“フラメンケリーア”ライブを終えて。次回11/5・25・27に踊ります。

12092235_10206091456538777_2079849233_n12165911_946592492087572_1090654418_nみなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

一昨日のフラメンケリーアでのライブはお陰様で無事終了しました。ご来場下さいました皆様、誠にありがとうございました!共演のエウへニオ・イグレシアス、ギジェルモ・マンサーノもありがとう!想像通り、もしくはそれ以上の即興ライブ、爆発の夜となりました(笑)

ギジェルモと共演したのは初めて。歌はすごすぎるし、見た目怖そうだし、ギジェルモの共演する踊り手はカルメン・レデスマとかコンチャ・バルガス、ペペ・トーレスとか・・・まさか自分がギジェルモと共演するなんて思ってもみなかった・・・共演はエウへニオのおすすめで。共演予定していた歌い手が出演できなくなってしまってどうしようとエウへニオに相談した所、エウへニオが「ギジェルモ好きか?」と。・・・えーーーー!!!好きもなにも、すご過ぎる。・・・・と答えると、「で、好きか?」・・・YES!・・・というわけでエウへニオがギジェルモを呼んでくれたのでした。

フィエスタなどで同じ場に居合せたことは何度かありましたが、挨拶程度しかしていなかったので個人的にはあまりよく知りませんでした。でも私が会場に着いたらすぐにギジェルモが到着。この時点で好印象。大体待ち合わせ時間の30分前には私は会場入りします。ということはギジェルモも同じ時間に到着したということ。もちろん待ち合わせ時間に来てくれれば全く問題ないのだけど、時間に余裕を持って来てくれるというのはすごく嬉しい。

なぜか日本だと、アーティストっていうのは時間にルーズと思われている節があり、また、時間にルーズな程アーティストとして格が上、という風に認識される風潮にあるようだけど、それは違うと私は思う。一流アーティスト程時間をきちんと守る。逆に時間にルーズなアーティストっていうのは、アーティスト気取りしている3流もしくは4流の人。やむえない事情で遅れてしまうというのは、何流だろうと誰でも起こりうることだから仕方がないとして、時間を守るのは人として基本、プロフェッショナルな証拠。それはフラメンコだけでなくどの仕事でも同じだと思うのだけど・・・。

まあ、そんな訳で二人とも早く着いたのでコーヒーを飲みに行く。ちなみにギジェルモはファンタ・レモン。・・・これも変な認識があるというか、アーティストというのは出演前に酒を飲む、(お酒の中でもウイスキーとか)と思っている人が結構いる。それがアーティストのしるしというか、酒を飲まないとアーティストでないというか・・・。これにも違和感ある。夜通しのフィエスタとかでお酒を飲みながら、というのはあるけれど、通常のタブラオの仕事の前でウイスキーとか飲まないよね。ビールやワイン1杯くらいならあるかもしれないけど。本当にその人がその時にウイスキーを飲みたい場合は別として、ただアーティスト気取りでカッコつけて飲んでるのだとすれば、この人大丈夫かな?と不安になってしまう。だって、お酒の力なんか借りなくてもアーティストはアーティストなんだから。

すみません、話がそれていますが、ギジェルモとはいろいろ話しました。私と共演することにした理由は、エウへニオから「絶対にジュンコの踊り、気に入るから!」と言われて、家にいても退屈だしまあ、歌うかと思ったそうです。(笑)なんと正直な人。それを本人の前で普通に言ってしまう所がまた面白過ぎる。でも変なおべんちゃらを言われるよりよっぽどいい。それからなぜかギジェルモと奥様の馴れ初めの話しになり、それも面白かったです。(プライベートなことだけど、聞いてもいないのに本人から話し出して聞いてもらいたそうだったから、ブログにしちゃってもいいよね)奥様と知り合ったのは14歳の時。知り合ったといっても、道端で見かけて、コイツはいいなと思って結婚することに決めたそう。ヒターノだから結婚は早いんだよ、と。何度もアタックしたのだけど、「あんたはブサイクだからいやだよ!」と断れ続けて、それでもしつこく何度も何度もアタックし、最終的に彼女が微笑んでオレ達は結婚したんだ、だって。30年経った今でも「あんたのしつこさに負けて私は結婚したんだ!」って奥様に言われるらしい。そんな話をされて、きゃはははーと笑っていたら、いきなり真面目になって、「おい、ちゃんと踊らないとオレは歌わないぞ」と本気で言う。ギジェルモ・マンサーノ。歌も好きだが、この「人」も好きだ。

そうこうしているうちに駐車するのに時間がかかっていたエウへニオが到着。エウへニオはネスティーを注文し(ほらね、酒じゃない)世間話をして、じゃ、ちょっと合わせをするか、と。ソレアとアレグリアス・コン・マントンを踊る予定で、まずはアレグリアスから。構成の流れを説明してちょっと歌ってもらったのだけど、それを聴いてマントンで踊るのを辞めました。(笑)こりゃー、相当の即興になるわ、と。踊り手にアレグリアスを歌うことにあまり慣れていないし、今まで共演してきた歌い手の中で一番“Salvaje(サルバッへ)”かも・・・。

