Mar 14

みなさんこんにちは。

地震のことをスペイン時間の朝、クラスに着いた時に同じ日本人の受講生から知らされました。その瞬間、何も言わずにドアをバン、と閉め、外に飛び出していました。家族は・・・私の家族は・・・。こんな時に限って、充電していた携帯を宿泊先の友人宅に忘れてしまった・・・・。公衆電話はどこ?・・・見つかったけど、電話がつながらない。近くのネットカフェはまだ開いていない。宿泊先の友人宅までは歩いて40分。タクシーを拾おうにもタクシーはどこ?セビージャだったらすぐにタクシーがつかまえられるのに。走って走って・・・・やっと友人宅に着いて。置き忘れた携帯にセビージャの友達からのいくつもの留守電が。私の家族からの連絡はない。急いでパソコンを立ち上げ、妹に安否確認のメールを送る。テレビをつける。信じられない光景。しばらく呆然とテレビを見、セビージャの友達に電話をし、妹からの返信を待ち、もう一度両親に電話してみる。そんな私を、友人夫婦の子供、ゴンサロが見ている。いつもだったら私にちょっかいを出してくるけど、今日は何も言わない。無断で、彼が見ていたお気に入りのディズニーチャンネルから、ニュースに切り替えてしまった。でも何も言わない。2才の子供に地震は理解できないだろう。でも私がいつもの状態でないことは理解しているみたいだ。ゴンサロ、ごめんね。

クラスには1時間半遅刻した。先生のハビエル・ラトーレが心配して私の家族の安否を尋ねてくれた。でも連絡がとれていない。ラトーレはそうか、と言って私を抱きしめた後、「舞台は明日だから、集中して」と言った。そうだ、舞台は明日なのだ。私がいない間にブレリアの最後の部分の振付けがほとんど終わっていた。一生懸命遅れを取り戻そうとしても集中できない。何も頭に入ってこない。こんなのではだめだ、そう自分に言い聞かせているうちに、残りの1時間があっと言う間に経ってしまった。

クラスの後いつも何人かのお友達とご飯を食べていたが、その日はやめる。それぞれ家に帰る。その時、同じクラスの日本人受講生のご実家が倒壊してしまった、という話しを聞いてしまった・・・

本番当日。午前中のクラスは舞台上で行われた。クラス兼、通し稽古。前日振付けられたばかりのブレリアがぐちゃぐちゃだ。みんな「覚えられない」と焦っている。私はもっとだ。今まで大丈夫だった部分まであやふやになってきてしまった。集中しなくてはならない。そんな中、ギターがコンパスを外す。これまでの練習中から微妙にずれていたギター。今日はソレアの歌振りで完全に外す。3度も。舞台上で立ち尽くしてしまう私たち。「ちゃんと歌っているわよ!」歌い手が怒鳴る。「何やっているんだ!」ラトーレもまでも。「いい加減にして!こんなギターでどう踊ったらいいの?!」一人の受講生が私に訴える。その通りだ。でもみんなの前で「ギターがおかしい」なんて言えない。なぜ皆、気づかないのだろう・・・。そんな調子で自分も周りもおかしなまま、通し稽古は終わってしまった。本番まであと6時間。大丈夫なのだろうか・・・?

そしてその本番はあっという間に終わってしまった。ラトーレの弟子のスペイン人の踊り手3人とハビエルがそれぞれソロを踊った後が私たちの出番。暗転し幕が降りる。その間、自分の立ち位置につく。その時思った。私は踊る。間違えてもいい。転んでもいい。(超スピードの2回転があった)とにかく踊るのだ。日本にいる人達のことを想って。

舞台終了後、ラトーレが観客に挨拶する。「この1週間、合計たった15時間のクラスで学んだことを今日発表しました。皆よくがんばり、素晴らしい作品に仕上がったと思います。そして今回特にがんばったのは8人の日本人受講生。昨日のクラスは彼女達にとっては本当につらいものでした。クラス中、携帯で家族の安否を確認したり。そんなつらい中、よくがんばってくれました。」私は涙が出そうになった。そんな私の肩を隣にいたジョランダが抱きしめてくれる。彼女は昨年のラトーレのクラスにも参加しており、一緒にアレグリアスを踊った。楽屋でもフランス人のマリアが「日本に帰れない人、私の家に泊まって。」と私たちに声をかけてくれる。そしてラトーレ。厳しい状況の中でも群舞作品を仕上げなければならない。集中できない何人かの日本人に叱咤するのはつらかっただろう。

