イネス・バカンとランカピーノ・チーコを聴く。

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先週末はランカピーノ・チーコの歌を聞きにトレブヘーナというレブリーハ近くの村に行きました。ランカピーノ(Rancapino)という素晴らしい歌い手15000623_10154659769956228_4503207052863931214_o
がいますが、その息子さんです。27歳くらいだったかな、確か。お父さん同様、元々素晴らしい歌い手だということは知っていたけど、あの日のソレアは素晴らしかった。そしてカラコリージョ・デ・カディスという友人の歌い手を舞台に上げて(その行為も素晴らしいと思う)一緒に歌ったファンダンゴには涙が出ました。
ビエナルでの彼の歌も素晴らしかったけど、あの日はそれ以上。トレブヘーナのペーニャ・フラメンカ(フラメンコ愛好家が集まる場所)でのコンサートだったということもあるかもしれません。小さな村の、しかし大きなフラメンコ愛に満ちば場所でのフラメンコ。客席からのハ

レオ(掛け声)も何もかもが違います。同じアーティストの公演でも、やはり私はペーニャで聴くのが好きですね。

そしてそれら全てをイネス・バカンの隣で聴けたこと。イネスはレブリーハというセビージャとヘレスの間にある村の歌い手。カンテ・フラメンコ界の柱の一つとなっている「ピニーニ」一族の血を引いたプーロ(純粋な)フラメンコの歌い手です。イネスがいた私の身体の片側はずっと暖かかった。何だか一緒にいるだ14999980_10154659770381228_631114092871858088_oけで自分の身体にフラメンコが満ちてゆくようでした。イネスのフラメンコの感じ方、ハレオの掛け方は、ペーニャの愛好家の皆さんや私とは違っていました。すごく興味深かったです。例えば、オレー!とハレオをかけるタイミング。愛好家の皆さんや私は、そのオレー!のタイミングが来るまでカンテを粘って聴いている。そのタイミングが来るまで待って、待って、待って、その最後の瞬間に「オレー!」となります。だから、そのタイミングが来そうだと分かっても、声を出さない。みんな黙ってじっとカンテを聴いているわけです。でもイネスはその段階で「オレー!」と言っている。小さな声だけど、「オレー、オレー」と連続したり。フラメンコを知らない人が何も知らずにやたらめったらにいろいろハレオをかけたりすると、周りの人がシー!と黙らせたりするのですが、イネスの場合は誰もシー!とは言わない。皆イネスがいることは知っているし、それに隣にいる私でさえ、それは全くうるさくなかった。むしろ心地よい。イネスのハレオ。それから、タンゴやブレリアが始まるとパルマ(手拍子)を叩き始めたイネス。もちろん大きな音ではありません。ふっくらしたイネスの両手が重なりあう程の音。でもこれも実はご法度。パルマと言うのは楽器と同じなので、客席にいる人間が叩いてはいけないのです。何かのコンサートに行って、客席で誰かが音楽に合わせて音を出すようなもの。でもフラメンコのコンサートだと、知らない人は一緒に叩いちゃったりする場合もあるようですね。しかしこのイネスのパルマもむしろ心地よい。何だか耳が豊かになった気がしました。

14918947_10154659771856228_8703743213440267309_o14918918_10154659772431228_8656726019785246886_o14991463_10154659773016228_1150593562574941453_oそして始まる前や途中や後で、イネスがたくさんのことをを語ってくれました。信じられないくらいたくさんのこと。彼女が個人的に私に語ってくれたことのなので、その内容はブログにしませんが、全部心に響いて突き刺さりました。絶対忘れない。

私はこの土地の人間ではありません。彼らのようにフラメンコと共に生まれ育った人間ではありません。セビージャに住んで14年くらい経ちますが、でも私はこのブログを読んでくださる皆さんと同じ外国人。そんなことは知っています。
でもそれでもここで生きているんだと思いました。自分の人生の一部がここにあるのだと。

アントニオ、写真ありがとう。大切にします。

2016年11月9日 セビージャにて。

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