東京タワーと私

c4641139c2d001b1d0c6b3bc065d62deみなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。

今日は6時間のクラス後、3時間自主練習。よくもまあ、体力あるな、と自分でも驚きあきれかえります。クラスの後はぐったりで、(教えるのって本当にエネルギーを使います)自分の練習なんかできるかい!と思うには思うのですが、ヘレスで練習したミゲルのギターとモイのカンテの録音を聴いていると、星飛雄馬のように目玉メラメラ〜になり、ちょっと踊りだすと止まらない。教えるのとは別のエネルギーがどこからか湧いてくるのです。不思議ですね。今日もいい練習をした!これだ!というものが出てきました。それが本番舞台の上で出てくるとは限らないのですが、自分のインスピレーションの回路をスムーズにしておく、これは重要なことです。同じ振付を1000万回繰り返してもそれは出てこない。体操競技やシンクロナイズドスイミングじゃないからね、フラメンコは。失敗なく練習に近い出来にして全てにおいて高得点を競うのがスポーツ。フラメンコは一瞬100000点を狙うもの。その一瞬さえあればいい。でもその一瞬はそのインスピレーションの回路が詰まっていると絶対出てこない。かといって全然練習しないのもだめ。難しい気がするけど、要は考えなければよいのです。考える練習と考えない練習。このバランスをとるのが大切です。少なくとも私にとっては。

自主練習後外に出たら、東京タワーが光っていました。

美しい。

懐かしい。

あれはかれこれ15年以上前になるでしょうか・・・まだAMIさんがスペインにいらして、日本に一時帰国クルシージョをされていた時代。私はAMIさんのクルシージョに通っていた大学生でした。フラメンコを始めて2年くらいだったかな?AMIさん、森下祐子さん、長谷川典子さんの舞台共演者に大抜擢されてしまったのでした。大学のフラメンコサークルでセビジャーナスとルンバくらいしか習ったことのない私が。ありえない。だ〜れも信じてくれませんでした。公演のチラシに私の名前が出ても、サークルの仲間からは「萩原淳子って同姓同名の踊り手がいるんだね」と言われるし。それが出演する事になっちゃったんです。当時AMIさんのお弟子さんとして生え抜きだったお二人の踊り手さんと私の3人が共演者。ありえない。でもAMIさんがお声をかけて下さったのです。

練習は本当に大変でした。当時は六本木に一番街スタジオという巨大なバレエスタジオがあり、AMIさんはそこでクルシージョを開講されていました。クラスの後、私は居残り。とにかく他の共演者に比べて圧倒的に下手だった私。下手もそうですが、何も知らない。分からない。公演用の振付を習っても全然できない。全くできない、本当にできない。舞台上手(かみて)前方から下手(しもて)後方まで対角線上にプランタでアクセントをとりながら、上体斜め45度の角度でパルマをたたいて歩く、というのがありました。踊りを習っていらっしゃる方、やってみて下さい。

①プランタの音がきちんと出ていないといけない(AMIさんレベルで)

②かかとは絶対に落としてはいけない。(タコンの音をならしてはいけない)

②パルマの音もきちんと出てないといけない。

③ひじは落としてはいけない。

④上体斜め45度は絶対に保つ。

⑤テンポを一定に保つ。コンパスは絶対外さない。

⑥歩幅も一定に保つ。

今やっても結構難しいんじゃないかと思うのですが・・・これが当時は全然できなくて、まず両足プランタでまっすぐ立てない。腹筋・背筋が弱くて身体べろんべろんだったから・・・。

そもそも、舞台の上を歩くことができないんじゃないか、という結論になり、その巨大な一番街スタジオで歩く練習。ただひたすらスタジオ内を対角線上に歩く。「手をぶらぶらさせない!」「胸を開く!」「上体に力入れない!」「もっと早く!」とAMIさんの声がスタジオ内に響いていました。

さんざん歩き通して、スタジオ閉まっちゃうよ、という時間になり表に出ました。AMIさんから駅までの近道を通ろうと言われ小道を歩いていると、急に視野が開け目の前に東京タワーがど〜ん!!!光る東京タワーが!!!あまりの美しさに涙が出ました。東京タワーだけは私の練習を見ていてくれたのかもしれない。

そう、あの時も東京タワーが光っていました。

そして今日も。

あれから年月が過ぎ、私は自身のソロ公演を劇場で、そしてスペイン人アーティストを招聘することになったんだ。そのアーティストもスペインで共演しているミゲルとモイ。こんな人生になるなんて、あの時、一番街スタジオをただひたすら歩いていた20歳の私は想像だにしなかった。

でもきっと、私の中の「何か」はあの時のまま、ずっと変わらないような気がする。ずっと。

2013年3月24日

※公演は残席少なくなってきました。ご希望の方はお早めにticket.layunko@gmail.com までご連絡下さいませ。(フラメンコフリーペーパー“ファルーカ”Vol.29 p.15に以下の広告掲載です。ご覧下さいませ。)

Captura de pantalla 2013-03-24 a la(s) 15.50.39

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