あっという間にヘレスでの10日間が過ぎ、昨日セビージャに戻りました。ヘレスのフェスティバルはまだ今週末まで続きますが、ここ最近は1週間のみヘレスに滞在してセビージャに戻ることが多いです。フェスティバルは楽しいですが、人も多く、公演も多く、なんだかせわしなく、2週間だと疲れてしまうかな・・・という感じです。今年のフェスティバルでは、初日の2/24(金)に「ラ・グアリダ・デル・アンヘル」という会場でのソロ公演に出演しました。この通称「グアリダ」でのライブは期間中に毎日3〜4公演がフェスティバルと併行して行われます。フェステイバル公式プログラムではないのですが、地元の愛好家にも人気のライブです。実はこのライブへの出演依頼は昨年のフェスティバルの時でした。と言っても、グアリダの方から「来年は君にも出演してもらうからね」と言われただけで、えー本当かなーーー?という気持ちでした。別にグアリダの人がどうという訳ではないですが、一般的にスペイン(特にアンダルシア)において、声をかけられてもそれが実現することって結構少ないです。嘘つきとか、騙しているとかではないのですが、なんというか、多分その時の気分でパッと言ってしまうんでしょうね。そしてそれを後から確証する、しかも結構ギリギリに(笑)。だからそういうこともあって、スペイン(特にアンダルシア)での仕事って急に決まることが多い。ゆえに予定が立てづらい(笑)。
本当に公演のフライヤーを見るまではヒヤヒヤしていました。しかも、自分の出演依頼以外にも他の日本人の2ライブもオーガナイズしてほしいと頼まれ・・・残りの2ライブが決まるまで生きた心地がしなかったです。バルセロナ在住の中田佳代子さん、そしてヘレスといえば大沼由紀さんのお二人にご出演快諾して頂きなんと嬉しかったことか・・・でもお二人のフライヤーが出るまで内心ヒヤヒヤもしていました。お二人ともお忙しいスケジュールの中ご出演して下さる、特に大沼さんはこのライブのために日本からいらっしゃる・・・万が一直前になっておじゃんになってしまったら・・・もちろんそれは私の責任ではないのですが、お声をかけさせて頂いた以上、そのようなことがないようにグアリダの方とはできるだけ連絡を密にとっていました。まあ、いろいろありましたが、中田さんや大沼さんの公演も全て無事に終了し正直ホッとしています。お越し下さいました皆様、応援して下さいました皆様ありがとうございました!!!
ヘレスのフェスティバルで踊るのは4度目でした。ヘレスのアーティスト達に呼んで頂いて彼らのグループの中で1〜2曲踊らせて頂いたのが2回、セビージャからアーティストを連れてライブをし
たのが1回でしたが、今回のように私の名前のソロ公演をヘレスにて開催して頂くのは初めてでした。いつも共演しているセビージャのアーティストをヘレスに連れて行くか、ヘレスのアーティスト達にお願いするかかなり迷いました。セビージャのアーティストとの共演の方が当然慣れているのですが、せっかくヘレスのフェスティバルで踊らせて頂けるのだから思い切ってアーティストをヘレスで固めよう!と最終的には決めました。
その後は、今度はヘレスの誰にするか、です。ここも結構難しい問題でした。セビージャのアーティストだと誰と誰の組み合わせが良いかというのがなんとなく分かるのですが、ヘレスはあまりよく分からず・・・この組み合わせって結構重要なんですね。自分の好きなアーティストをただ集めればいいというわけではないです。私の場合はそのライブによってアーティストの選び方は変えていますが、今回はまずモモ・モネオに声をかけました。モモは昨年のヘレスのフェスティバルで私を呼んでくれた歌い手。モモの歌が私は大好きです。モモの叔父さんは今は亡きあの伝説の歌い手、「エル・トルタ」。そのトルタの声を彷彿させる、ものすごいフラメンコな歌い手です。ありがたいことに声をかけたら二つ返事で引き受けてくれました。ただ問題はモモはあまり踊り伴唱に慣れていないということ。そんなわけでもう一人の歌い手は、踊り伴唱に慣れていて、かつモモとの組み合わせも良い歌い手・・・。モモに聞いてみてこの人だったら・・・と思った歌い手がルイス・バルガス〝エル・モノ〟。なんでもかなり昔に日本にも踊り伴唱で来日していたそうです。今はなき「エル・フラメンコ」でのカルメリージャ・モントージャやトレオのグループで歌っていたそう。