アナ・マリア・ロペスに教えてもらった大切なこと。

19875433_10155460252436228_2598390319747131695_nみなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか?

先日、来日されていたヘレスのブレリアのマエストラ、アナ・マリア・ロペスの日本滞在最終日の打ち上げに混ぜて頂きました。お呼び頂きありがとうございました!短い時間でしたが、日本でお会いできて嬉しかったです。

普段私はスペインでアナ・マリア・ロペスのブレリアクラスを受講しています。長い間、セビージャに住んでいる自分はヘレスのブレリアを踊れないと思っていました。思っていたというか、思わされていたというか・・・。それはある意味正しいと思うのですが、どうも自分の中で腑に落ちない部分が長年あり・・・。

フラメンコを好きな方でヘレス大好きの方々がいらっしゃるとします。それはヘレスでなくても、例えばレブリーハでもグラナダでもどの土地でもいいのですが、ある土地が大好きな方々。自分が好きな土地があるってとても素晴らしいことだと思うのですが、それが極端になってしまうのか、それ以外の土地のフラメンコを認めない方々も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。

「ヘレス好きです」とか「ヘレスのブレリアが好きです」とか言ったりすると、「セビージャに住んでいるんですよね?」と言われます。「はい」って答えますけど、セビージャに住んでいる人間はヘレスを好きになってはいけないのでしょうか???あるいはその問いに「あなたにはヘレスが分からないでしょ」というような(カッコ)付のニュアンスを感じることがあって、見えない壁みたいのを作られてしまうような気がすることもあります。

・・・私にとっては摩訶不思議な現象なのですが。

ヘレスと言うのを、例えば「ヒターノ」に置き換えても、同じようなことが言えます。「ヒターノのフラメンコが好きです」と言った場合、「あなた、ヒターノに習ってないですよね?」とか「あなたの踊りはヒターノっぽくないですよね?」とか・・・。ヒターノの踊り手のクラスを受講していないと、信用されないのでしょうか???ヒターノが好きならヒターノっぽく踊らないとその証明にならないのでしょうか???

・・・これもなんだかよく分からない現象、私にとっては。

という感じでよく分からないことがこれまでに多々あり、じゃあ、私はセビージャに住んでいるからヘレスのブレリアは踊れないのか、となんとなく思っていました。でも、私はヘレスのおばちゃんみたいに踊りたいとか、ヒターノみたいに踊りたいと思ったたことがなかったし・・・。いや、どっちにしてもやっぱりヘレスのブレリアは踊れないのか???・・・いやいや、待て、そんなこと言ったら日本人はフラメンコ踊れないことと一緒じゃないか????(ただ、その問題になると夜眠れなくなるから、それはまた置いといて・・・。でも結局同じテーマなんだけど)

あー、うだうだ考えていても始まらないし、もういい、私はヘレスのブレリアが好きですから、アナ・マリア・ロペスに習い始めたのです。数年前から。

最初は全然ダメだった!セビージャのブレリアとヘレスのブレリアが全然違うというのは知っていても、長年セビージャで習っているとどうしても身体はセビージャ風に動いてしまう。こんなんじゃダメだ、ヘレスのブレリアが習えないと思って、最初の数ヶ月はすごく焦っていました。自分を、自分の持っているものを隠して、押さえつけて、アナ・マリアの教えを身につけようとしていました。

だから最初は楽しくなかった。ヘレスの歌やコンパスを感じるという意味では楽しくて仕方がなかったけど、それに自分自身が全然繋がっていなかったので、その意味で楽しくなかった。辛かった。でもそれはアナ・マリアのせいではなく、自分のせい。

それでも少しずつ、少しずつと通っているうちに、ある時アナ・マリアから「自分のブレリアを踊りなさい、好きに踊っていいから」と言われたのです。それまでは他の生徒さん達と同様にクラスの最初でアナ・マリアが教えて下さるその日のテーマの動きを使って踊っていたのですが。

でもなんか遠慮しちゃって、というか、自分の踊りを踊ったらセビージャ風になってアナ・マリアに嫌がられるかなあと思っていました。だからやっぱり自分を隠して、おそるおそる・・・

そんな状態も何ヶ月も続きました。

そしてある時(いつか覚えていないけど)、やっぱり「自分のブレリアを踊りなさい、好きに踊っていいから」と言われて、踊れないよなーと内心思いながら自分の出番でカンテを聴いていた時にアナ・マリアが叫んだのです。

「Sorpréndeme!!!! 」

ソルプレンデ・メ!!!

つまり、直訳すると

「私を驚かせなさい!!!」

そっか!!!そういうことか!!!その時にパッキーンと何かが自分の中で壊れたのです。その時自分がどう踊ったのかは分からない、でもあの「Sorpréndeme!!!!」から多分何かが変わった。だからあの言葉には感謝しています。

あれからまた何年か経っていると思いますが、かと言って、私は自分がヘレスのブレリアを踊っているとは思っていないです。セビージャのブレリアかって言われるとそうでもないと思います。じゃ、なんなんだ、と言われると・・・やはり自分の踊りなんだと思います。ヘレスの歌とコンパスを聴いている時に出てくる自分の踊り。

アナ・マリアがよく言います。「ヒターノはヒターノ、ヒターノでない人間にはヒターノの踊りは絶対に踊れない。だから踊るのは自分。自分以外の何者にもなれないし、なってはいけない」

すとんと私の中で落ちます。ずっと考えていたのはそういうことだったから。

きっとアナ・マリアは、私の中にあったそういう考えを見抜いて下さっていたんじゃないかなあ。そして私は何かによってがんじがらめにされていたことも。だから待って下さったんだと思う。時期を見てその殻を破れるようになるまで。

そして今、やっと気付く。何かにがんじがらめにされていたんじゃなくて、私は自分で自分をがんじがらめにしていたんだ、って。

素晴らしい先生。アナ・マリア・ロペス。

2017年7月13日

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