萩原淳子のフラメンコ鑑賞記 2017年9月・10月①/ホセ・デ・ラ・メーナ、アルヘンティーナ、メリッサ・カレーロ、ホセ・メンデス、ホセ・アニージョ

みなさんこんにちは。お元気でしょうか?

9月にセビージャに戻ってきてからこちらでいろいろフラメンコを観たり聴いたり、毎回ブログにしようと思いつつ日々の雑事にかまけて後回しにしていました。気づいたらあと3週間程で今年も終わりということで、ちょっと回想しながら鑑賞記をブログにしたいと思います。

  • 9月22日(金)ホセ・デ・ラ・メーナ/カンテ公演/ペーニャ・トーレス・マカレナ(セビージャ)

スクリーンショット 2017-12-10 1.51.45一時期騒音の問題で閉まっていたペーニャ・トーレス・マカレナですが、最近は毎週水曜がバイレ、金曜がカンテ公演というプログラムが定着しつつあります。バイレ公演にはペーニャ会員だけでなく、外国人留学生や観光客が押し寄せ、毎回かなりの人気ですが、金曜のカンテ公演はお客さんが少ない・・・。カンテの好きなフラメンコ愛好家ってセビージャには多くないんでしょうか・・・。(というより、カンテが好きでなければフラメンコ愛好家とは言えないと思うのですが)

夏の間約3ヶ月日本にいたので、あーペーニャでカンテを聴きたいとウズウズしていました。というわけで、セビージャに戻ってから初のペーニャ。この歌い手は聴いたことなかったけど、アンダルシア各地のコンクールで優勝とかしているらしい。・・・・しかし、この公演は結論から先に言うと不発に終わる・・・。アントニオ・マイレーナ調で上手いことは上手いのだが、何も伝わるものがない。知り合いのペーニャ会員は1部で帰ってしまう。もしかして2部になって盛り上がる可能性もあり、と望みを託し私は残ったけど、

ちーん。終了。

  • 10月5日(木)アルヘンティーナ/カンテ公演/カハソル劇場(セビージャ)

スクリーンショット 2017-12-10 1.48.58もう何年もシリーズ化している「Jueves Flamenco(フエベス・フラメンコ)」木曜日のフラメンコ公演。今年の開幕アーティストはアルヘンティーナ。個人的にはこの歌い手、あんまり好きじゃないんだよなー。でもしょっちゅういろんな所で歌っている人気歌手。もちろん下手じゃないし、いろんな歌を歌うからたくさん勉強しているのだと思う。確かに聴いていてこちらも勉強にはなるけど、残念ながら感動や興奮はしない、したことがない・・・。じゃあなんで彼女のコンサートに行くんだ?ということなのですが、そう思っていたのはたまたまかもしれない、自分の考え方や聴き方、感じ方が変わることだってあるかも・・・?せっかくセビージャにいるんだし、後からやっぱり行っておけばよかったと後悔するなら、行って後悔した方がいい。(笑)

この日はフラメンコ以外のジャンルの音楽もたくさん歌っていて、「世界には素晴らしい音楽がたくさんあるでしょう?」というようなMCをしていたけど、確かにそれは間違いではないけど、「Jueves Flamenco」のシリーズの開幕としてはどうなんだろうって思った。本人の個人的なコンサートであれば本人の好きな歌を歌えばいいのだろうけど、フラメンコ公演だから、フラメンコを歌ってもらいたいというのが普通なのではないかな。当然フラメンコを聴きたいからお客さんはチケットを買っているのだから。(アルヘンティーナのファンは何を歌おうと構わないのかもしれないけど)そんなこともあり、長く感じたなあ。周りのお客さんも飽きちゃった感じでざわざわしてたし。唯一良かったのは、普段の劇場ではなく、劇場外のパティオ(中庭)の屋外コンサートだったこと。この日すっごく暑かったから(10月なのに)。

  • 10月11日(水)メリッサ・カレーロ/バイレ公演/ペーニャ・トーレス・マカレナ(セビージャ)

22196313_924420541041284_8174428047082660938_nメリッサ・カレーロ(Melisa Calero)は確かコルドバの踊り手。結構名前を聞く人だけどまだ踊りを見たことがなかったので行ってみる。ソレアとアレグリアスを踊ったけど、ソレアはロサリオ・トレドの、アレグリアスはベレン・マジャの振付のようだった。確かにあの振付をマスターするのも、ロサリオやベレンの特徴を捉えて踊るのも大変なことだろうし、とても難しいことを成し遂げてはいると思う。でも私には真似にしか見えない。しかも本家本元にはどうやってもかなわないのだから、じゃあ、あなたは一体誰ですか?という話になる。真似を見るのだったら本家本元を見た方が100万倍いい。当たり前だけど。

確かに模倣から始まる。自分の好きなアーティストや師事している先生の模倣が最初の学びになるはずだ。でも重要なのはそこから何じゃないかなあ。私自身にも言えることだけど・・・。

※ちなみに、本家本元、おすすめのロサリオ・トレドのソレアはこれ。是非観てほしい。→https://www.youtube.com/watch?v=xmXw2kmbDEI
セビージャのタブラオ、ロス・ガジョスで踊られたもの。ロサリオの個性が炸裂した即興のソレア。最高!そして歌い手の中には ↓ で紹介するホセ・メンデスもいる。

  • 10月13日(金)ホセ・メンデス、バイレゲスト:ラファエル・カンパージョ/カンテ公演/ペーニャ・トーレス・マカレナ(セビージャ)

