ビエナルのもやもや② スタンディング・オベーションに関して

みなさんこんばんは。

もう一つもやもやしていること。あ、このブログから読まれる方は、この前のブログもお読み下さいね。その続きです。ビエナル公演のスタンディング・オベーションに関してです。

スタンディング・オベーション。wikipediaで調べると以下のように説明されています。

スタンディング・オベーション(Standing ovation)は、演奏会やスポーツイベントなどで、観客が立ち上がって拍手を送ることである。素晴らしい演奏や演技、プレーに感動した観客による最大限の賛辞である。日本語では満場総立ちと表現することがある。逆に非難する場合は、ブーイングが用いられる。

結論から言って、皆、スタンディング・オベーションし過ぎなのではないか。どの公演に行っても、ほとんど全ての公演がスタンディング・オベーションになっている。「最大限の賛辞」を送る公演がそんなに毎回あるものなのだろうか。

先日、セビージャの外国人留学生達が出演する公演を観た。ビエナルの公式プログラムではないが、ビエナル期間中にセビージャの劇場で行われた公演だ。お世辞にも上手いとは言えないレベルの留学生達が頑張って踊ったのはよくわかった。きっとたくさん練習したのだろうなというのも垣間見えた。外国人留学生と言っても、もっと上手な人はたくさんいるだろうに、なぜ彼女達が起用されたのか不可思議で、公演としての質は残念ながら拍手にすら値しない。チケット代を返してほしいと思ってしまったくらいの公演だったが、スタンディング・オベーション・・・別の公演で、有名な舞踊家のビエナル公式プログラム内の劇場公演だったが、内容はフラメンコにはほど遠いもの。舞踊作品としては一級品なのかもしれないが、これは「ビエナル・デ・フラメンコ」の公式プログラムに入れてはいけないのではないか、と思ってしまったくらいの公演。が、これもスタンディング・オベーション・・・

上記は極端な例だけれど、それ以外の公演もぜーんぶスタンディング・オベーション。ちなみに私は、本当に素晴らしいと思った公演にしかスタンディング・オベーションをしないようにしている。なぜなら、観客の拍手というのがアーティストを育てるからだ。もちろん、どんな公演であっても公演を行うためには、観客には決して見えない努力、下準備、苦労というものがある。だからそれに見合う拍手はしたい。とある評論家のように、それすら認めず、アーティスト達が挨拶している最中にこれ見よがしに立ち上がって劇場を去るようなことはしない。しかし、何でもかんでもスタンディング・オベーションというのはどういう訳なのだろう。

理由の一つに、先程の「もやもや①」のブログに関連する部分があるのかもしれない。地元の愛好家が発する「OLE」を聞いたことがあるだろうか。確実に、愛好家だけが感じる瞬間。フラメンコの瞬間。彼らは決して、カッコいい踊りや高度な技術にスタンディング・オベーションはしない。しかし、ビエナルの観客の大半は外国人だ。その影響の一旦として “なんでもスタンディング・オベーション”という流れにつながってゆくのかもしれない。

「私は、本当に素晴らしいと思った公演以外は席についたまま拍手するよ」と夫に言ったところ、「ジュンコは正直すぎるんだよ」と言われてしまった。夫曰く、周りがみーんなスタンディング・オベーションしているのに私だけ座っているとすると、周りの人間は「あの人だけ立ち上がっていない」と内心非難するそうだ。だから結局みんな立ち上がるのだと。そしてバカ正直に座ったまま拍手する私は、感じの悪い人にされてしまうわけ。

そーんなー、ひどいー!!!と抗議すると、「だからジュンコは正直すぎるんだよ。正直なのはジュンコのいい所だけれど、時には自分で自分を狭めてしまう。ただ立ち上がって拍手をするだけで、周りの人から悪く思われないんだ。だからみんな立つんだよ」・・・いや、それでも私はできない。自分に嘘をつくなんて。そして私自身人前で踊る立場である以上、そんなスタンディング・オベーションなんていらないから。本当に素晴らしいと思った人だけ立って拍手をしてもらえればよい。そんなスタンディング・オベーションに慣れてしまったら、そして自分自身に嘘をついてスタンディング・オベーションをしたら、私は腐る。私という人間が、その人間から発せられる踊りが腐る。

そんな私に「すごくよく分かるよ。だから君と一緒にいるんだ。でもだから君に伝えなくてはならないんだ。」と言う夫。その言葉を聞きながら、何年か前に、とある日本人の踊り手さんに言われた一言を思い出した。

「淳ちゃん、そんなにまっすぐ生きていて、苦しくならないの?」

・・・・その時は、意味が分からなかったけれど、今ならちょっと分かるかも。苦しくはないけど、もやもやしています・・・。

2014年9月30日 もう何年かすると苦しくなっちゃうのかな・・・。 セビージャにて。

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