エル・フラメンコでのカルメリージャのグループといえば、当時毎日のようにライブを見に行ってたっけ・・・。あの頃は踊りばっかり見ていたけど、知らず知らずのうちに実はルイスの歌を聞いていたんだと思ったら、なんだか感慨深いものがありました。そしてルイスも二つ返事で引き受けてくれました。ルイスとは以前にちょっとヘレスで紹介してもらって挨拶したくらいなのでほとんど面識がなかったのですが。本当にありがたいことです。そして最後はギタリスト。モモとルイスともよく仕事をしている、ヘスス・アガラード〝エル・グアルディア〟にお願いしました。ヘススからも二つ返事。よかった〜〜〜。
でも本当にこの3人と私で大丈夫なのかは直前まで分かりませんでした。そんなこともあり、このグアリダの話の後に出演依頼を頂いたセビージャのペーニャ・トーレス・マカレナでのライブ(グアリダの2日前)も思い切って彼らに共演お願いしました。ヘレスから来て頂くので、セビージャのアーティストにお願いするより交通費が余計にかかってしまうのですが、それでも、まずはトーレス・マカレナで共演、そしてその2日後にヘレスのグアリダで共演、と同じメンバーで流れを作った方がいいかなと判断しました。結果的にはそれがよかったようです。最初はおっかなびっくりの部分もありながら全員で合わせをしたのですが、これはいい。という手応えがありましたよ。もちろん普段慣れているセビージャのアーティスト達とは音楽も歌も人としての雰囲気も全然違う。だから私の方ではちょっと戸惑ってしまった所もあったけど、結局は彼らをどう生かすか、そして自分も彼らの中でどう生かすか、という問題だと思うのです。そのためには当然彼らをリスペクトしますが、でも自分を卑下するのではなく、自分の良さも柔軟に共鳴させる。
難しいですが、これをクリアーしないと。いつでもどこでも自分にとって、ある意味「ラクな」アーティストと共演できるわけではないし、今回はあえてそうではないアーティストを自分で選んだのだから。でも昨年のフェスティバルでモモに呼ばれてソレアを踊った時、インフルエンザで大変な状況でも踊りきったし、彼らのあのコンパスの中で、踊った、という実感が自分の中であったので、大丈夫、という自負もちょっとありました。だから思い切って挑戦してみよう!と。
で、そこに来ての腰痛・・・。がーん・・・。(この件に関しては前々回のブログで書いていますのでそちらをお読みください。)なんとまあ・・・1月末にセビージャに戻り、それから公演に向けてみっちり練習しようと思っていたのに、ほぼ1ヶ月練習しない状況で公演に臨みました。まともに練習できたのは公演数日前から・・・。公演当日には調子がよかったのがせめてもの救い。でも、トーレス・マカレナの時には休憩を挟んで2曲踊ったくらいで体力消耗したにもかかわらず、ヘレスでは休憩なしで3曲踊っても大丈夫でした。不思議なものです。
2つの公演を通して感じたことは、彼らが持っている特別な「何か」によって、私の中の「何か」も引き出されたということ。それはセビージャのアーティストが持っていないもの。だからもしいつものセビージャのアーティストと共演していたら、それに遭遇することはできなかったと思います。セビージャとヘレスのどちらがいい悪いではないんですね、ただ単に違うということ。その違いが自分の中の「何か」を目覚めさせてくれた、化学反応を起こさせてくれたということです。あの感覚は独特ですね。そしてその感覚を持てたこと、持たせてもらえたことにとても感謝したいです。
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フラメンコって、土地によって全然違う。人によってはその違いを何かの盾のようにして、自分と違うものと対立したり認めようとしない人もいますが、私はそれはしないなあ。私には聴く耳があって、感じる心がある。そしてありがたいことにそれを身体で表現する術を持っている。そうやってこれまで、フラメンコの豊かさ、その土地土地が持つ味や匂いをそれぞれ享受してきました。聴くのも、観るのも、習うのも、踊る時もそうでした。多分これからもずっとそうだと思います。
写真:アントニオ・ペレス
2017年3月6日 セビージャにて。

