22467645_1478524488929257_2836726225353601971_oこの日からルイス・ペーニャのクラスに通い出したので、ペーニャには遅れて到着。というのはルイスのクラスが21:00まで、ペーニャは21:00開演だからスタスタ歩いても21:15頃到着することになる。着いたらもう満席。カンテの公演にはお客さんがあまり来ない、ってさっき書いたけど、今回は「バイレゲスト:ラファエル・カンパージョ」とチラシに記載されてあったので、それを目当てにバイレ好きのお客さんも殺到したか?1部は入り口近くで立ち見だったけど、相当なフラメンコ愛好家と思われる人が隣にいて、一緒にハレオをかけたりして心地よかった。

ホセ・メンデスはやっぱりすごい。かの有名なパケーラ・デ・ヘレスの甥にあたる。パケーラの甥といえば今をときめくヘスス・メンデスなんだろうけど、ホセもいいよ。あの貫禄、あの余裕。圧巻のカンテ。アントニオ・モジャの伴奏もいつもの通り素晴らしい。カンテを邪魔しない。カンテを引き出す。

ラファエル・カンパージョはソレア・ポル・ブレリアを1曲踊った。なぜゲストにラファエル・カンパージョなんだろうという疑問もあるけど・・・・というのは、別の踊り手の方がホセ・メンデスの歌に合うのでは?ラファエルが良くないとかそういうのではなく、なんかしっくり来ない気がする。フィン・デ・フィエスタではラファエル・カンパージョと、それから何人かの女の子たちが一緒に舞台に乗る。女の子たちは別に下手ではないし、それぞれちゃんと踊っていたし、それはそれでフィン・デ・フィエスタらしくて良かったのだと思うけど、カンパージョと同じ土俵に立たせちゃうのはカンパージョがちょっとかわいそうな気がした。カンパージョは一流のアーティストなんだし、ゲストとして呼ばれているのだから。でもいろいろ事情もあるのかもしれない、フィン・デ・フィエスタだから、ま、いっか、って感じなんでしょうか。

カンパージョの踊りも観ることができてお得感があったといえばあったけど、ホセ・メンデスの歌だけでもよかった気がする。カンパージョの踊りが見たければ、別の機会でもいいわけだし。ホセの歌だけでも私には十分素晴らしかったから。

  • 10月14日(土)ホセ・アニージョ/カンテ公演/ペーニャ・ボルムホス(ボルムホス)

22424370_1931930887069760_5923446953668947551_oこの公演もよかった。2日連続でいいカンテを聴けるなんて恵まれている。ボルムホスはセビージャ郊外の街。バスで20程で着くので近いのは近いのだけど、問題は帰り。ペーニャ公演の後ではもうバスがない。というわけで車を持っている知り合いのフラメンコ愛好家夫妻に連れていって頂く。着いたらなんと、ホセの妹のエンカルナ・アニージョがいた!エンカルナの歌、私は大好き。でも話すのは初めてなので「初めまして、ジュンコです」と挨拶したら、「あなたのこと知ってる。踊り手でしょ?あなたの踊り見たことあるわよ、セビージャの教会みたいな所で踊ったでしょ」と言われた。

きゃー♡感動♡ セビージャの教会みたいな所で踊ったのってもう7〜8年前?それを覚えてくれていたなんて、エンカルナ、なんていい人♡

ちなみにホセとは実は私は共演したことがある。日本でのAMIさんの公演「Mi Sentir 2」。あれはもう15年以上前。あの頃は会社員として働いいていて、スペイン留学前。森田志保さんとタラントを二人で踊った。歌振りの部分はそれぞれ全然別の振付を踊るというものだったのだけど(二人ともAMIさんの振付)その時ホセが歌ったのタラントが忘れられない。あまりに素晴らし過ぎて、私はAMIさんの振付が踊れなくなってしまった。リハーサルの時にほとんど動かなかった(というか動けなかった)私にAMIさんは「ちびさん(そう呼ばれていた)、それでいいから、足元を舞踊的にしなさい」とおっしゃったのを今でも覚えている。

話はどんどん逸れましたが(笑)、その頃からホセ・アニージョはすごかったということを言いたかったのだ。そして最近ではコルドバのコンクールでも優勝。これからどんどんソリストとしても活躍するんじゃないかな。

この日は音響が残念ながら最悪。ギターの音もボアーンボアーンとして、リバーブのかけすぎだな。そんなに広くないペーニャなんだから生音でも十分だと思うんだが。ギターはエンカルナの旦那さんのピトゥケテ。ちょっとあの音じゃかわいそうだよなー。そういえば、昨日トーレス・マカレナで隣になった相当なフラメンコ愛好家が会場にいた。やっぱりカンテが好きな人ってのはよく遭遇する。そしてこのボルムホスのペーニャ会員の皆さんは愛好度が高い。ハレオのかけ方が全然違う。ホセもそれを感じて「今日の皆さんはフラメンコをご存知だから」と前置きして普段は歌わない、ソレア・アポラーを歌ってくれた。ソレアというのはカンテコンサートでは必ず歌われるレパートリーの一つ。フラメンコの母ですから。ソレアは絶対外せない、特に愛好家が集まるペーニャ公演では。でもソレア・アポラーというのはあまり聴く機会がないかも、他のスタイルのソレアに比べて。(アルカラとかトゥリアーナとか・・・etc)だからそういうのって、愛好家にはたまらないんですよね。会場もウォーって唸ってました。

そしてこの日の圧巻がフィン・デ・フィエスタの中でも最後の最後に歌われた、サルバオーラ(Salvaora)。あのマノロ・カラコールの名曲サルバオーラをブレリアのリズムで歌ってくれました。素晴らしかった。感激。

ちなみに、カラコールのサルバオーラをご存知ない方はこちらを聞いてね。→https://www.youtube.com/watch?v=4rdZkQOgOQI

長くなりましたので、これにて。また暇を見つけて続きを書く予定。

2017年12月10日 セビージャにて。

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