レブリーハTVのサンボンバ出演②(フアニートくんのこと)

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みなさんこんにちは。

先程のブログの続きです。レブリーハのフアニートくんのことをブログにしておこうと思います。

フアニートくんは多分30代前半くらいかな。レブリーハのフィエスタには欠かせない存在。若手愛好家のリーダー格で、そのパルマとハレオでガッとみんなをまとめることも盛り上げることもできる。そして踊りがすごいんです。フアニートくんはプロの踊り手ではありません。でも何かある、きっとアカデミアとかに通っていたらいい踊り手になったのではないか・・・そんな気がします。フアニートくんのお母さん曰く、小さい頃から踊りが好きで、誰に習う訳でもなく勝手に踊っていたとのこと。ああ、そういう踊り。フアニートくんの踊りを見ると、ああ、レブリーハだなって。レブリーハのコンパスがそのまま息づいている。フアニートくんが踊ることでレブリーハのコンパスがより濃くなる。くっきりとコンパスが目の前に描き出されるように。だから私はいつもフアニートくんの踊りを見るのが大好き。いつも変わらないはずなのに、でも何かが変わっていてワクワクさせてくれる。踊り終わった後、あー終わっちゃったーって思うんだけど、なんだか幸せな気持ちになる。私だけじゃなくて、多分周りのみんなも。その雰囲気も全部ひっくるめてレブリーハ。それがフアニートくんの踊り。

私が初めてレブリーハのヒターノ達のフィエスタに行った時、仲間に入れてくれたのもフアニートくんだった。私はフィエスタの輪のちょっと「外」にいた。そのフィエスタの中心にいたフアニートくんがフィエスタの輪の「中」に呼んでくれたんだ。そして自分の隣に座るようにって。その場所は何か樽のようなものだった。その縁に座っていたからお尻が痛かったのを覚えている。遠慮してじっと座っていた私に(嬉しくて顔はニヤニヤしてたけど。笑)、フアニートくんは「パルマ!」って叫んだ。私にではなくみんなに向かって。でもそれは本当は私もパルマ参加しなよ、というのを遠回しに教えてくれたんだと思う。私がパルマを叩き始めるきっかけになるように、この一見さんの東洋女がパルマを叩き始めても、フィエスタのみんながえ?っていう雰囲気にならないように。踊った時もそうだった。私が踊りやすいように周りのみんなにそっと促してくれていたのを私は知っている。フアニートくんという人はそういう人。だからきっとみんなフアニートくんについてゆくんだな。ただ踊りやパルマがうまいだけじゃない、私から見たフアニートくんはそういう人。

そのフアニートくんの踊りを今年も一昨日のサンボンバで見られると思って私は楽しみにしていた。

でも、今年は違った。

パルマを叩いているのは同じだった。ハレオをかけているのも同じだった。端っこの方に座っていてもみんなの中心だった。でも今年は違った。

リハーサルの休憩で立ち上がった時に、フアニートくんは松葉杖を両手でついていた。あ、足怪我しちゃったのかな、今年は踊れないんだ・・・・と思って、「足どうしたの?」と声をかけた瞬間、私は息を飲んだ。それは捻挫や骨折といった怪我じゃないってこと、近くで見て初めてわかった。両脚がぐんにゃりしてた。膝と足首が違う方を向いていた。マリオネットの脚を床につけたみたいに。どうしたら脚がそのようになるのか、私の頭は混乱し、フアニートくんが「脚が悪いんだよ」と短く答えて行ってしまうまで、思考も体も固まったままだった。

友人に聞いたら、骨の病気のようなことを言っていた。詳しい病名は分からない。そこまで根ほり葉ほり友人に聞くのもためらわれた。ただ、最近それが見つかって、どんどんそれはひどくなっていく病気なんだと・・・・。あのフアニートくんが、もう踊れなくなってしまうのか?踊れないどころか、もう自分の足でも歩けていない・・・・フアニートくんの気持ち、お母さんの気持ちを想像したら、胸がとても痛くなった。

これからフィエスタの収録本番が始まるという時、みんながバラバラと休憩から持ち場につき始めた時、フアニートくんの何人かの仲間がパルマでコンパスを繰り出した。そしてその時、私は見た。フアニートくんがブラッソ(腕)と上体で踊ったのだ。それは踊りというよりも、そのコンパスをしめるための、短いレマーテだった。その上半身の動きだけのレマーテで私は一瞬呼吸が止まるかと思った。

これぞレマーテ。レマーテとはこれ。

ほんの瞬間だった。でもその瞬間を逃さなかったことを私は何かに感謝した。その後フィエスタの収録中にフアニートくんが踊ることはなく、収録は終わった。今年私が見ることのできたフアニートくんの踊りは、そのレマーテだけだった。でもフアニートくん、踊ってたよ!!!すごかったよ!!!ちゃんと私はそれを見たよ!!!、って心の中で叫んだ。本人には何て声をかけていいか分からなかったから・・・・。ただの身体機能としては「踊れる」私がかける言葉というのは、どんな言葉であれ今のフアニートくんにとってはただ苦しめるだけになってしまうだろうから・・・。

手術すれば治るのだろうか・・・手術できるものなのか・・・何とか治ってほしい。前みたいに踊ってほしい。・・・でもそれは当の本人が一番望んでいることなのだ。

人生は不公平だ。

私の身に起こる不公平は、どうでもいい。

フアニートくんは踊り続けるべき人なのだ。

2018年12月7日 セビージャにて。

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