「人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか」公演を振り返る⑦(最終回)

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みなさんこんにちは。前からのブログの続きです。今日が最終回。

公演が終わってもうすぐ1ヶ月が経とうとしているところです。公演終了後は大阪でのクルシージョとライブを終え、その後セビージャに戻りました。やっとゆっくり時間がとれて公演を振り返ることができてよかったように思えます。後回しになってしまったけど、夫、アントニオ・ペレスに感謝。ありがとう。

アントニオの写真展とフラメンコ公演の同時開催ということで、私達はお互いに助け合ってきました。スペイン人の夫は日本語ができないし、日本のシステムが分からない。それは当然なので、その部分を私が補わなくてはならない。通訳もそうですが、物事がスムーズに行くために、スペインと日本の文化や考え方の違いを夫に説明して理解してもらったり。でもそれは私がセビージャに住んでいる時に感じる気持ちを、本人も感じているわけで、夫の戸惑いはすごくよく分かる。でも郷に入れば郷に従えということもあるんだよ、と。特に日本では。

でも全部が全部私が一人で荷を背負ってきたわけではなく、その荷を夫が少しでも軽くしてくれるよう、精神的な面でとても支えになってくれました。本当に助かります。自分の一番近くにいる人が一番自分を理解してくれて、自分のやっていることを含めて好きでいてくれる。こんなに有り難いことはありません。そしてこの公演がこの公演の形態になるには、夫の今回の写真展“Nuevas postales, nuevos viajes”が必要だった。もしこの写真展がなかったとしても、私単独でも公演は成立したでしょう。でもきっと違う形になっていた。だからやっぱり二つで一つだったのだと思います。

11921711_10153589109821228_4038117372838351670_n10984288_10153589110206228_2445315462009868954_n写真展に関しては、素晴らしい内容だったと思うのですが、フラメンコのお客様のほとんどは、さ〜っと写真に目を通しておしまいという方が多かったようです。それをアントニオは非常に残念がっていました。私も残念です。時間がなかったのかなあ、写真なんて興味がないと思っていらっしゃるのかなあ?宣伝がイマイチだったのかなあ?・・・・

中には熱心にご覧になったり、ご質問されたり、後からご感想をメールで下さった方々もいらっしゃいました。一昨年、昨年と引き続き写真展にご来場下さるお客様もいらっしゃいますし、アントニオの写真展も観られるから今回の公演観ます、という方もいらっしゃいますので(笑)アントニオ・ペレスの写真ファンが増えていることは確実ですが。皆様、本当にありがとうございます。

(写真展のお写真は、ガイドにいらっしゃった方から頂きました。ありがとうございます!)

本当にいろいろな方にお世話になりました。公演にお越し下さったお客様、会場の外で応援して下さった皆様、ギタリストのエミリオ、歌い手のパコ、キッド・アイラック・アート・ホールの早川誠司さん、工藤大輔さん、お手伝いの皆様、宣伝にご協力下さったフラメンコ関係者の皆様、衣装のピリとピトゥッサ、そしてアントニオ・ペレス。

ありがとうございました!


人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか?

風景は、今、そこに、目の前にあるのに。

でも私は探してしまう。

見つからないと不安になる自分がいるから。

風景は、今、そこに、私の目の前にあるのに。

・・・フラメンコは?

フラメンコを“絵はがき”の中に探す人はだれ?

もしかすると・・・私?

だとしたら自分で破らなくては。

その“”絵はがき”を。自分自身を。

2015年8月 萩原淳子

11915762_527327384084881_3860281534622562801_nこれは公演当日にお客様へ配布したプログラムの中の一節です。この公演を象徴するような、何か詩のようなものをプログラムに入れたいなと思っていたのですが、ずっと出て来なかった。言葉が。公演2週間くらい前だったでしょうか、もうこれ以上遅れたらプログラムの印刷に間に合わない!というギリギリまで言葉が出て来るのを待っていました。というより、長い間自分の中で、なぜ公演をするのかという問いに対する答えが出なかった、答えを出すのを怖がっていたから言葉が出て来なかったのかもしれません。

先が見えないことは不安です。誰もやっていないことをこれから自分でやる、というのは勇気がいります。手っ取り早く無難な道に逃げて「安全な合格点」を手にいれることもできたと思うのですが、それじゃあ何のために生きているのか、生きてきたのか分からない。だからこの公演を通して、私は自分の人生の中に一つの印をつけられたのだと思います。2年前の前作「ハモンは皿に乗せるだけでよい」発表後、私のフラメンコはもう残っていないと思いました。自分にとってこれ以上のフラメンコな公演はないだろう、と。

でも、できた。

それははたから見たらちっぽけな事かもしれません。でも自分にとっては大きな一歩でした。この公演の前と後で自分の時代が大きく変わってくる、そんな気がします。

そして今後。これからもこの写真展&フラメンコ企画は毎年続けられたらなと思っています。その上でこの「人はなぜ、絵はがきの風景を探すのか?」公演を再演したい気持ちも強くあります。たくさんのお客様から「また観たい!」とのお声を頂きました。そして今回ご覧になれなかった方も多くいらっしゃいます。(キャンセル待ちになってしまった皆様、本当に申し訳ございませんでした・・・)そして何より、自分が再演したい。(笑)公演開催には準備、時間、労力、元手(笑&涙)が必要になってきます。はい!公演!という訳にはいかないのでしょうが、また次の目標に向かって少しずつ努力していきたいと思っています。

(最後の写真は、Toshimixさん作、手作りアイシングクッキーの写真です。公演フライヤーをご覧になった時から創作意欲が湧いたそうです。とっても素敵でしかも美味しいクッキーをありがとうございました!他にもたくさんお花やプレゼントや差し入れを下さった皆様、全部ご紹介できなくて申し訳ないのですが、本当に本当にありがとうございました!)

※今回が最終回と思ったのですが、まだ紹介したい写真がありました!次回「番外編」にてご紹介させて頂きます。スミマセン。

2015年9月26日 セビージャにて

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