ミゲル・ペレスとモイ・デ・モロン

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

お陰様で先日のカハ・ネグラでのライブは無事終了致しました。お越し下さいました皆様、誠にありがとうございました!セビージャ在住フラメンコ・ジャーナリストの志風恭子さんのブログにライブの様子がアップされています。

「志風恭子のフラメンコ最前線」(2012年4月17日付)→noticiaflamenca.blogspot.com.es

さてさて。今日はいいことがありました。金曜日にセビージャ郊外の「ギジェーナ」という村で行われる小さなコンクールに出るのですが、私の大好きなミゲル・ペレスのギターと、モイ・デ・モロンのカンテで踊ることになりました。今日その合わせをしました。・・・・やっぱりいい!!!二人ともいい!!!そして二人の組み合わせもいい!!!最高に満喫した練習となりました。

2012.4.20// 第15回ギジェーナ・フラメンコ・コンクール 予選

 

Baile Cante Guitarra
  • 萩原淳子
  • モイ・デ・モロン
  • ミゲル・ペレス

 

ちなみに、このギジェーナのコンクールは小さいもののようです。ギジェーナでカンテのコンクールがあるのは知っていましたが、踊りのそれもあったのか、と。日本の皆さんはびっくりされますが、スペインでは(特にアンダルシアでは)カンテのコンクールが数えきれない程あります。それに比べて踊りのコンクールはものすごく少ない。フラメンコはカンテなんだ、という当たり前のことが、ここアンダルシアではやはり当たり前なのです。

・・・で、ギジェーナのコンクールですが、踊りは予選で1曲踊るのみ。1曲だけじゃその人の実力なんて分からないのだと思うけど・・・。ほんの一握りの正真正銘のアーティストであれば1曲全部を踊る必要もなく舞台に立っているだけで、椅子に座っているだけでその実力は分かるかもしれない。でも一般的にそういう人はそうそういない。1曲だけだとそれだけは踊れるけれど、それ以外はイマイチなんて人もいるわけで、また数曲踊らせると何踊っても同じように見える人というのもいる。そこら辺の実力というのが計れないのではないかな?ちなみに私がこれまで出場してきたスペインのコンクールでは予選2曲、決勝では予選で踊らなかった曲を含めて2曲、なんてことが課せられていました。予選4曲必須のコンクールもあったし・・・。

な〜んてことを考えながら、また、コンクールって結局コネのある人が優勝しちゃったりする場合が多いからねぇ・・・とも思い出し、出場するか否かずっと迷っていたのですが、結局出る事にしました。なぜなら、5月30日にセビージャでソロ公演をすることになったから。そのための踊りを用意したい。もちろん、その公演でもミゲル&モイと共演します。だからギジェーナのコンクール用に1曲準備してしまえば、それがソロ公演の準備にもなってしまう!というわけなのです。コンクール優勝を狙うのならソレアかアレグリアスを踊ればいいのだろうけど、そういう目的でもないので、上記の理由でタラントを踊ることにしました。

モイのカンテでタラントを踊るのは初めてですが、いい!!!今日の練習で歌ってくれたタラントのある一部で音程がよく聴くそれと違う部分がありました。ミゲルもその音に気付いたみたいで、ギターをその音程に合わせていました。「わざとその音程で歌っているの?」とモイに質問すると、モイはにかっと笑って得意そうに「そうだよ!」と言っていました。モイ曰く、ムルシアーナの音程の取り方をタラントで使っているとのこと。へ〜、そういうことがあるんだ。勉強になるな〜。今度はミゲルに、「その音程で歌われて、すぐにギターは合わせられるの?」と質問してみたら、「それは難しい。できるけど知っていないとできないよ」と笑い、モイも「ミゲルなら大丈夫だけど、合わせられないギタリストや、そもそもその音程に気付かないギタリストもいるよ。ひっひっひ。」と笑っていました。すごいな、この二人。ちなみに、カンテのコンクールではそういう歌い方をしてはダメとのことです。そりゃそうだ。

モイが来る前に、ミゲルとファルセータの部分などを一緒に合わせてみたのですが、これもすごい。ミゲルのギターでタラントを踊ったのは何度もあるけれど、その度に違うファルセータを弾いてくれます。どれも宝石のようにキラキラしていて、それでいて海の底のように深い。オリジナルでありながら、でもタラントの本質を失っていない。なんでこんな音楽を奏でることができるのか。音の一つ一つが細胞にしみわたってゆく。そこから無限の可能性が膨らんでゆく。

ちなみにファルセータを上手に弾くギタリストは世の中にたくさんいらっしゃいます。でも彼らの多くが独りよがりの場合が多いと思うのは私だけでしょうか?「オレって上手いだろ」「オレってフラメンコをこれだけ知ってんだぜ。」そういう「オレオレギター」を耳にすると、確かに素敵ですね・・・でも・・・だから何?と思ってしまう。その人のギターで踊ることを心が拒んでしまう。もちろん仕事だから踊るけれど。

モイのカンテにしてもミゲルのギターにしても、私の血液を沸騰させる何かを持っている。血液が沸騰しなければフラメンコは生まれない。沸騰するからフラメンコを踊ることができる。お湯が沸騰しているからおいしいパスタをゆでられるように。

あさって。あさってが本番ですが、もう、今日の合わせだけで十分学び、十分堪能しました。理由がどうであれコンクールに出る事にしてよかった。

(写真:アントニオ・ペレス。ロンダ・フェスティバル楽屋にて。)

2012年4月18日 セビージャにて。

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