「ハモンは皿にのせるだけでよい」公演への道のり⑤

photoみなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

前々回からのブログの続き。おもしろすぎ!と大好評です。

公演1ヶ月前。ばたばたと、

①2月28日 セビージャからマドリッドまで深夜バス移動(電車のチケット売り切れてた・・・)

①3月1日 マドリッドの日本大使館まで行ってミゲルとモイのビザをもらい、そのまま電車でヘレスへ移動。

②3月2日 へレス・フェスティバル併行追加アクティビティー公演でミゲル、モイと共演。

③3月3日〜6日 へレス・フェスティバルにてエバ・ジェルバブエナのクラスを受講。→セビージャへ移動

⑤3月7日 セビージャでライブ。(日本での公演1ヶ月前!)

⑥3月10日 セビージャから日本へ。

という日々を過ごしていました。私も忙しかったけど、ミゲルやモイも忙しい。3人で会う時間が全然とれなかった。

「セビージャで合わせてきたんでしょ〜?」とよく聞かれましたが、実際3人で公演用に合わせたのは1回だけ。ヘレスで踊った後、そのままヘレスのスタジオで合わせをしました。2時間半くらいだったかな。公演で踊るシギリージャ、ソレア、アレグリアス、タンゴをざっと合わせて、録音して、はい終わり。本番前も、彼らが日本に着いてから合わせたのは本番前々日と前日の2日間のみ。劇場公演で、この合わせの少なさでいいのか・・・と思ったけど、よかった。本番素晴らしかったですからね!

いや、ちょっと待て。大変だったのはミゲルとモイが日本に来てからの1日目のリハーサル。公演2日前。(彼らの飛行機珍道中も大変だったらしいけど、それはすでにブログにしているので、そちらを読んでね。→http://www.layunko-flamenco.com/JA/2013/04/miguel-perez-y-moi-de-moron-ya-estan-en-japon/)午後から照明や音響さんスタッフがいらっしゃるということで、午前中に慌てて3人で合わせ。しかもそのリハーサルには、ミゲルのお友達でもあり踊り手さんの水村繁子さんが見学にいらっしゃることに。水村さんはどうしてもご都合がつかず公演にいらっしゃれないのでリハーサルを見学されたいとのこと。そして踊り手仲間で公演当日の着替えお手伝いをしてくれる太田マキさんも見学にいらっしゃいました。

・・・萩原、当日はかなり緊張していました。3人の合わせもまだ不十分だったこともあり、リハーサルはぼろぼろ。しかも全部通してみて、舞台監督さんの一言。「公演時間全体で50分です」

え〜!!!そんなはずない。これだけ踊って、ギターとカンテもあって50分ってことはない!

ところがあったのです。実は緊張しすぎて走り過ぎ。全部早くなってしまっていたのでした・・・。

リハーサル後ミゲルとモイと3人で反省会。二人は言っていました。「ジュンコだけじゃないよ。オレたちもすごく走った。今日のリハーサルはなんか変な雰囲気だったんだ。それに飲まれた。でも落ちついてやれば大丈夫。明日は大丈夫。」

そうか、彼らでもそういうことがあるんだ・・・。でも、本番だって緊張すれば走るかもよ、と私が言うとモイは言ったのです。

「衣装を着て舞台に立てばそればありえない。舞台は全然別だ。」

そうなのだ、この人達の本当の強さは本番で想像のつかない底力を出すことなのだ。大丈夫。私にはこの人達がついている。明日もう一度気分を改めて合わせよう。そうすれば絶対大丈夫。

ところが帰り際、ミゲルが突然とんでもないことを私に言ってきたのです。

「昨日、ホテルの人にパソコン壊されたんだ。」

えええええええ!!!!どういうこと????!!!!!

ミゲルの話よると、電源アダプターをホテルの人が無理に外そうとしてボキッと折れたらしく、その一部がパソコンに入ったままで、パソコンが使えなくなってしまったとのこと。

それにしてもそんな不注意な人間がホテルで働いてちゃんと勤まるのか?ミゲルは嘘をつくような人ではないし、本人は「いいよいいよ、古いパソコンだから壊れても仕方ないよ」なんて言ってるけど。よくない。古かろうがパソコンはパソコンだし、ホテルの人が壊したのなら責任とってもらわないと。

萩原、鼻息荒くすぐさまホテルに電話。支配人と話をし、説明を受けたがどうもキナ臭い。何かがある。ミゲルが外国人だから分からないと思ってごまかしているのかも。いろいろ問いつめたところ、やっと罪を認めた。ほれみろ。ミゲルは悪くない。結局次の日ミゲルのパソコンを壊した従業員が謝罪するとのことで、萩原 ホテルに向かう。

ホテルに着くと、支配人とその従業員が直立不動で「萩原様、大変申し訳ございませんでした!!!」と頭を下げてきた・・・

「いや、私に謝られても、本人のパソコンが壊れたままでは困るのですが。」と、萩原、顔色一つ変えずに言うと、奥のロビーにいたミゲルが、ジュンコ、ちょっとと呼ぶ。

ミゲルが言う。「壊したのはホテルの人なんだけど、もういいよ、ジュンコ。実は昨晩、モイとオレでパソコンを分解して直したんだ。もう直ったんだ。」

何?この二人。ただのギタリストと歌い手ではないというのは知っていたが、そんな技術まで持っていたのか?!

「本当に直ったの?」と聞くと「うん、俺たちで直した。だからもういいよ。しかも俺のパソコン古いから」。と言ってミゲルはその直したパソコンを取り出したのですが・・・・、萩原、目が点。

それはパソコンというより、どう見てもアルバムにしか見えませんでした。

こんな分厚いパソコンが世の中にあるということを、一体この世の誰が想像できるのでしょうか・・・

そのアルバム、いや、パソコンを目にした途端、「こりゃ壊れてもおかしくはないわ」と萩原妙に納得。直立不動でこちらの様子を伺っている支配人と従業員に私は何と言えばいいのだろう。。。そんな私を尻目にミゲルは「このパソコン、オジさん」(古い、ということを伝えたかったらしい。)と片言の日本語でホテルの人に話しかけ、微妙な雰囲気がさらに微妙に・・・。

「どうも自分達で直したみたいです。気にしないで、と本人が言っていますので、今回はそういうことで。どうもお騒がせしました」とお辞儀をし、そそくさとその場を去ろうとする私に、いつの間にかその場にいたモイが「ジュンコ、ちょっと」と奥に呼び、小声でいいました。

「ミゲルは『オレたち』が直した、って言っただろ。『オレたち』じゃなくて、直したのは『オレ』だ。パソコンを解体したのは『オレ』、壊れた部品を取り除いたのは『オレ』。ミゲルはパソコンを押さえていただけだ」

もう、頼むよ、この二人。私を振り回すのはやめてくれ。分かっているのか、本番が明日だということを・・・。

(続く)

写真:ぼろぼろのリハーサルの後にしては笑顔。スタジオにて。太田マキさん撮影。

マキさん、公演のお手伝いをして頂き本当にありがとうございました!!!

4月19日(金)博多のホテルにて。

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