萩原淳子のセビージャ・ビエナル鑑賞記 ③

みなさんこんにちは!

早速ですが、前回ブログに引き続くビエナル鑑賞記第3弾です。

「ビエナル・デ・アルテ・フラメンコ・セビージャ2010」公式HPはこちら→www.bienal-flamenco.org

以下写真はこのHPから引用しています。(写真:ルイス・カスティージャ)

  • 9月25日(土)「Tomatito en concierto」マエストランサ劇場、出演:トマティート

マエストランサ劇場は大きい。舞台と客席最前列の間にオーケストラ・ピットがあるため、なんだか遠く感じる。でもこの劇場の穴場の席は「1ºTerraza」という席で、舞台正面の「Patio de Butaca」の両脇にある。両脇なんだけど、「Patio de BUtaca」よりもかなり高い位置にあるので、すごく見やすい。下手に「Patio de Butaca」の後ろの方の席をとるくらいなら、この「1ºTerraza」で観る方が私は好きです。そんなに見やすいのに、お値段もお手頃。

というわけでこの公演はその「1ºTerraza」の席に着く。そしたら偶然お隣が踊り手の松彩果ちゃんだった。二人で公演プログラムを見ながら、今日の踊りは誰なんだろうね〜、なんて話す。トマティートの公演には大体踊り手がゲスト出演してちょっと踊る 。なぜか今回のプログラムにはトマティート以外の出演者の名前が書いていない。

トマティートといえばブレリア!私は彼のブレリアが大好きだ。音の一つ一つがキラキラしていて立っている。あのコンパス感。彼のブレリアを聴いていると血液が沸騰してくるんだよ〜。これはブログでは表現できない。ごめんなさい。そのブレリアが始まって、隣の彩果ちゃんと私はのりのりになっている。踊り手がパルメーロ(手拍子でリズムを司る人)として出て来た。「ホセ・マジャだ」彩果ちゃんがつぶやく。「うんうん」とすかさず頷く私。アンダルシアのおじちゃん、おばちゃんが隣に座って一緒にハレオをかけるのも素敵だけど、異国で同じ国の人が隣にいるのも嬉しい。

3人の歌い手がカマロンの歌を次々と歌っていく。あ〜、私はカマロンの歌を生で聴いた事がない。彼はすでにこの世にはいない。トマティートのギター、カマロンの歌・・・CDで聴くだけでも大興奮してしまうのに、生で聴いたら私は卒倒してしまうかもしれない。

ホセ・マジャの踊りもよかったな〜。身体的に恵まれている。モデルのように背が高く手足が長い。舞台に立っただけで観客をぐっと引き込むことができる。以前エバ・ジェルバブエナが言っていた。「背が高いことと『大きい』ということは違う。背が高くてもただ高いだけの人は、『大きい』のではなくて『長い』人」 。名言。それ以来、背の高い踊り手を観る度に彼女の言葉を思い出す。残念ながら「長い」人を見かけてしまう今日この頃・・・この日のホセ・マジャは「大きな」人だった。

 

 

 

9月27日(月)「パストーラ」ロペ・デ・ベガ劇場 主演:パストーラ・ガルバン

 

OLE OLE OLE y OLE!この公演は本当にOLE! よくぞやってくれたパストーラ!ありがとう。

公演の映像→768-color-y-sencillez-en-el-baile-de-pastora.html

2年前のビエナルで上演した「Francesa」。拍手喝采だったけど私は好きではなかった。兄イスラエル・ガルバンの振付による作品で、あれだけの身体能力で踊ったパストーラは確かにすごいけど、彼女自身が見えてこなかった。「じゃあ、パストーラ・ガルバンという踊り手は、人間はどこにいるの? 」という疑問を私は持ってしまった。

今回の公演も振付は兄のイスラエル。でもパストーラ全開の舞台。だって公演名が「パストーラ」だよ。「Triana Pura」を意識した公演みたい。でもそれをできるのはパストーラだから。パストーラに習ってパストーラの振付を踊る人は結構多い。日本でも。でも彼女レベルの身体能力とコンパス感、フラメンコ性がなければそれは無理だ。本人はムイ・フラメンカのつもりで踊っているのだろうけど、その薄っぺらさは見え見え。残念ながら。パストーラは全てにおいて傑出している。その傑出具合を兄イスラエルの振付が最大限に引き出したように見えた。そんなイスラエルにもOLE! だ。

そしてギター、カンテにもOLE!である。ラモン・アマドールのギター。素晴らしい。この人のギターを聴くと他のギタリストがなんだか可哀想になってきてしまう。(もちろん可哀想でないギタリストもいますが)なんと深い音なのだろう。「上質のハモンは切ってお皿に乗せるだけでいい。そのお皿には花もソースもいらない。 フラメンコも同じだよ」と言っていたのはとあるギタリスト。ラモンのギターはそれだ。その通りだ。彼の手がギターに触れた瞬間にフラメンコ波が押し寄せてくる。私がギター練習生だったら迷わずラモンに師事する。踊り手である私は・・・いつか彼と共演できる日が来るだろうか・・・・・来てほしい。

