レブリーハのサンボンバ劇場公演&カサ・ボッチョでのサンボンバ

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

先週末はレブリーハに行っていました。金曜日にレブリーハの劇場でのサンボンバ公演、そして翌日は同じレブリーハのバル「カサ・ボッチョ」でのサンボンバ。先程セビージャに着きましたが、濃すぎる2日間でただいまちょっとぼーっとしています。普段は日曜の夕方に自主練習をしているのですが、あまりに放心して練習をサボってしまった・・・。仕方ない。明日からまた頑張ろう。

24131468_1385553458240537_2954387486420273293_nまずは金曜の劇場でのサンボンバ公演。このチラシの出演者を見て、これは絶対行く!と決めていました。主な歌い手に(チラシ記載順)ホセ・バレンシア、アナベル・バレンシア、アントニオ・レジェス、ヘスス・メンデス、サムエル・セラーノ。ホセ・バレンシアはご当地レブリーハの若手実力派の歌い手。同じくアナベル・バレンシアも。(これからもっと有名になるはず。)アントニオ・レジェスは日本ではあまり馴染みがない歌い手かもしれませんが、チクラナ(カディス)出身のやはり若手実力派。そして日本でも有名なヘスス・メンデス。サムエル・セラーノはまだ聞いたことがなかったのですが、噂の歌い手でどうしても聞きたかった!そして踊りにコンチャ・バルガス。レブリーハといえば、コンチャ。コンチャといえばレブリーハです。

12月はクリスマスシーズンということで、フラメンコ公演もサンボンバ一色に染まります。ここで言うサンボンバというのは、クリスマスの歌をフラメンコ風にして歌ったり踊ったりする公演。スペインはカトリックの国ですから、イエス・キリストの誕生や聖母マリアのことを歌うクリスマスの歌があります。それをフラメンコアーティスト達が主にブレリアのリズムに乗せて歌ったり踊ったりするわけです。金曜の公演は夜10時くらいに始まり、終わったのは夜中の2時くらいだったかな?休憩を挟んで1部と2部に分かれていましたが、まず1部に歌ったサムエル・セラーノ。この歌い手が良かった。とにかく若い。まだ20代前半かな?・・・・にもかかわらず、古い。古いってのは彼の歌から香ってくるものが、です。若いだけに荒削りの部分も感じられたけど、それがこれから年齢を経て渋みを増してくるのかなあ。いやあ、いいなあ、こういう超若手がいるっていうのは素晴らしいし嬉しい。

2部で特に良かったのはアントニオ・レジェス。あの情感がこもった歌い方にoleだったなあ。好みもあるかもしれないけど、大きな声で思い切り伸ばして歌ってoleを引き出す歌い手も多い中、それとは真逆のアルテ。なんというか、踊りでもとにかく大きく誇張して踊ったり、異常な程サパテアードしたり、マントンやバタ・デ・コーラをとにかく動かすだけ動かす踊りというのがある。要するに誰が見ても聞いても分りやすい訳で、それによって簡単に拍手を引き出すこともできなくはないわけです。aplauso fácil(アプラウソ・ファシル)っていう言い方をしますね。中にはそれを狙うあざとい踊り手というのもいるわけで・・・。でもそうじゃないんだよなー、フラメンコの本当の素晴らしさはそこにはないんだよなー、と思いつつ・・・・アントニオ・レジェスの歌を聴きながらふっとそんなことを思いました。

25445372_889920337832487_2104545961_oそしてトリはやっぱりコンチャ・バルガス。普段黒の衣装で踊ることが多いコンチャだけど、この日は白とピンクの素敵なブラウス見たいのを着ていた。とっても素敵。コンチャの存在感で劇場が埋め尽くされてゆく。私は劇場の最後列に座っていたけど、コンチャのオーラがビンビン伝わってきました。コンチャの娘さんカルメン・バルガスがコンチャの踊りの時にずっと歌っていたけど、同じレブリーハ出身のホセ・バレンシアにも歌ってほしかったなあ。昔、アンドレス・マリンの公演でホセ・バレンシアの歌で踊るコンチャ・バルガスを見たことがあったけど、あれは歴史に残る瞬間だったなあ。ああいうのはもう観られないんだろうか・・・。

