんか?しかも、腕を上に上げるだけならできてもフラメンコの踊りの動きには対応できません。」すると彼女は「私は35年もこの仕事をしてきて、プロフェッショナルな踊り手に衣装を作ってきたけど、今まで一度もこんなことはなかったわ。この袖に全く問題はない。この袖で踊れないなら、あなたの踊りに問題があるんじゃないの?」
・・・うっそ。そんなこと言われるなんて。そして彼女は続けました。「気に入らないなら返金するわよ。それでいいでしょ?」静かな怒りがこみ上げ始めた私。でも冷静に一気にこうに言ったのです。「よくありません。何度も何度も試着に来て、その間私は自分の仕事もできませんでした。私の時間は私のものです。袖ができないのであれば、最初からそうおっしゃって下されば、お直しを頼みませんでした。今週末日本に帰るのに新しい衣装を用意するつもりだったのです。でも、もう他のお店で衣装を探す時間もありません。」すると彼女は一瞬うっと詰まり目を見開きましたが、「じゃあ、袖用の新しい布をあげるから、好きなように袖を作りなさいよ」そして「あら〜、電話が入ったから失礼!」と言って去っていきました。
まったく、なんと野蛮で文明化されていない人なのでしょう。驚きあきれ、頭痛までしてきた私。そんな私に小声でお直しの人が言いました。「この間は言い争いになってしまってごめんなさいね。ただ私はあなたに満足して衣装を買ってほしかったのよ。でも私があなたの袖にかかりきりになっていることに彼女(デザイナー)が怒ったの。私は彼女の支持通りにしか縫えないから・・・私ができることはこれで精一杯。本当にごめんなさいね。」・・・やっぱりあのデザイナー、ただものではない・・・
仕方がないので、以前衣装を買ったことのあるお店に直行。そこのお店のデザイナーMと私はとても仲良し。原則的には他のお店の衣装のお直しはしないとのことですが、私の身に起きた事をカクカクシカジカ話したところ、見て下さるとのこと。Mは私の話しを笑いながら聞いていました。「そのデザインの袖はは誰もが縫えるわけではないの。特別な技術が必要なのよ。でも不可能ではないわよ。衣装を見せて。」ありがとう!!!!M!!!そして衣装を取り出した瞬間、Mは本当に笑い出し「Pの衣装ね。」とズバリあのデザイナーの名前を言い当てたのです。さすが。
Mの話しによると、まず布の裁断の方向がまずい。そして袖の幅が少なすぎる。やっぱり・・・。最初のお直しで既に腕が上がらなかった時に、お直しの人は「新たな布で袖は作れない」と言い張っていました。何かキナ臭い。高価な布なので多分ケチったのでは?と私はうすうす感づいてはいたのですが。そしてMはファルダ(スカート)の部分を見てこう言ったのです。「このデザイン、私の衣装にもあるわよ」さらに衣装をひっくり返しタグを見て「手洗い表示になっているけれど、洗濯機で短時間洗い、軽い脱水にした方がいいわよ。手洗いだと干した時に水の重みで布が痛むし、色落ちして他の部分にシミがつくかも。」
は〜恐れ入りました。勉強になりました。結局日本に帰るまでには袖直しは間に合わないのですが、また3月にセビージャに戻って来た時にMにお直しを頼もうと思います。それにしても、P。有名デザイナーだけど、やはりブランド名だけで判断してはいけない。人間重要なのは中身だと思うのです。
そんなこんなでばったばたの1週間。しかしスーツケースの準備はわりとすんなりできたので、今日は出発前までまだ余裕があります。日本はもっと寒いのだろうな〜。体調に気をつけてクルシージョ、ライブ活動に励みたいと思います。
では皆様もどうぞご自愛下さい。お会いできることを楽しみにしております!
2011年1月23日 長いブログになりました。お読み頂きありがとうございます。 セビージャにて。

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