ロンダ・フェスティバルを終えて 2

]みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

先週土曜に出演したロンダでのフェスティバルから、もう1週間経ってしまいます。今日ロンダの新聞に私の踊りの批評が出るそうです。フェスティバル当日に取材に来た新聞記者が、その記事を送ってくれると言ってましたが・・・・あんまりあてにせずに待とうと思います。もし届いたらブログにアップしますね!

前回のブログの続きは以下です。(写真:アントニオ・ペレス)

フェスティバルの後、なんだか自分の踊りをできなかったような気がして、すごくすごく落ち込んでいました。あんなに練習したのにな。コンクールで優勝して、せっかくフェスティバルに出るチャンスをつかんだのにな。どうすればよかったんだろう・・・って。もちろん毎回毎回自分の思うように踊れるとは限らない。それは自分だけの問題ではなく、様々な要因が絡んで来ることもある。ロンダの人達からものすごい拍手を頂いたらしいけど(セビージャから観に来てくれたお友達が教えてくれた)、でも自分の心の中では、自分で自分に拍手を送れずにいました。

ホテルに着いてからもずっと考えていたからか、次の日の朝はものすごい頭痛で目が覚めました。チェックアウトの時間もとっくに過ぎていたし、どうせ今日は疲れているからゆっくり休んで、もう一泊しよう。せっかくロンダにいるのだから。なんたって、あのミッシェル・オバマが訪れた街ですからね。

ズキズキする頭をかかえながらとりあえず外に出て朝食。(すでに昼食の時間だったが)食べるとすぐに眠くなる私。ありえないけど、カフェテリアで寝てしまった。ホテルに帰ってまた寝るか、と思ったけどせっかくだから展望台まで行く。

ロンダは崖の上にある街。旧市街と新市街を結ぶヌエボ橋から下を眺めると本当に断崖絶壁。そしてアンダルシア独特の広大なオリーブ畑が広がっている。ロンダの山々も。ぼ〜っと眺めていたら、なぜか涙がぽろぽろこぼれてきた。ひよこ豆のような涙が。今私の目の前に広がっているものに比べたら私はなんて小さいんだろう。

そして思った。私は小さな種だ。外来の、日本からやってきた種。その小さな種は意思を持って大地に落ちた。雨や風や強烈な太陽にさらされ、時には踏まれたり上から石を乗せられたり・・・・それでも9年かけてやっと根っこがはえ、ちょっぴり芽が出て来た。そしてその芽を育たせるために、根っこがアンダルシアの大地の栄養分を吸収しているのだ。

でもその種はちょっと芽が出たら、もう花が咲くものだと思っている。コンクールで優勝したから、もうおいしい実がたわわになると思っている。まだ芽が地上から顔を出しただけなのに。この広大な大地に何十年、何百年と生えているオリーブの木。何百万年と存在する岩。それが「フラメンコ」なんだよ。小さな種が「踊れた」「踊れない」って騒いで、だからなんなの?ぽろぽろ涙が崖の下に落ちて行く。でも涙はその大地にすら届かない。熱い熱い太陽の熱で蒸発してしまうから。

その時言われた。「泣きたかったら泣いていいよ。でもジュンコが悲しんでいると誰も幸せになれないよ」

小さな種を踏みつぶそうとする人もいる。「すごいね〜がんばってるね〜」と言いながら、実は「芽なんて出るわけないじゃん、日本人なんだから」と陰で笑っている人もいる。でもそんな人達だけではなかったのだ。時々水やりをしてくれた人、石を取り除いてくれていた人、成長をいつも楽しみにしてくれている人達が私にはいたのだ。私が特別な種だったわけではない。たった一人で耐え忍んで芽を出したわけではない。そんな当たり前のことに気づくのに9年もかかったばかな種。そう思ったら涙が止まらなくなってしまった。

ロンダの街にありがとうと言いたい。この風景に出会うために、私はロンダのコンクールで優勝したような気がしてきた。人生に出会うべき人がいるのと同じように、訪れるべくして訪れる場所があると思う。そしてそれは来るべき時に来る。私にとってそれがロンダだったのだろう。

どこにおいしいアイスクリーム屋があるのかよく分からなくて、地元の人に教えてもらった。でもあんまりおいしくなくて、セビージャのRayasのアイスクリームの方が100倍おいしいよ、と思ってしまった。でもロンダは特別だ。街を歩いていたら「昨日踊ったでしょ!」「アンタ、すごいね!」「ただの踊りじゃなかったよ。伝わってきた。これからも踊り続けるんだよ!」と声をかけられた。ここにも種の成長を喜んでくれる人達がいる。

そして海の向こうにも。ロンダの絵はがきを2枚買う。両親と妹に出すんだ。

この種は単なる種ではない。字も書けるしブログまで書いてしまうのである。

2010年8月28日 セビージャにて。

そういえばRayasのアイスが冷凍庫にあったはず。食べちゃおう、夜中だけど。

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