ただいまセビージャはフェリア真っ最中。今週1週間はセビージャ郊外の敷地で毎日お祭り。といっても仕事もしているし、毎日行くのは疲れるから私は毎年2回くらいかな、フェリア会場に行くのは。今年はまず、ペーニャ・トーレス・マカレナのカセタ(フェリア敷地に仮設される飾り小屋みたいの)でカルメン・レデスマグループのフラメンコライブがあるとのことで、それをめがけて火曜に出かけてきました。フェリアと言うと一般的に民俗舞踊のセビジャーナスが踊られますが、フラメンコのライブも行われます。カセタのオーナーがフラメンコ愛好家だったりすると、フラメンコアーティスト達を雇って自分のカセタでショーをしてもらうのです。セビジャーナスもいいですが、ずーっと踊っているとちょっと飽きてくる・・・やっぱり私はフラメンコが好きだな。
セビージャのフェリアのカセタは会員制で、会員やもしくは会員の知り合いでないと自由に入れないカセタがほとんどです。もちろん誰でも入れる公共のカセタもあるのですが、やはりセビージャのフェリアは個人のカセタに入った方が楽しい。カセタによっては入り口に警備員を立たせて入場者をチェックしたりする厳しいカセタもあります。そうではなく割と自由に出入りできるカセタもありますが。「閉鎖的だよね」と云う意見もありますが、現実問題、フェリア敷地の中でカセタを1年間維持するためには、要するに次のフェリアまで維持するためには会員はお金を払っています。払うお金のない人はカセタを維持する権利を失い、お金を払えてカセタを所有したい人に権利が譲られるというわけです。だからお金を払っている人間だけがカセタに入れて、維持費を払っていない人が入れないというのは、お金を払っている側からすれば当然なのかもしれませんね・・・。
もちろん私はカセタを持っていません(笑)。まあ持っていない一般市民がほとんどですから、結局カセタを持っているお友達や知り合いをつてにして、あちこちカセタを渡り歩くわけです。トーレス・マカレナのカセタも、私はペーニャ会員ではないですが、カセタの中にいる知っている人を見つけてカセタに入ってしまったというわけ。
フラメンコのペーニャだけあって、ちゃんとライブ用の舞台が設置されていました。でも通りに面したカセタで壁がなくカーテンで仕切ってあるだけなので、外の騒音が結構聞こえてきます。フェリアってあちこちで音楽が大音響で流れているから、独特の雰囲気。劇場やタブラオでフラメンコ鑑賞するのとは全く異なります。カセタの外もうるさいし、観客も開放的な雰囲気でショーの最中でもおしゃべりしたり食べたりしている人も結構います。そして、そうなってくると手を抜くアーティストも実は結構多い・・・。うるささに対抗するためにただ単に目立つだけの派手な動きで踊ったり、大声だけ出して歌ったり。ギタリストもどうせ聞こえないからって、テキトーに弾く人も多い。仕方がないといえば仕方がないのかもしれないけど、中には熱心なフラメンコ愛好家もいますからね。私のように。(笑)
そんな中でカルメンはカルメンでした。どんな状況でも手を抜くことも媚びることもせず、カルメンはカルメンの踊りを踊る。それってアーティストとして当たり前のことなんだけど、でもその当たり前のことが当たり前にできるというのがすごい。だからこそアーティストなんだ。真のアーティスト。カルメン・レデスマ。もちろんもっと環境が整っていればもっとカルメンの踊りは良かったのかもしれない。それは人間だからそういうこともある。でも私は、やっぱりカルメンはすごいなって思う。ただの踊り手じゃない。
そしてカルメンは人としてもすごい。あの日カセタに来ていたカルメンの生徒やカルメンを慕う若者たちを舞台に上げてパルマをたたかせたり、フィン・デ・フェイスタに呼んだり。もちろん私も呼んで頂きました。1部と2部の休憩の間に「ジュンコ、フィン・デ・フィエスタで踊ってね」と声をかけて下さり、しかも2部のフィン・デ・フィエスタになる前に、舞台の上から「ジュンコ」って名指しで呼んで下さった。そうでもしないと舞台の上に乗らない私を引っ張り出してくださったのだ。そのカルメンの暖かい心、人としての懐の広さに感動。オレがオレが、私が私がって自分が主役になることだけ考えている踊り手とは次元が違う。カルメンがそういう人で、だからそういう踊りをするというのは知っていたけど、改めてカルメンに感謝した夜でした。
ちなみにあの日着て行ったフェリアの衣装は、実は前日に夜なべをして直したもの。衣装が入らないのは想像していたけど、そこまで入らないか!と自分でも笑える程ファスナーが閉まらなくて(笑)。それでもパツパツで、あの衣装で踊るのはかなり大変でした。だから大したことはしなかったです。でも楽しかったなあ。終わった後にペーニャ会員の皆さんから暖かいお言葉を頂けて嬉しかったです。いい夜でした。
カルメンありがとう。
写真:アントニオ・ペレス
2018年4月20日