萩原淳子のセビージャ・ビエナル鑑賞記 ①

みなさんこんにちは!いかがお過ごしでしょうか?

こちらセビージャでは9/15から約1ヶ月に渡る、世界的なフラメンコの祭典「ビエナル・デ・フラメンコ・セビージャ 2010」が開かれています。期間中はセビージャ市内の劇場で毎日公演があり、1日に2〜3公演ある日も。世界中からフラメンコファンが集まり、活気に満ちています。フラメンコ留学生のほとんどが、日中はクラスをとり夜劇場にかけつけるという毎日を送っていますよ。留学生だけでなく日本でプロとして活躍する踊り手さんやギタリストの姿も。

日本の方から「ビエナルはどうですか?」というメールを頂いているので、せっかくだからブログにすることにしました。私の勝手気ままな鑑賞記になりますが・・・ごめんあそばせ。

※ビエナル公式HPはこちら→www.bienal-flamenco.org (以下写真はこのHPの写真ギャラリーから引用しています。写真:ルイス・カスティージャ)

  • 9月15日(水)ビエナル開幕コンサート、マエストランサ闘牛場、主演ミゲル・ポベダ 以前の開幕コンサートは無料だったのに、今年はチケットを買わなければならない。しかもインターネットであっという間に売り切れ。メイン出演のミゲル・ポベダの歌はその前の週のアントニオ・マイレーナ・フェスティバルで聴いたので(素晴らしかった。)まあ、いいか。ところがどういうわけか、当日急にそのチケットが手に入ったので、 闘牛場にかけつける。席は舞台から一番遠い6ユーロの席。この遠さ、並みではない。アーティスト達がLEGOの人形くらいの大きさに見える。でもその席から闘牛場を見下ろせる光景は圧巻。お客さんはもちろん満員で、心なしかまだ暑く、美しく着飾った女性達はみんなアバニコ(扇)をあおいでいる。これ、セビージャだわ。マエストランサだわ。ここで世界最大のフラメンコの祭典が開幕するのだ。22時半の開演時間は過ぎ、月の光がさらに私の気分を高揚させる。この日はミゲル・ポベダ以外にたくさんのアーティストが出演した。その中で私の一番のお気に入りはミゲル・ラビ。彼のブレリア。これにつきる。ミゲル・ラビは私の好きなヘレスの若手の歌い手。一番最初に彼の歌を聴いたのは数年前、とあるペーニャ。日本のタブラオで活躍する、ある踊り手の公演で歌っていた。その時、本当に度肝を抜かれる。踊りもよかったのだろうけど、彼の歌がすごすぎて踊りが目に入らない。ペーニャの人にあの歌い手は誰か?と聞いたけど誰も名前を知らない。誰なんだろう・・・と心臓をばくばくさせて家に帰る。そして数ヶ月後、モネタに歌う彼を発見!「ミゲル・ラビ」っていうんだ!!!その後モネタが踊る時には大体彼が歌っている。同じくモネタに歌うダビ・エル・ガジも素晴らしいだが、時としてそのガジを凌駕する瞬間がある。でも最初に聴いた時の興奮はそれほどなかった。前置きが長くなったけど、そのミゲル・ラビがビエナル開幕コンサートのマエストランサ闘牛場にて、モライートとアルフレッド・ラゴスのギターでブレリアを歌った!!!やっぱりヘレスだね。おめでとう!!!そしてありがとう。ミゲル・ラビ。3時間にも渡る開幕コンサートでたくさんのアーティストが歌い、踊り、弾き・・・みんな素晴らしかったけど、でもあのラビの、あの時のブレリアが私にとって最高の宝石となった。