カンテはホセ・バレンシア(ホセリート・デ・レブリハ)とダビ・ラゴス。この二人を揃えるところもすごい。ホセ・バレンシアは先日のブログでも紹介した、アンドレス・マリンの公演でコンチャ・バルガスに歌った歌い手。この日もすごかった。この人がちょっと歌うだけで、舞台はこの人の色に染まってしまう。中途半端な踊り手だったら完全に彼に持って行かれてしまうだろう。この日の彼のソロのソレアが素晴らしかった。そして今波に乗っているダビ・ラゴス。別の日で彼のソロ・コンサートもあったが私は残念ながら行けなかった。ソロで歌ったマラゲーニャがすごかった。この人もいい。二人とも好きだ〜!!!

パルマのボボテ。彼がパルメーロとして出ている舞台で、ちょっとボボテうるさいな、というか目立ち過ぎというか・・・正直そういう印象を持ってしまったことが過去に何度かあった。過去踊り手だったという自尊心が見え隠れしてパルメーロに徹する事ができないのかな・・・なんて思ったけど・・・でも今日はそうは思わなかったよ!みんな一体になっていたからかな。最後にちょこっと踊るボボテもいいね。

とにかくみんなよかった!終わりそうでいつまでもなかなか終わらない最後。その「しつこさ」もアンダルシアのおばちゃんみたいだ。(そこがまたいいところなんだけどね。)しつこいと東京では嫌われる。みんなさらっとした人間関係が好きだから。他人と深く関わりたくない。でもここではしつこくしないと冷たい人間と思われてしまうのだ。

欲を言えば、今度はパストーラ自身が振付,構成した舞台を観てみたい。それでこそ本当の「パストーラ」。パストーラの、パストーラによる、パストーラのための 「パストーラ」!!!!!

  • 9月28日(火)「ALGO」セントラル劇場、主演:コンチャ・ハレーニョ ごめんなさい。なんとこの公演で私は眠ってしまいました・・・・。これじゃブログにならないよ〜。ということで覚えているところだけ・・・。

    舞台上手前方の床に赤いひらひらのついた大きな布というか絨毯みたいのが置いてありました。その回りを黒い服を着た、恐らくギタリストや歌い手達が囲んでその布を見下ろしています。赤いひらひらのついた布・・・なんだか巨大伊勢エビの殻みたい、と思った瞬間それが本当に動き出す。びっくりした〜!どうも布の下でコンチャ・ハレーニョがもぞもぞ動いているみたい。

    舞台が暗転になってその間にギタリスト達が伊勢エビを持ち去ったらしい。舞台上手前方にコンチャが残される。すると今度は下手上方から白い布が垂れ下がっていて、コンチャがそれに巻き付いたり離れたり・・・。(これでバイクに乗ったら月光仮面?)なんだろうこれは。あれ〜、私、フラメンコの公演を観に来たんじゃなかったっけ????

    今度はバタ・デ・コーラとアバニコで登場。(写真左)身体の動きもバタの動きも美しい。技術的にどこをとっても優等生。でも何か伝わってこない。彼女自身が伝えたいこと、彼女のエネルギーみたいのが見えてこない。感じられない。う〜んと思っているうちに、だんだん眠くなってしまったらしい。この踊りの最後の拍手で目が覚めた。

    その後は本当に睡魔との闘い。ほとんど記憶にないのです・・・・(写真右の黄色い衣装なんて、全く記憶にない・・・)公演が終わった後、一緒に観に来ていた生徒さんに聞いてみた。「私眠っちゃったんだけど、公演どうだった?」すると「実は私も・・・眠くてガム噛みながら観てたんです。」だって。あれま〜。

    というわけで家に帰ってみてネットで調べる。公演前の彼女のインタビューを発見。→ 771-concha-jareño.html それを聞いてみると、どうも私が見た最初の「伊勢エビ」と「月光仮面」は彼女が内面に持ち続けていた「恐怖」を表していたみたい。それを表に出す必要性を感じた、表に出す事で癒すことができる、悲しみや苦しみは変わらないのだけど。というような内容のことを話していました。なるほど〜。確かに言われてみればそうともとれなくもない・・・。

    ちなみに、バタ・デ・コーラとアバニコの踊りの映像もありました。→773-jareño-reinventa-el-baile-flamenco.html

う〜ん、それにしても眠ってしまって本当にごめんなさい。インタビューを聞いていると、その後にミロンガ、ロンデーニャ、マルティネーテも踊ったらしい。残念。そっちの方が本当は観たかった・・・・今度はちゃんと観るようにしよう。だから許してね。

2010年10月7日 新しいブーツがほしい今日この頃。セビージャにて。

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