先週土曜のヘレスのフィエスタ

_DSC1092_DSC1135_DSC1181_DSC1294_DSC1362_DSC1692_DSC1895_DSC1951_DSC2010_DSC2121_DSC2191_DSC2374_DSC2724_DSC2602_DSC2620みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

先週の土曜日に知り合いのヘレスの人に誘われてフィエスタに行ってきました。ヘレスはセビージャから電車で1時間ちょっとの所にある町。フラメンコを学んでいらっしゃる方ならご存知だと思いますが、セビージャよりも規模が小さく、フラメンコ密度が高い。中でも“ブレリア”発祥の地でもあるヘレスだけに、ヘレスと言えばブレリア、ブレリアと言えばヘレス、といっても過言ではありません。(もちろん他の土地にも素晴らしいブレリアはあるけど)その独特のコンパス(フラメンコのリズム)、パルマ(手拍子)を耳にするだけでワクワクして身体中の細胞がぴちぴちする。あ〜生きていてよかったな〜と思う。セビージャに住んでいる私でも。日本人の私でも。

会場はヘレス郊外の土地にどーんと建っている別荘みたいな所で、とにかく雰囲気がステキ。中に入るだけでフラメンコが踊れてしまいそう。(気分だけなら誰でも踊れる。笑)たくさんのヘレスの人達が集まっていました。セビージャからは夫と私と私達の知り合いの3人だけだったかな?そのうち、アナ・マリア・ロペスと旦那さんのペドロ、そしてイネス・バカンもやってきました。うわー楽しみ!アナ・マリア・ロペスはヘレスでブレリアを教えていてもう30年以上にもなるベテランの先生。イネスはレブリーハの神々しい歌い手。どんなフィエスタになるんだろう!!!

各自持ち寄ったお料理をみんなで食べて、お腹いっぱいになったらフィエスタの始まり。そろそろ始まるかな?という雰囲気をすぐに察知するのがポイント。あの人がギター弾きそう、あの人が歌いそう、ってのを嗅ぎ分ける。そうしたらフィエスタの始まりそうな場所にささささーっと椅子を持って移動。これが遅れると、フィエスタ楽しめません。自然とできるフィエスタの輪の中にちゃっかり入る。もしくはその輪のすぐ後ろくらい。歌がちゃんと聴こえて、見える場所。ちなみに夫のアントニオは写真を撮るので座りません。というわけでアントニオはほったらかし、自分の選んだ場所に座ってしまう。周りの人達となんとなく話したりして楽しみ、楽しみ。

・・・ところが・・・ギターを持ち出した人がいきなりルンバを弾いて歌い出した・・・

・・・ルンバ????

・・・ヘレスのフィエスタで????

意味不明。でも一応終わるまで聞く。悪いけど大して上手くもないし、そもそもなぜルンバなのか?ブレリアではなくて?この人はフィエスタの主催者が雇ったギタリストってことなのだろうか???一応周りの人も拍手したりして、そしてまた別のルンバを歌い出す・・・なんなんじゃ、これは。そうしてしばらくルンバが続いた後、今度はセビジャーナスになった。

・・・・セビジャーナス???

・・・・ヘレスのフィエスタで???

またまた意味不明。歌われれば踊るってわけで、何人かの人達がセビジャーナスを踊り出すけど、全然面白くない。その頃には私の斜め前に座っていたアナ・マリア・ロペスが姿を消す。こりゃダメだと、離れた所にいたアントニオに合図を送りフィエスタの場から離れる。表に出てみたら誰かがお肉を焼いていたので夜食に頂く。(多分この時点で夜中12:00過ぎくらい)外にアナ・マリア・ロペスがいたので、近寄る。「ブレリア始まらないんでしょうかね・・・ルンバとセビジャーナスばっかりなんだけど」そう言うと「だから私達も外に出て来たのよ」と。そりゃそうだ。「ヘレスの人って言ってもねえ、いろんな人がいるから」、とアナ・マリア。そして「パケーラの姪っ子とかも来てるからそのうちブレリアになると思うけど、あのルンバとセビジャーナスが終わらないうちはブレリアは始まらないわね」・・・・なるほどね。じゃあ、しばらく待って、パケーラの姪っ子が歌うのを聴けたらいいかなと。

ぐるっと表を回ってまた会場に入ったら、あっブレリアになっている!というわけでまたフィエスタの輪に近づく。・・・でもなんだかイマイチ。うーん。と思っていたらイネスが立った!わーイネスが歌う!と固唾を飲んでその瞬間を待っていたのですが、聞こえてきたのはイネスの歌よりもヘレスのブレリアのパルマ・・・・

・・・違うんだよ。

イネスが歌うのはレブリーハのブレリア。ヘレスのブレリアとは全然違うんだよ。

どっちがいい悪いの問題ではない。違う。同じブレリアでも、コンパスのうねりが全然違うんだよ。なのになぜ、イネスの歌うブレリアにヘレスのコンパスでパルマがたたけるのか???