あと、チラシに名前は載ってないけど、レブリーハの若者達のパルマがすごかった。彼らはアーティストではない。普通の男の子達なんだけど、パルマのレベルがすごい。どれだけ彼らの中にフラメンコが根付いているか、そういうのが垣間見えてうーんと唸ってしまった。すごいな、レブリーハ。

写真は終演後劇場の外で、コンチャとルイス・ペーニャのクラスで一緒のAさん。Aさんお写真ありがとう!
25075212_556494028021416_2022864188333103950_o25520657_1509415862440207_1470043030_o25520749_1509415859106874_1620716612_o25520889_1509415839106876_220758019_o25508974_1509415849106875_513909889_o25510727_1509415845773542_1204286990_oそして翌日土曜の「カサ・ボッチョ(Casa Bocho)」でのサンボンバ。この間レブリーハでのサンボンバTV番組の収録に行ってきた時に、このボッチョでのサンボンバの話を聞き、「あー行きたいです!」と話してたら、ボッチョのチラシ、バイレ出演者の所にになぜか私の名前が・・・「Yunko(de Japón)」え、なんで、私、踊ることになっているわけ????勝手に出演者にされていたのですが(笑)、まあいいか。というわけで翌日はのこのバルへ。すごい人でした。人・人・人。お昼ご飯をボッチョで食べた後、お店の人たちがテーブルをガガガーと片付けてサンボンバ会場に変身。私は輪の2列目にいたけど、その後ろにも4〜5列くらい人が座ってたかなあ?その後ろに立っている人たちもたくさん。100人以上はいたのだろうか・・・。みんなでパルマ叩いたり、一緒に歌ったりサンボンバは楽しいですね。でもとにかくすごい人だらけだったから、しかもみんなシーンとして聞いているわけでもなくガヤガヤ・・・肝心のカンテとギターが聴きにくかったなあ。それがちょっと残念だった。

みんな自主的に踊り出したり。コンチャもすごく嬉しそうに踊っていました。レブリーハで教えている生徒さんと一緒に踊ったり。そして私まで呼んで下さいました。「一人で踊る?私と踊る?」とコンチャに聞かれて、そりゃコンチャと、でしょう!!!というわけでちょっと緊張しつつコンチャと向かい合って踊り始め。もちろん即興で。コンチャに習ったのは数年前。ああ、あの時そうだ、こういう感じだった、なんて懐かしく思いながら、でもコンチャの踊りの「intención」(インテンシオン)にはやはり全然かなわない・・・と。動きは分かる。習ったことがあるし、何度も見たことのあるコンチャの動き。でも実際に向かいあって踊ってみると、コンチャのそれと私のは全然違う。外から第3者として見ているわけではない、でも向き合ってコンチャから出てくるもの、感じられる「それ」は私には全然足りないってそう思った。だってコンチャ・バルガスだよ。相手は。もちろん競争しているわけではない。コンチャから出てくる「それ」をいっぱい吸収して、自分の中から何かを引き出したくて・・・。あっという間に終わってしまった・・・。でもキラキラした至福の時間だった。コンチャ、本当にありがとう。

54bocho57bochoそしてその後が感動だった。一人の女性が、帽子をかぶってとてもエレガントな年配の女性が、男の子(息子さんか?)にかかえられながら輪の中から立ち上がった。彼女は一人では立てないようだった。足が悪いのかな・・・と思っていたら、近くに座っていた人が教えてくれた。

「彼女はもうすぐ死ぬんだよ」

「癌なんだよ」

・・・心臓が凍りそうになった。

でも私の眼は彼女の手の動きに吸い寄せられていた。なんて美しい動きなんだろう。この世のものとは思えない・・・。

その彼女にコンチャが近づいて、コンチャは彼女を抱きかかえながら踊った。コンチャの顔も泣きそうになっていた(泣いていたのかもしれない)。あんなコンチャを私は今まで見たことがなかった。あの女性の手の動きも、きっと忘れることはないと思う。

人が言うように、お亡くなりになってしまうのかもしれない。でも最後の力を振り絞って、最高にエレガントにしてあのサンボンバにいらしたのかもしれない。あの手の動きが人生最後の踊りだったのかもしれない。

でも、手の動きには命が宿ってた。

それを私は見た。

写真:アラセリ・パルダル
その他の写真はこちらでご覧頂けます。→http://www.lebrijaflamenca.com/2017/12/14-momentos-que-lo-cuentan-todo-zambomba-del-bocho-con-sabor-gitano-2017/

2017年12月17日 セビージャにて。

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