アナ・マリア・ロペス教室の発表会を観る&子どもにフラメンコを教えるということ。

_DSC6758_DSC6805_DSC6832_DSC6914_DSC7740_DSC7814_DSC7986_DSC8034_DSC8133_DSC8167_DSC8223_DSC8264_DSC8342みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

今週末はヘレスで過ごしました。目的はアナ・マリア・ロペスに会いに行くこと、そして彼女の教室のフラメンコ発表会を観ることです。

アナ・マリア・ロペスはヘレスで40年以上にも渡ってブレリアを教えているマエストラ(偉大な先生)。その彼女が以前週に1回セビージャまで教えに来てくださっていました。私はそこでアナ・マリアに数年ヘレスのブレリアを習っていたのですが、今年からセビージャでは教えられないことになってしまったのです。あの週1回の輝かしい日々が戻ることはない・・・。先生が教えに来て下さることが当たり前だと思っていた私は大馬鹿だったと気づきました。

私はヘレスの人間でもヘレスに住んでいるわけでもない。でもアナ・マリアから教えてもらったことは私の中に深く深く刻み込まれています。そしてそれはブレリアだけでなく、フラメンコ全般や教授方法にも・・・。

そんな時に、アナ・マリア・ロペスの所で初めてフラメンコを始めたというお子さまを持つ日本人のお母様方から、この夏に日本でそのお子さん達のセミ・プライベートレッスンをしてほしいというご依頼を頂きました。私は子どもが大好きで、セビージャに留学する前にも小学生対象の塾で働いていたのですが、フラメンコを子どもに教えるのは全く初めて。そんなわけで、アナ・マリア・ロペスに直接お会いして、子どもに教えるにあたってのアドバイスを請おうと思いヘレスまで行ってきたのでした。

その子ども達のことをアナ・マリアは覚えていました。「今度その子達にレッスンすることになったのだけど・・・」と話しかけた途端に「私からアドバイスするわね」ってすぐに教えてくれたアナ・マリア。もちろんそのアドバイス通りに私ができるわけがないのだけど、私なりに頑張ってみたいと思う。

クラスというのは生もので、自分がこうしようと事前にレッスン内容を考えていてもその通りにいかないことが多い。というのは生徒さんたちの反応や習熟度というのはその時々によって違うから。まして私のようにクルシージョという形式で毎回生徒さんが変わる時はなおさらだ。それを無理に自分が考えていた通りの流れや内容にしようとすると、クラスは失敗する。失敗というのは、つまり生徒さんがちゃんと学べないということ。かといって流れのまま流されてしまうと肝心な部分が教えられないし・・・。

子ども達に教えるということは大人に教えることとは全く異なる。でも子どもだからって「子ども扱い」してはいけない。それは以前塾で働いていた時に学んだこと・・・。どんなクラスになるんだろう???3回だけのクラスだけど、子ども達が何かを感じたりつかめたりするクラスになるといい。

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アナ・マリア・ロペスに会った翌日に彼女の教室発表会があった。幼稚園生から中学生くらいの子ども達15人程と外国人留学生の大人が2名が出演するという。発表会当日の午前中にリハーサルがあるというので、そのリハーサルから見学させて頂いた。

アナ・マリア・ロペスの教室の子ども達のコンパス感。群を抜いている。いろいろな場所で子どもが踊るフラメンコというのを見たことがあるのだけど、確かにその年齢でしっかり踊っていればすごいね!という話になるし、その子が小さければ小さいほど可愛い!という話になって、子どもが出てきただけで場は盛り上がる。でもその子どもの特権みたいのを取っ払ってみたとしても、彼らはフラメンコなのだ。そこがすごい。お遊戯でも学芸会でもないフラメンコ。本当に素晴らしかった。たくさんのフラメンコ公演を観てきたけど、これほどまでに熱いものはそうそうないと思う。

もちろんリハーサルでは緊張してコンパスを外す子ども達も何人かいたし、(大人の私達だって外しますよね。笑)本番でも外してしまった子どももいた。でもなんて言うのだろう、彼らの中にコンパスがうごめいている。コンパスが彼らを踊らせている。数を数えた振付を踊るんじゃなくて。

最初の教えが肝心。子どもはそのまま吸収する。吸収したものがそのまま踊りになる。良くも悪くも。

もちろんヘレスという土地柄もある。生活の中にフラメンコが根付いている土地。フラメンコの教室に通う前に、おじいさんやおばあさんやお父さんやお母さんが普通に歌って踊ってギターを弾いている。そんな中で育っている子ども達が多いのだ。そういう土台があってフラメンコを学ぶのとそうでないのと・・・それは全然違う。仕方がない。ありえないことだけど、自分がもしヘレスに生まれていて、アナ・マリア・ロペスの教室に小さな頃から通っていたらどうなっているんだろうって想像してしまった。(笑)

そして親御さん達のこともちょっと思った。親によっては他の子どもに対して競争意識を持っている親もいるのかなって。うちの子が一番!って思うのはどこの親も同じなんだろうけど、その度が過ぎてしまっている場合もあるのかなあって・・・。これも塾で働いていいた時によく思ったのけど、親が自分の思いを子どもに投影しすぎてしまうと子どもの方は大変だ。なんとか親の期待に応えようと頑張り過ぎてしまったり(多分後から歪みが出る)、もしくは反発して意固地になってしまったり(もっとひどい状況になることもある)・・・。

私はフラメンコを教えるだけだから、本当に子育てするのとは全く異なるのだけど、教える時に自分のエゴを押し付けちゃいけないって思う。その子が上手になるように、とかその子のためにって思うことが本当にその子のためなのかを見極めなくてはならない。もしかしたら「その子のため」ではなく、それは教える側の自分のエゴ、「自分のため」かもしれない・・・。

あれから色々考えている。

アナ・マリア・ロペスだけではなく、エステルという踊り手さんも助手みたいな感じで教えていらっしゃる。リハーサルで子ども達が間違ってしまった時の教え方。アナ・マリアとエステルとでは教え方も子どもへの接し方も違う。どちらがよくでどちらが悪いという問題ではないし、私がそう判断することはできないのだけど、リハーサルを見ながらその違いをじっくり観察した。そしてその時の子ども達の反応。本番でのパルマの叩き方、子ども達への視線、踊り終わった子ども達にどう接しているか、どうお客さんに紹介しているか、細かいことかもしれないけど、学ぶべきことはたくさんあった。

まだまだ考えることはあるのだけど、多分、この週末に学ばせて頂いたことはきっと何か大きな流れを作るだろう。わたしの中で。

アナ・マリア・ロペスは偉大だ。

写真:アントニオ・ペレス

2018年6月25日 セビージャにて。

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