“salvaje(サルバッへ)”というのは野性的なというような意味なんだけど、まあそんな感じ。歌い方がそうであったり、声質がそうであったり。その人、歌そのものがそうであったり。踊り手の意向に合わせて器用に上手に歌う歌い手とは真逆の位置にある。ここ最近の流れとして、一般的な踊り手はサルバッへでない歌い手と好んで仕事をする。なぜならその方が事前の合わせの通り歌ってくれるので、自分が舞台上で“失敗”しない安心感があるから。要するに歌が即興になると自分が歌に対応できなくて舞台上であたふたしてしまう、そういう危険に冒されない、ということ。“賢い”歌い手はそれを見越して踊り手に分かりやすい歌、歌い方をし、踊り手がつつがなく踊れて彼のその歌を気に入れば、その歌い手はまた呼んでもらえる、つまり仕事が増えるというわけ。サルバッへな歌い手はそういう“賢さ”で歌うのではなく、自分の本能のおもむくままに歌う。その時に涌き起こった歌が外に出る。当然それが事前の合わせと同じ歌、同じ歌い方になるわけがない。ただし、いや、だからこそその歌は真実。

自分が踊る時に必要なものは、何か?

そう考えると、ギジェルモと共演できたことに心から感謝しています。

本当は1曲目をアレグリアスにして2曲目をソレアにしたかった。なぜならギジェルモといえばソレアだから。でも場所がタブラオ。外国人観光客が集まる場所ではやはり明るい曲が好まれる。フラメンコ愛好家の集まるペーニャのような場所であればカンテを理解している人が多いので、むしろソレアでしめた方がいい場合もある。でもタブラオだからな・・・と思って1曲目をソレア、最後にアレグリアスにしました。

ソレアもすごかったなあ。自分が踊り始めるまでにソレアの歌を1曲聴きたかったから、そうお願いしたけど、舞台袖で聴いているうちに涙が出そうになってきた。だから後はそのまま踊っただけ。観に来て下さったお客様の中で「ソレアがすごかった」とおっしゃって下さった方がいらっしゃったけど、そりゃそうだろう。あのソレアを聴いたら、たとえ観光客であろうとカンテを知らない人であろうとその凄さに固唾を飲んでしまう。

ギジェルモのカンテソロを挟んで2曲目のアレグリアス。猛ダッシュで離れた楽屋まで戻り着替えていたので、カンテソロは聞こえず・・・すごい残念。でもきっとすごかったんだろうな・・・・そしてアレグリアスの時に舞台に立つと、あれ、なんか一人増えてる・・・。ギジェルモのお友達がなぜかパルマ席に・・・。さっきのソレア、特にエスコビージャの時のギジェルモのパルマは確かに心もとなかった部分もなきにしもあらず・・・それで助っ人で舞台に上がったのかな?みんなニコニコしてこっちを見ているので、ま、いっか。と踊り出す。サリーダが終わり歌う呼ぶ前の所で二人のパルマを聞いて悟った・・・これは大変なことになる。

・・・・すっごい走ってる・・・

ギジェルモのお友達はフラメンコな人だからパルマの音がいい。ただし二人で盛り上がっちゃってパルマのスピードがどんどん上がってゆく。・・・・これ、大変なんです、踊り手にとって。パルマに合わせて自分のスピードを上げれば、自分がバテるし、全員が走りだしたらもうなんだか分からなくなってしまう。だから走り続けるパルマを抑えようとして踊るのだけど、それは本当に大変。苦しい。全然踊りが楽しめない。こりゃまずいな、という訳で自分の踊りの中のどこのポイントを要として抑えてゆくかを、歌が入る前の1コンパスの間に頭の中でシュミレーションする。そこでしか考えられないから脳みそフル回転。歌やファルセータが始まれば即興。今考えるとあの踊りは全部即興だったか・・・1カ所皆走り過ぎて、私も制御できなくて音がバラバラになった瞬間があった・・・あわわわわーと真っ青になりそうだったけど、踊っているのはアレグリアス。お客様の前では微塵たりとも出してはいけない。(思わず顔に出てしまったかもしれないが・・・)その後のエスコビージャはなんとか乗り切り、ブレリア。なんだか分からないうちに相当盛り上がってアレグリアス終了。元々マントンを使ってアレグリアスを踊るつもりだったけど、やはりマントンなしのアレグリアスにして大正解。(笑)でもせっかくマントンを持ってきたことだし、最後のフィン・デ・フィエスタのブレリアでマントンをちょっと使って全て終了。あーなんとか終わった!

お客様、皆様大変感激されていたようでよかった・・・アーティスト達もすごく喜んでいたけど、萩原、実はいろいろな意味で大変なライブでした。でも、あのソレアで踊れたのは本当に貴重だったなあ。多分自分の限界を振り切って踊っていたと思う。そんなわけか、昨日今日とダウン。おとなしく家でじっとしてブログアップというわけです。

次回は11/5と25に再びフラメンケリーアで、そして11/27には久しぶりにペーニャ公演!セビージャ郊外の町ドス・エルマーナスにある「ペーニャ・フアン・タレガ」で踊ります。早く元気になってまたがんばろうっと。

※写真はライブにお越し下さった方から頂きました。ありがとうございます!ちなみに後ろの方に映っているのがギジェルモ。・・・なんだか笑える。ふふふ。

2015年10月17日 セビージャにて

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