萩原淳子のヘレス・フェスティバル2014鑑賞記①

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

ただ今へレスにいます。ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ。セビージャから電車で1時間ほど。同じアンダルシア地方ですがセビージャとは全く異なる町。人の雰囲気も使われる言葉遣いも、食べ物も飲み物も。どっちがいい悪いではなく、とにかく全然違う。当然その土地で生まれ育っているフラメンコも。そのヘレスで毎年2月末から3月上旬にかけての2週間開催される「Festival de Jerez」(フェスティバル・デ・ヘレス)、つまりヘレスのフェスティバル。今年はその前半1週間、ヘレスに滞在することにしました。

忘れないうちに、これまでに観たフラメンコ公演の鑑賞記をブログアップしようっと。萩原淳子の独断による(でも偏見ではないと思う)鑑賞記ですので批評ではありません。あしからず。

  • 2月22日(土)エバ・ジェルバブエナ「AY!」ビジャマルタ劇場

02570c9bdb黒。エバといえば黒。それが舞台全体を貫徹していた。舞台作品としてはシンプルで好き。シンプルにバイレ、カンテ、ギター。バイレはエバだけ。これまでの作品のように彼女なりの意味付けが押し出されている舞台作品ではない。それを具現化するための舞台大道具、特殊装置などもない。舞台にあるのはシンプルにテーブルと椅子。だからいい。個人的には、これまでの作品では彼女の言わんとしていることがよく分からなくて、なんだか取り残された気分になることが多かった。舞踊団員も上手だけど、ただの時間稼ぎのように思えたり。要するに私はエバの踊りが観たい。エバが踊ってくれればそれでいい派なので、その意味では今までの多くの舞台作品はあまり好きではなかった。その意味でこの作品は好き。エバは踊りで全てを語ることができる。だから余計なものを付け加える必要がない。

・・・しかし、作品としては好きだったけど、肝心のエバの踊りからうわっと伝わってくるものがなかった。なかったというより、これまで観たエバの踊りの〝リサイクル〟のような気がして、エバが踊る度に、「ああ、それ観た」「これも観たことある」という、私にとっては新鮮味に欠けているように思えた。もちろんどの踊りも素晴らしいのだけれど。

この公演で私にとっての最高のオレが出たのは、カンテ・ソロでカンティーニャスを歌ったホセ・バレンシア。素晴らしい。この人が歌うと舞台を全部塗り替えてしまう。この人の色に。オレが止まらないこのカンティーニャスでエバが踊ったらどうなったのだろう、と思ってしまった。

  • 2月23日(日)ガラ・フラメンカ ビジャマルタ劇場

983bb84c2dアントニオ・カナーレス。この人の存在感というのは一体なんなんだ。舞台に立つために生まれてきたような人だ。絶妙なタンゴ。この人の十八番のタンゴ。この人はちょっと動けばよい。ちょっと動くだけでフラメンコでありタンゴである。

対象的にいっぱい動く人達も舞台を飾っていた。踊り手それぞれに持ち味というのがあるからね。その持ち味を存分に出し尽くしたのがカルロス・ロドリゲスとヘスス・カルモナ。よく動くな〜よく回るな〜。ここまで動く身体を持つには、どれだけの訓練が必要なのだろう、そしてどれほどの才能が必要なのだろう。その比率は???? ヘスス・カルモナのアレグリアスは素晴らしかった。この人はただ身体が動くだけではない。コンパス、サパテアード、フラメンコ性、何をとっても天下一品。そこまで完璧な踊りを好きか嫌いかという「好み」で断ずることもできるのかもしれないけど、ここまで完璧だと別の惑星からきたんじゃないかと勘ぐってしまう・・・

(ちなみに昨年のコルドバのコンクールで、なんとこのヘスス・カルモナが予選に出場した私の踊りをビデオモニターでチェックしていた!!! やめてくれーーーー)

そして今をときめくカリメ・アマジャ。でもこの日はいまいちだったかなあ。それにしてもあのバタ・デ・コーラは一体・・・カリメと一緒に踊った女性舞踊家2人のバタさばきも・・・・あのバタはなんなんだ・・・だったら履かなきゃいいのに・・・。カリメのソロのシギリージャ(当然これはバタではない)もうーん。前述の踊り手達を観てしまうと、どうも雑に見えてしまう。それだけヘススがすごいということかなあ。

最後に、舞台全体を通して照明も素晴らしかったなあ。プログラムで照明担当者をチェックすると「David Pérez」とある。・・・???「ダビ・ペレス」という踊り手は今、新宿のタブラオで踊っているはずだから・・・同姓同名の別人か。どうでもいいですが。

写真:Javier Fergo(ヘレス・フェスティバル公式HPより。)

2014年2月24日 次回はベレン・マジャの公演鑑賞記です。

Comments are closed.