「人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか?」公演を振り返る。②

soto01soto02みなさんこんにちは。先程の続きのブログです。

キッド・アイラック・アート・ホール(東京/明大前)にて「第3回アントニオ・ペレス来日写真展」と「第3回萩原淳子フラメンコソロ公演」を今年の夏に開催することを決めたのが昨年末。とはいってもアントニオと私で決めただけで(笑)そこから具体的な開催に向けての段取りと調整が始まりました。日程、経費。この部分をまず固めるためにホール側と連絡を取り合う。日程はそれ程でもありませんでしたが、経費に関しては苦心しました。恐らく世の中のフラメンコ舞踊家がフラメンコ公演をするにあたり、公演で大儲けすることはほぼないと思います。収支トントン、もしくは赤字。その赤字をどこまで少なくするかに懸けている舞踊家も多いでしょう。いかに経費を削るか、でも公演の質を落とす事なく。秘書や経理スタッフがいる舞踊団や舞踊家だったらそういう計算は全部おまかせでいい。でも私にはいない。自分でやらなければ。アントニオに話してもお金に関しては全然分からないみたい(笑)だから経費の計算は私がやっています。相当頭脳を使います。そう、踊るだけじゃないんです。

なんとか経費面でクリアーし、開催可能と判断して日程も決定。それが今年の1月中旬くらいだったかな。ちょうど、日本に一時帰国していた時でした。2月上旬に会場下見。1階ホールを実際に自分で見て、客席数、舞台設置方法、公演の演出がどのようにできるのかを確認。可能性を探る。ただ何曲か踊るだけならタブラオでいい。でもこのホールを使うからには、このホールでしかできないことを最大限行う。最大限引き出す。客席40の小空間ですから、大きな劇場ではできないことがたくさんある。でもでもだからこそできることもある。それは何か?

そして会場貸出料の内金をドンっと払う。払ってしまう。払ってしまった。

その後2月中旬、またセビージャに戻る。そこからが本当に忙しかった。戻ってすぐに1週間へレスのフェスティバルに参加。3月はセビージャでライブ出演続き。そして4月中旬から5月中旬の1ヶ月間また一時帰国することになっていたので(イベリアさん主催フラメンコフェスティバル福岡&大阪公演出演のため)、その間の東京・大阪・福岡で開催のクルシージョ準備。日本への帰路で4月上旬、イタリアのトリノコンクールに出場。

そしてその目まぐるしい日々の中、公演タイトル「人はなぜ絵はがきの風景を探すのか?」の決定。そして公演フライヤーの写真撮影。

毎回の公演の度にたくさんの人から言われます。「すごいタイトルですね」確かに一般的なフラメンコ公演のタイトルにしてはちょっと変わっているかも。でも元には、公演を通して何を伝えたいか?それがあります。今回の公演はポストカードをモチーフにしたアントニオの写真展「Nuevas postales, nuevos postales」と同時開催のため、私の公演でも絵はがき(ポストカード)を軸に考えてみようと思っていました。タイトルは疑問形になっていますが、私の中では疑問ではありません。疑問形をとることにより、この公演タイトルを読んだ人に考えてほしかった。ただ “フラメンコの公演を観に行きました、とっても楽しかったです。” という小学生の夏休み日記にならないために。

ちなみに、公演タイトルを考えるのに、ドラマの小説家のように書斎にこもったり、原稿用紙をくしゃくしゃに丸めて捨てたりしません。(笑)ネットサーフィンするここともありません。そのアイディアは突然やってくる。とにかく歩くのです。セビージャの町中を歩く。歩いている時にやってくる。でもアイディアを練るために歩くのではない。ただ歩いている時。スタジオに行く時、スーパーに行く時、飲みに行く時、フラメンコを観に行く時・・・etc。なんでもいいのです、ただ歩いている時に、なぜかハッとそれが浮かんでくる。思いついたらすぐアントニオに報告する。誰かに言わないと忘れちゃいそうだから。そんな時アントニオにいつも言われることは「紙に書け」。頭の中に浮かんだ事を言葉にするだけでなく、実際書くことによってさらに具体的になるし、問題点も見えてくるのだそうです。

本当のこと言うと、紙には書かずにワードに打ち込み、パソコンの中に保存しています。書いても書いた紙を失くしてしまうので(笑)。一発でこのタイトルだ!と決まる場合もあれば、多少字句を変えてよし!と決める場合もある。でも自分の中でこれでいく、と納得できないものは採用しません。

Postal57-1973「人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか?」フライヤー写真そして公演フライヤー写真。タイトルから絵はがきを使うことを決めていたので、自分の中で強烈な印象のあるセビージャの絵はがきを選びました。フラメンコを始めたばかりの頃、かれこれもう20年も前になりますか・・・、フラメンコのことなんて何も知らずに初めてスペイン旅行した時に町中で見つけた1枚のポストカード。なんだか分からないけど、これがフラメンコなのかな?!とビックリした1枚。

このポストカードを公演フライヤーに使おう。そうアントニオに伝え、OK! と言ったアントニオがとった行動は、ポストカードを真っ二つにビリっと破ったことでした。(笑)そして本人の写真展作品のように、破ったポストカードの女性の顔の半分と私の顔の半分をで一つの顔にする。そうして公演フライヤー用の驚くべき写真が出来上がったのでした。

(・・・続く)

2015年9月13日 セビージャにて。

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