「人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか?」公演を振り返る。③

Postal57-1973「人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか?」フライヤー写真みなさんこんにちは。前回、前々回のブログの続きです。

公演フライヤー用の写真を撮ったのはいいものの、「あれ、この写真ってもしかして著作権法にひっかかる???」と気付いてしまった・・・詳しい法律は分からない。でも実際にスペインで販売されているポストカードを勝手に使っているわけで・・・アントニオ曰く、ポストカードの図柄を全部使っているわけではないので(半分に破っているから)大丈夫、日本での公演だし、とのこと。でも、日本の公演だけど写真をFacebookにアップしたら全世界に広まるよ?訴えられたらどうすんの?!マズい、マズい。という訳でポストカードに記載されている販売元の「RE.CAR.SE」という所をネット検索し、電話でコンタクトをとってみる。どうもポストカードやポスターを扱っているセビージャの会社らしい。

RE.CAR.SE のHP→こちら

事情を話し、お宅のポストカード半分を使ってもいいですか?と恐る恐る、でもびびっているのががバレないようにしゃーしゃーと聞いてみると、「いいよ」とすんなりOKが出た!なんだ。大したことなかった、と一安心。詳しいことは分からないけど、いいって言っているんだからいいのだ。

・・・話変わって、数年前にスペインで婚姻届けを出した時もそうだった。一応スペイン国日本大使館のHP上では、日本人がスペイン人とスペインで結婚するにあたり提出する書類内容が記載されている。戸籍とか住民票とか、その中に「独身証明」というのがある。これは不法移民の多いスペインにおいて偽装結婚による重婚を防ぐためのもの。

在スペイン日本大使館HP「スペインでの婚姻について」→こちら

ただし各都市によって用意する書類は多少異なるので各自確認をしなければならない。セビージャで確認したら、なんと「独身証明」が提出書類に含まれていない。「独身証明って必要ないんですか?大使館のHPには記載されていましたけど」と確認すると担当の人が「そんなのいらないわよ」と一言。え、でも後でやっぱり必要とか言われても困るので(セビージャではよくある)再度確認すると、「いらないって言ってるんだから、いいの!!!」と怒られてしまう。大使館にその旨連絡したら「え!!!独身証明が必要ないってことは重婚できるってことじゃないですか?!」と。「はー、そうなんですけど、セビージャではいらないそうですので、いらないと言われている書類は用意しても意味がないかと。」・・・すると大使館の人もさすがスペイン人事情を察していらっしゃるからか「それもそうですね」とあっけなく会話終了。

そう、だからいいんです。相手がいいって言ってるんだから。そんなわけですんなり婚姻できたし、あのフライヤー写真も使用できました。(ちなみに萩原、偽装結婚でも重婚でもありません。)

まあこんな感じで、数え上げたらキリがない程、公演の準備というのは細々した作業がたくさんあります。公演写真を撮ったらフライヤーのデザインを考えたり頼んだり、宣伝、印刷、チケット販売、チケットお申し込み受付、チケット代入金の確認、チケットのデザイン、印刷、チケット発送・・・・公演のお手伝いさんの手配、連絡・・・どれか一つでも欠けると公演は成立しない。日本でお教室を構えている踊り手さんだったらそれらの事務作業を請け負ってくれる生徒さんがいるのかな?私のクルシージョの生徒さんもお手伝いをして下さる方々がいらっしゃるけれど、やはり何でもかんでも頼むわけにもいかず、ほぼ自分でやっています。

一番肝心な踊りが後回し。自分のソロ公演なのに。

でも、今自分であらゆる分野を把握しておくことはとても重要だと思っています。自分の公演だから。矛盾しているようで、でも正しい。

踊る曲はかなり以前から決めていました。タンゴとガロティンとソレア。そしてフィン・デ・フィエスタ用に1曲。タンゴはほぼ即興だったからよいとして、ガロティン。ただでさえアーティスト達に嫌がられる曲。日本では発表会等でよく踊られますが、ガロティンを好んで歌う人、弾く人はほとんどいない。ガロティンって歌のバリエーションが限られていて、歌詞もそれ程たくさんない。音楽的にもフォークソングといううか・・・いわゆる、まさにフラメンコ!って感じがしない。でもだからこそあえてガロティンを選びました。そのガロティンのイメージをひっくり返そうと思って。

ソレアは公演の王道の曲ではありますが、公演をご覧になった方はご存知の通り、あっ!という構成です。でもソレアそのものです。ソレアを踊るといいつつ、ソレアよりも最後のブレリアの印象で終わらせている踊り手が多い。そうじゃないんだ、ソレアなんだ、という私の意思表明。

フィン・デ・フィエスタは結局グアヒーラになりましたが、これはギタリストのエミリオ・マジャが「パコ(歌い手のエル・プラテアオ)のグアヒーラはいいぞ」とオススメだったので。これは完全即興でした。

_DSC3963 _DSC3933_DSC3947ガロティンやソレアの曲作りも過程が面白かった。ガロティンの途中にサパテアードが入っていますが、3拍子と4拍子が入れ替わり立ち替わり組み合わさっている変則パターン。エミリオのサパテアードの曲に最初は4拍子で普通に足の音をつけていったのですが、次の合わせの時にパコが来て同じメロディーで3拍子でパルマをたたき始めました。それ、おもしろいじゃん!とうことで本番まであと1週間もない時に急遽変更。準備する私は大変だったけど(笑)お陰で唯一無二のガロティンになりました。こういうのは劇場公演だからこその作品。タブラオではできない醍醐味です。そして、エミリオとパコと私の3人が揃ったからこその作品。共演アーティスとが変われば、またがらっと雰囲気の変わるガロティンになるでしょう。

ソレアは苦心もしました。私の中では構成がちゃんとできていて、意義のある構成だったのですが、斬新過ぎたのか、最後の最後までエミリオとパコに理解されなかった(笑)それを理解してもらうのに時間がかかりました。本番直前の合わせでやっと、彼らからのOleが出ましたから・・・

でも一番悩んだのは、オープニング。会場アナウンスから1曲目のタンゴに入るまでの間。踊りでも何でもない所。でもここでどうしたらこの公演のテーマを最初にどーんと投げつけられるのか・・・・、オープニングで全てが決まるだろうと思っていました。

そう、今思い返してみると、やはりあのオープニングあってこその公演だったと思います。

(続く)

2015年9月16日 セビージャにて。

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