  • 9月18日「Cádiz eterna」ホテル・トゥリアーナ、ランカピーノ、フアン・ビジャール、ナノ・デ・ヘレス、マリアーナ・コルネッホ、リディア・カベージョ 1部のリディア・カベージョの踊りの後続いたのは、上記4人衆によるカンテ・コンサート。ナノ・デ・ヘレスを除く3人は私のクルシージョ講座「アレグリアス研究」でとりあげている歌い手達だ。生徒さん達にも聴かせたいなぁ!!!と心から思う。以前に聴いたランカピーノよりもちょっぴり物足りないような気がする。彼の歌うマラゲーニャもアレグリアスも素晴らしいけど・・・年をとったのかな・・・。それとも、前日私はペーニャ公演だったから、その疲れが残っていて自分にカンテを吸収するエネルギーが足りなかったのかもしれない。最近のビエナルでは舞踊ばかりに偏り、カンテのコンサートが少なくなっている。お客さんが入らないから。でも彼らのような歌い手が集うコンサートを絶対になくしてはならない。源泉の水を汲んできた人達の歌なのだから。ランカピーノの歌にはアウレリオが生きているよ。マリアーナの歌にはペルラが生きているよ。ちなみにこの公演のタイトル「Cádiz Eterna」は日本語に訳すと「永遠のカディス」。 彼らの歌を通して私も源泉の水を飲めればなぁ!アウレリオが流した涙でいっぱいになった泉の水を。
  • 9月19日 「Cuando las piedras vuelan」マエストランサ劇場 ロシオ・モリーナ舞踊団 どうなんだろう、この公演は。意見が真っ二つに分かれるところか?私は、好きでしたが。ロシオ・モリーナの超一級の舞踊性。完成された舞台。転換といい、照明といい・・・彼女の踊りをフラメンコかフラメンコでないか、というところで意見が分かれるのかもしれません。私の隣に座っていた男性は「こんなのコンテポラリー・ダンスじゃないか」とずっとぶつぶつ言っていました。でも、ある瞬間ものすごい芸術性の高い照明が私たちの前にふっと現れた瞬間、その男性でさえ息を飲んでいました。その照明が舞台天井に仕掛けられていたのを私は確認していたの。あの照明どう光るんだろう、って思った記憶があるから。でも何十という照明が天井からするすると降りてくるのに気づかず、気づいた時にはロシオと何十という照明の芸術作品が目の前に現れているなんて? そんこと可能なんでしょうか?舞台って本当にすごい。(ちなみにその照明の写真ですが・・・写真じゃ、やっぱり伝わらないな〜)それから、ロシオの踊り。多くの人が「コンテンポラリー・ダンス」と言っていたけど、そうかなぁ?アイデアは確かに伝統的なフラメンコの枠に入っていないかもしれない。でも例えば、サビーカスとカルメン・アマジャの掛け合いのブレリアを想起させる部分や、今では誰もそうは踊らない、昔の女性の踊り方を彷彿させるような動きなんかが所々あって、私はそういう部分に彼女のフラメンコを感じたけどなぁ。「フラメンコとは・・・・」と人それぞれ意見が違うと思うし、ある点からみると私はこの公演に100パセーント拍手を送ることはできません。でもフラメンコを舞台芸術の側面からみる見方というのもあるんじゃないかなと思うのだけど・・・

    以前の私だったら、「こんなのフラメンコじゃな〜い!!!!」と一刀両断していたと思うんだけど・・・最近そうでもないかな。それはイスラエル・ガルバンのこんな言葉を聞いてから。「好みでフラメンコははかれない。」

    あとちょこっとメモしておきたい。気に入ったのは、 ギタリストがガロティンのファルセータをほんのちょっぴり弾いた時、彼女はソンブレロ(帽子。ガロティンを踊る時に使われる。)をかぶっていないのに、あたかもかぶっているような手の動きをした所。あれは即興なのかなぁ。実は、今私はガロティンの振付けをしているんです。そんなわけで、私のアンテナにピンときてしまったのでした。

    とりあえず今日はここまで。

    次回はアンドレス・マリン公演、ファルキート公演、ムへレス公演をアップ予定です。お楽しみに〜!

    2010年9月30日 今日は、お友達に頂いたタイカレーを食べました。満足。 セビージャにて。

Comments are closed.