あーこんなんじゃ、イネスが可哀想過ぎる。と思ってぱっと斜め前を見たら、レブリーハのブレリアのコンパスでパルマをたたいていた人がいた。そう!そう!あなた!!!救世主のパルマとイネスの歌に耳ダンボ。でも多勢に無勢で、それらはヘレスのブレリアのパルマに消されて行く・・・あああああああああ・・・すると、どうしたことか、誰か出て来ちゃったよ・・・・、アンタ、イネスの歌で踊る気か?ダメってことはない。でもその出方で大体、その人がどのくらい踊れるのかが分かる。どれくらい踊れるかってのは、舞踊技術がどれくらいあるかということではなく、カンテをどうやって聴いて、カンテをどうやって踊るのかということ。その人は明らかに、とにかく何でもいいから踊りたくて仕方ない人。フィエスタの輪の中心に立って踊りたがるだけの人・・・あああああああ・・・そんな人にイネスの歌が汚されてゆく・・・・って言うのは言い過ぎかもしれないけど、フィエスタだからそんなこと考え過ぎなのかもしれないけど、そう思ってしまった・・・当然、イネスの歌とは全然関係ない踊りをして、イネスの歌は終わってしまう。可哀想なイネス・・・・誘われた分際でこんなこと思っちゃ悪いのだけど、このフィエスタは一体なんなんだ・・・しばらく微妙なブレリアが続き、気付いたらアナ・マリア・ロペスとイネスは完全に姿を消していた・・・そしてまたあのギタリストがルンバとセビジャーナスに戻してしまう・・・・

ここがセビージャだったら家に帰ればいいのだけど、ヘレス郊外の野原の中。車を持っていない私達は誰かが帰る時に乗せて行ってもらうしかない。あー、アナ・マリアの車に乗せてもらって一緒に帰ってしまえばよかった・・・・。しかし時既に遅し。そうこうしているうちに女の子達のブレリアが始まった。中心となって仕切っている人が多分、パケーラの姪っ子。風貌がそんな感じ。一人はすごい歌が下手なんだけど何回も出てきて歌う。パケーラの姪っ子らしき人も歌う。もう一人が上手かったなあ。さっきレブリーハのコンパスでパルマをたたいていた救世主だ。やっぱり、と感心。なーんとなくヘレスのフィエスタらしくなってきて段々面白くなってくる。そうしているうちに少しずつフィエスタの輪が小さくなる。(みんな帰っていくから。)すると、今まで周りで見ていたおじさん2人が歌い出した。一人はさっき一緒のテーブルで食事してたおじさんだ。本職は魚屋さんらしい。ヘレスのすごい所は、プロの歌い手でなくても、一般の人でもアルテの度合いが高い。もう一人のおじさんもかなりの強者だ。さっすがヘレス。そうそうそうそう、これだね!やっと出て来た、ヘレスのフィエスタ!

すると今度は私の向いに座っていたセニョーラがつかつかと寄ってきて、「アンタ、いつ踊るのよ?踊れるんでしょ?踊りなさいよ。アンタの踊りを見てみたいのよ。」と言う。出た・・・・これすごく嫌なんです。強制されて踊るの。恥ずかしがって踊らないわけでもない、もったいぶっているわけでもない。やっとまともに聴けるカンテが始まったんだ。自由に聴かせてはくれないものか。それにフィエスタのブレリアって、スイッチをポンと押されて踊るもんじゃない。タブラオで順番に踊るのとは訳が違うんだ。・・・と思いつつ、表面上はハハハ、と適当に笑ってごまかしたけど、そのセニョーラはその後ずーっと私から視線を離さない・・・。フィエスタに誘われた手前、それでも頑固に踊らないってのも失礼だしそれはそれで粋でもない。あーあーと思っていたら、さっき歌っていたおじさんがこちらを見て歌い始めたので、ここが年貢の納め時、萩原、ちょっぴり踊りました。楽しいといえば楽しいけれど、何かぶわっと自分の中から出て来たブレリアではない。ちょっと残念だったなあ。でも見ている人からすると、東洋人がブレリア踊っているという事実で驚いたり喜んだりすることもあるんですね。「Ole tú! 」とか言われたけど、真に受けない。ありがとう、とは思うけど。

そんなこんなでしばらくそのフィエスタは続き、そのうちわいわいみんな帰り出したので、ヘレス市内まで車に乗せていってもらう。この時点で朝6:00。始発の電車は7:00くらいからなので、チューロcon チョコラーテ(チューロをチョコレートにひたして食べる。朝帰りの定番)でも食べるかと思いきや、チューロはあと1時間くらいかかるとのこと。残念。飲み物だけ注文して始発電車に乗ってセビージャに帰ったのでした。

フィエスタっていろいろ。すっごい面白くで目がキラキラギラギラする時もあれば、こんな不発の場合も。後日アナ・マリアと話したら「つまんないから途中で帰っちゃったわよ」とのこと。そうだろうな〜と思いました。まあ、仕方がない。そういう時もある。

ところで、アントニオが撮ってくれた写真を見るとどれも楽しそう。・・・考えてみたら写真からは音が出ないんだよね、と二人で笑いましたとさ。

おしまい。

2015年10月9日 セビージャにて。

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