「ハモンは皿にのせるだけでよい」公演への道のり④

アレグリアス・コン・マントン アレグリアス・コン・マントン

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。今日はクラス休みなので、またブログを更新しちゃうぞ。朝のブログの続きです。

【注意! 今回のブログ、自分で笑ってしまいました。会社等でこっそり読んでいらっしゃる方、お気をつけ下さい。】

ミゲルとモイからの共演OKをもらえたけれど、今度は彼らの興行ビザをとらなくてはならない。これも初めての経験。前回の「魚の選び方を知った時」公演は新宿エルフラメンコさんが契約していたアーティストをお借りしたので、それは必要ありませんでした。その意味では手続きが本当に楽。スペイン人アーティストが共演者といっても、すでに他の団体が招聘しているアーティストを借りるのと自分で招聘するのは大違い。いろいろ調べたところ、興行ビザを個人でとるのは難しそう。(提出書類として招聘側の会社登記とかいろいろ必要みたいです)というわけでいくつかの団体に問い合せてみて、共通して紹介されたビザ取得代行会社にお願いすることに。昨年一時帰国していた際に代行会社の担当の方とお会いし、必要書類や準備の流れを教えて頂きました。

要は、

①代行会社側から指示されたアーティストの書類を準備する。(アーティスト経歴、写真、パスポートコピー、飛行機チケット情報、宿泊先情報など)

②上記書類を代行会社に郵送

③代行会社より、アーティスト契約書が送られてくる。

④アーティストに契約書をサインしてもらい、それを代行会社に送る。

⑤代行会社より興行ビザ許可書が送られてくる。

⑥⑤の許可書とアーティストのパスポート原本を持って、マドリッドの在スペイン日本大使館でビザを発行してもらう。

なんだ、簡単じゃん、というただこれだけの流れなのですが、結構大変だった・・・。まず①の段階で問題発生。ミゲルとモイに書類を連絡して、その次の日に全部揃えて提出してきたのはミゲル。全然連絡こないのがモイ。あ〜この二人の差。想像はしていたが・・・

二人は日本で私と仕事をしてくれると話してくれたけど、まだ口約束。契約書にサインしてもらうまでは安心できない。しかもモイとはずっと連絡がとれなかったのでかなり不安な毎日でした。

なんとか二人との約束をこぎつけて3人で会い、サインをしてもらい一安心。・・・と思ったけれど、まだモイの提出書類が揃っていなかった・・・・

足りなかったのはモイの経歴と背景白の証明顔写真。そんなの早く出せばいいじゃんと思うのですが、それが出さない。経歴出せ、と言っても「オレには経歴がない」とか言うし。ないわけないだろー、ミゲルなんて生まれた時からの経歴書をきちんと書面で提出してきたのに。もう仕方がないので、ネットでモイの経歴を探しました。ありました。英語で。それをビザ提出用にスペイン語と日本語に訳し、しかしその経歴はかなり古かったので・・・実は今だから言える真相ですが・・・・後半半分くらいは、萩原、自分で付け加えました。(もちろん私が知っている彼の最近の経歴をネットで調べて裏付け調査をしました。だから嘘でたらめではありません)それをモイに読ませ、これでいい?と聞いたら、「いいよ」というのでそれで決定。なんで私がこんなことしなきゃいけないんだ、と思いつつ、待っているくらいなら自分でやっちゃった方が早いからやってしまいましたよ。

MOISES 申請用写真1 MOISES 申請用写真2そして背景白の証明顔写真。そんなのそこら辺の写真屋さんで撮ればいいじゃんと思うのですが・・・・これも出さない。出さない以前にモイに電話してもなかなかつながらないですから話が進まない。経歴はネットで調べられても、モイのビザ用背景白の顔写真はネットではヒットしなかった・・・・歌っている顔写真を証明写真にはできないしねえ・・・

そこで萩原、何をしたか。苦肉の策で、公演プログラム用に撮ったミゲル・モイ・私の3人の写真(左)を夫(カメラマンです)に渡し、それを背景白顔写真に加工(写真右)してもらったのです。要はPhotoshopで3人の写真のモイの顔の輪郭部分だけ切り取って、その背景を白に上塗りするのですが、またまた問題発生・・・・。モイの頭、はげているようで実は写真を拡大すると波平さん(サザエさんの)の1本毛みたいのが無数に「ほにゃほにゃ」と生えていたのです!背景を白にするということは、その「ほにゃほにゃ」部分をそっくり切り取らないと背景白にならない。

プロのカメラマンの夫は不服そうでした。「ほにゃほにゃ」なので、その1本1本をその通りに切り取ることは不可能に近い。「ほにゃほにゃ」の部分を含めてカットすると「ほにゃほにゃ」の後ろの本来の写真の背景の色が入ってしまうので、背景白にはならない。仕方がないので、地肌のラインに全て合わせて「ほにゃほにゃ」部分全てカットすることに。夫は言いました。

「これはモイの真実の頭ではない。この写真は虚偽だ。」

夫はプロだ。だからそのような偽りの写真を許すことができない。それは私にも分かっている。モイにはもっと毛が生えている。でも今の私に必要なのは、写真の真実でも、ましてやモイの毛でもない。モイの背景白の写真なんだ!!!ほにゃ毛を含む彼の頭の“真実”を追求したら、背景白にならないんだよー!!!背景白にならなかったら写真をビザ代行会社に提出できない。写真を提出できないってことは、書類不備でモイが日本に来れないってことなんだよー!!!私の公演できなくなるじゃないかー!!! モイのほにゃ毛のせいで!!!

私の必死の説得に夫は渋々、モイの地肌に合わせ、ほにゃ毛をカット。よし。出来上がった写真はちょっとラインが不自然だけれど、なんとかそれらしくなりました。何も知らずに満面の笑みをたたえる写真のモイ。それにしてもなんで私がこんな思いをしなくちゃならないんだ・・・夫婦喧嘩までして・・・・

大丈夫かな・・・と思いつつその微妙な証明写真をビザ代行会社に送ってしまえー!と送ると何の問題もなくオッケー。な〜んだ、拍子抜け。しばらくしてからその写真は上記⑤の興行ビザ申請許可書に貼られスペイン宅まで送られてきました。あーよかった。

ちなみにモイにやっと会えたのは契約書サインのために会った時から2ヶ月後、ミゲル&モイと共演した、3月2日ヘレス・フェスティバル併行追加アクティビティーライブ本番。本番後、その加工写真を本人に見せたら「なんだこの写真はー!!!」とむくれていただけれど、そんなの知るか。写真を提出しないおのれが悪い。人の苦労も知らないで。ま、ミゲルが大笑いしていたので私も一緒に笑いましたけど。

公演まであと1ヶ月、私が公演に向けて日本に発つ1週間前でした。

  • 写真上:「ハモンは皿にのせるだけでよい」公演 アレグリアス・コン・マントン/衣装:ピリ・コルデーロ/撮影:松本青樹氏
  • 写真下:(左)モイ加工前(右)モイ加工後/撮影・加工:アントニオ・ペレス

2013年4月17日

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