バルージョ en  ペーニャ・トーレス・マカレナ公演

418580_171809056262610_2046896861_nみなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

あっという間に12月も半ば、来週火曜には日本に発ちます。帰国前でバタバタしていますが、昨日、恐ろしくフラメンコ濃度の高い踊りを見ましたのでブログにします。バルージョ(写真左)の踊りです。

バルージョ。プーロ(純粋な)フラメンコファンならきっと知っている踊り手。でも誰?という方もいらっしゃると思うので簡単に説明を。一番簡単な説明は「ファルキートのいとこ」ファルキートもその弟のファルーもバルージョもフラメンコ史上にその名を刻印した偉大な踊り手、ファルーコの孫です。(カタカナが多くてよく分かりません、という方、すみません。)

かなり前にセビージャのエル・モンテ劇場(現カハソル劇場)でファルキート、ファルー、バルージョの3人の公演を観たことがあります。もう10年近く前かな?当時からカリスマ性のあったファルキート、華のある弟のファルー。世間の注目の的はいつもその二人・・・ところが。あの公演でのバルージョのソレアを私はいまだに忘れることができません。

そのバルージョの公演。場所はセビージャの名門ペーニャ“トーレス・マカレナ”。フラメンコ愛好家達によって支えられているその場所でのバルージョの公演。うわー、やはりすごかったバルージョ。1曲目のシギリージャから恐ろしかった。彼のフラメンコ。息が詰まり鳥肌が立ちっぱなしでした。そのまま踊り続けられたら、萩原は死ぬかと。そのくらいすごかった。

休憩を挟んで2部のしょっぱなはアレグリアス。このアレグリアス、時間にしたら5分くらい?あっと言う間に終わってしまったけれど、oleの連続。涙が出そうでした。そしてカンテソロをはさんだ後のソレア。これまた恐ろしい。ただ立っているだけで、ただブラッソを動かすだけでソレア。フラメンコの固まりでした。もう、彼には「ファルキートのいとこ」なんて枕詞はいらない。一人のアーティストとして、バルージョはバルージョとしてそこにいました。

思うに、祖父ファルーコの血を一番濃く受け継いでいるのはバルージョなのではないか。でもそれでいて、ただ受け継いでいるのではない。バルージョにはバルージョの何かがある。

ファルキートの影響も受けている。でも世の中100万といるファルケーロ(ファルキートっぽく踊る、でも本物には似ても似つかない〝なんちゃってファルキート〟的な踊り手達。)とは一線も二線も一億万線も画している。

なんで素晴らしい踊り手なのだろう。バルージョ。あなたは真のアルティスタだ。

そして、フィン・デ・フィエスタ。舞台の上で観客に話しかけるバルージョ。それは謙虚で聡明な一青年でした。「自分はもう踊ってしまったから、観客の中にいるアーティストで舞台に上がりたい人は上がって下さい。」笑顔のさわやかなバルージョ。その彼に舞台に上がるよう名指しされたセビージャのフェステーロは舞台には上がりませんでした。一体、誰があんな素晴らしい踊りの後に、フィン・デ・フィエスタで踊るのか?どんなアーティストでもバルージョのあの踊りの後では面汚しになってしまう・・・

そんな中、舞台に上がったのはカルメン・レデスマでした。「恥ずかしい恥ずかしい」と言いながら。もちろんカルメンは普段はそんなことは言いません。あのバルージョの踊りの後だからこそ、カルメン・レデスマという踊り手であっても、舞台に上がるのが〝恥ずかしい〟わけです。そんな状況の中、カルメンのブレリア。やってくれました。カルメン。さすがカルメン。我らがカルメン。カルメンが最高のレマーテをした時、萩原はoleと叫びながら思わずジャンプしてしまった。(立ち見だったので)そして同じ瞬間に座席から立ち上がったのが、あのファルキート。そしてその後ファルキートも弾丸はじかれたように舞台に上がり、カルメンと二人のブレリア。

ちなみにその動画がありました。→Facebookペーニャ・トーレス・マカレナより。バルージョ公演におけるフィン・デ・フィエスタ

それにしても動画っていうのはやはり単なる情報に過ぎない。あれを生で観た後に動画を見るとがっくりしてしまう。あの時の感動はこんなもんじゃないのに、という。初めて見る人には多少は伝わるのかもしれないが。でもそれは「情報」。フラメンコの匂いや味や体温はやはり生で感じないと。

もしどこかでバルージョの踊りを観る機会があったら必ず観て下さい。

昨日の、あのバルージョの踊りを観た私と、もし観なかった場合の私とでは、きっと人生が大きく変わってくる。

あんなにすごい踊り手と同時代に生きていることに感謝します。そして昨日、あの場所で彼のあの踊りを観ることができたことにも。

あの感動は、いや、「感動」なんて言葉ではない。筆舌尽くし難い「これ」を、今もいまだに自分の身体のどこかに残っている「これ」をどう表現すればいいのだろう。このブログは一体なんのためにあるんだろう、陳腐でお粗末。

フラメンコは偉大。

2013年12月12日(木)セビージャにて。

↓ おまけ。去年の夏にバルージョのクラスを受講した時の写真。萩原はちゃっかりバルージョの横にいます(笑)

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