ご報告が遅れましたが、先週金曜の「ペーニャ・ニーニョ・デ・ラ・アルファルファ」公演は無事に終わりました。ビエナル期間セビージャ市内の劇場にてたくさんフラメンコ公演があったにもかかわらず、たくさんのお客様にお越し頂きました。誠にありがとうございました!まさかの満席+お立ち見もいっぱいということで、ちょっと遅く到着された方は会場に入れなかったとのことです・・・・せっかくお越し頂きましたのに本当に申し訳ございません・・・また次の機会があれば嬉しいです。
今回のペーニャ公演では本当にいろいろなことを試され、そして学ばせて頂きました。今回は初共演のギタリストからお声をかけて頂いての出演だったのですが、まず最初の段階でいろいろ考えました。このギタリストさんとは一度も共演したことがなく、また舞踊伴奏をされているのを生で聞いた事がありませんでした。時々セビージャのタブラオで弾いていらっしゃるのは知っていたのですが・・・どうしようかなと思いつつ、実はこれまでに何度も共演依頼を頂いていたのと、今回に関してはペーニャの日にちを押さえて下さっていたので、まあ共演受けてみるか。ということになりました。ビエナル期間中ということもあり、普段ご覧頂けないお客様(地方在住の日本人の方、上海クルシージョの受講生など)にもお越し頂けるいい機会かなと思いまして。歌い手は私が選んでもいいということで、その前のフラメンケリアやアロラの公演で共演して下さったディビにお願いし、彼女から共演OKの連絡があったこともあります。ディビもそのギタリストさんとお仕事されたことがないそうですが、「感じのいい人だよ、やろう!」と背中を押して下さったので。
お声をかけて下さったのは嬉しかったのですが、実際に共演してみて、ある人の、そのギタリストの感想は・・・「経験不足」。うーん、そうとも言えるけど、そうとも言えないんじゃないか・・・・。カンテ伴奏にしても舞踊伴奏にしても、確かに経験が足りないというより、カンテも舞踊も理解していないから弾けない・・・そんな印象。本番カンテソロの伴奏を楽屋から聞いていて、こりゃディビが可哀想・・・私の踊りの伴奏にしても、前日に彼とは合わせておいたのですが、その時点でこりゃ厳しいな・・・という印象を持っていたので、彼がちゃんと弾けるように、さらに分かりやすく(私の踊りはシンプルなので、本来誰にも分かる。プロフェッショナルな人なら)変えたのですが、それでもついてこれない。私の踊りが、ということではなく、フラメンコ舞踊の伴奏をする上でのスーパー基本を知らないんじゃないか。実際、この公演を観に来てくれた友達のギタリストが「オレが替わって弾きたかった!」と悔しそうにしていたし。(できれば私もその方が有り難かった・・・)
だからそういうことを全部ひっくるめて「経験不足」という言葉でまとめられるのかもしれないけど、重要なのは、今の段階で「経験不足」か否かということよりも、その経験から学んでいるのかどうか、ということに私はあると思う。誰だって「経験不足」だ。私も含めて。このブログを読んで下さっている方は、え、セビージャで踊っているじゃないですか、と思われるかもしれないけど、セビージャにゴマンというプロフェッショナルなアーティスト達からすればそりゃ、どうひっくり返っても経験不足だ。今回のペーニャ公演にしても、もっと経験のあるプロフェッショナルな踊り手であれば、どんな条件でももっとちゃんと踊れただろう。確かにこれまでの経験でなんとか持ちこたえた部分もあったけど、(以前の私だったらズタボロになっていたに違いない)それでもどうしても動揺を隠せずにそれが踊りに出てしまった部分があったのも否めない。とはいえ、毎回毎回の経験で、少しずつでも学んでいる。それが唯一の成長の仕方だと思うから。だから「オレは30年弾いていてプロフェッショナルなのに、仕事がない、誰もオレを呼ばない。」なんて発言がどこから出てくるのか全く理解できない。唯一理解できるのは、本当にプロフェッショナルな人間は自分で自分のことをプロフェッショナルだ、なんて言わない。言う必要がないし、本当にプロフェッショナルな人は謙虚な人だから、そんな発想が露ほどもないからだ。
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時を同じくして、ある人からこんな話を聞いた。私のクルシージョを受講したある生徒さんで「クラス内容が簡単すぎる」と怒っていた人がいたらしい。世の中にはいろいろな人がいることを理解しつつも、はああああああああ?である。まず、私のクルシージョでは基礎が中心で、初中級の方を対象としている。それはクルシージョ案内にきちんと記載されているので、皆さんそれを理解してお申し込みされている。もし自分のレベルが上級だと思うなら、最初から申し込まなければよいのではないか。隠しも、騙しもしていない。最初にちゃんと読まない方に責任がある。
しかし個人的にもっと問題だと思うのは、そういう人こそ、その「簡単すぎる」ことができていないということだ。
さらに問題だと思うのは、本人がそれに気付いていない。
なんでか?
・・・・謙虚じゃないからだ。
たかだかフラメンコを数年他の受講生よりも多く習っているから、ちょっとパソをとるのが早いから、自分は他人よりも上手だと思っている。そんな上手なアタシが、なんでこんな簡単なことをやらなくちゃなんないわけ?それ知ってるし。できるし。・・・・大体こんなところでしょう。でもそう思っている人こそ、できていないですよ、分かってないんですよ、知っていないんですよ。その人から見れば「簡単」なのかもしれないけど、“フラメンコ”という観点からみれば、それは「簡単」じゃないんです。難しいんです。重要なんです。だから学ばなくてはならないのに。
どうしてそう思えないのだろう?
・・・・謙虚じゃないからだ。
ちなみに、私のクルシージョには、明らかに私の目と耳から判断しても「上級」のレベルの生徒さんも初中級クラスに通っていらっしゃる。なぜ“当たり前の事”を自分よりも舞踊経験の少ない人に混じって、毎回毎回繰り返して学ぶのか?
・・・・謙虚だからだ。
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違う出来事だったけど結局同じテーマに行き着くということは、それについて考えなくてはならないということでしょう。そんな1週間でした。
2016年 10月7日 セビージャにて。