通し稽古が終わった後、実はラトーレは舞台上で観客に言ったことと同じ事を受講生全員にも言っていた。でもその時は8人の日本人受講生の名前を一人一人言ったのだ。「キョウコ、カナコ、サチコ、ノリコ、コトエ、フユカ、サトミ、ジュンコ」。私たち日本人だけではない。ラトーレは20数名いた受講生全員の名前を覚えていた。たった1週間のクラスなのに。もう会うことはないかもしれないのに。そんなところに、私はラトーレの人間性がにじみ出ているように思う。

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この1週間、私は自分の身体の小ささを気にしていた。大柄な欧米の受講生の中で、私は明らかに小さい。そして華奢だ。線が細い。彼らの中で私は埋もれている。そんな自分を鏡の中で発見する度に、落ち込み、それをまず精神的に乗り越えることに労力を要した。ラトーレの弟子のスペイン人達は身長が高く、手足が長い。そしてその恵まれた身体を存分に使うことに長けている。舞踊団に所属する人、独特の踊り方。舞台で大きく美しく見せることを第一目標として教育されている人達。それをもって、フラメンコとするか否かは別として、私が持っていないものを彼らは持っている。もちろん、彼らが持っていないものを私は持っている、と思う。でも重要なのは、どちらが優れているか、という問題ではなく、学ぶことだ。どうしたら私は大きくなるのか。身体のポジション、筋肉の使い方、動かし方、そういった技術的なものをラトーレの弟子達から学び取った。そう、そんなことは誰も教えてくれない。自分でつかまなくてはならないのだ。

でももっと重要なことは、その踊り手が内包するエネルギーだ。どんなにスタイルがよく、身体能力に長けていても、そのエネルギーがなければ、もしくは足りなければ、その踊りは観客の心には伝わらない。感心はしてもらえるかもしれないが、感動はない。そのエネルギーがほしい。そのエネルギーが自分の身体から押し出されなくてはならない。観客だけではない。そのエネルギーが日本にまで伝わってほしい。

私の家族は無事だった。東京に住んでいるお友達も、つくばの国際美学院の先生方も、仙台に住む踊り手の藤井かおるちゃんも。でも無事ならそれでいいのか、周りのスペイン人達がそれで安心するように。毎日一刻一刻とニュースを見て、胸が痛くなる。私の国で起こっていることなのだ。

私が踊る意味って、何なのだろう。私ができることは・・・。

2011年3月14日 帰って来た、セビージャにて。 (写真:アントニオ・ペレス)

Mar 9

2011.3.12 // 「タジェール・デ・ハビエル・ラトーレ」 -サラ・パウル ヘレス)19H 入場無料

Baile Cante Guitarra
  • ハビエル・ラトーレのクルシージョ生徒有志(萩原淳子、他)
  • メルセデス・コルテス
    • ジョルディ

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

ただ今私はヘレスにおります。セビージャに着いたのが3月2日。それから荷物をほどいて、個人レッスンでバタ・デ・コーラのカラコレスの振付けをし、そしてまた荷造りして3月5日にヘレス入りしました。そう、ただ今へレスでは毎年恒例のフラメンコ・フェスティバルが行われています。今年は午前中にハビエル・ラトーレのクラスを受け、夜は劇場公演という1週間の、本日3日目。

ヘレスに着いたら、結構日本人の姿を見かけました。いろいろな方から「ブログ読んでます」と声をかけられ・・・「ハビエル・ラトーレのクラス、ブログにして下さい。」とリクエストがあり。そう、すごいんです。ラトーレのクラス。昨年もこのフェスティバルでラトーレのクラスを受け感銘。今年もまた受講することにしました。

フェスティバルで行われるクラスは7日間、1日2時間半のクラスです。2時間半ぶっ続けのクラスというのもすごいけど、このラトーレのクラス、なんと、この7日間の最終日にこのクラスで学んだ振付けを舞台で発表してしまうのです。それもヘレス・フェスティバルの公式プログラムとして。クラスのレベルはプロフェッショナル。事前にビデオ審査もあります。(こんなことを書くと、ものすごいクラスのようですが、集まってくる受講生のレベルは結構ばらばらだったりします。だから、そんなにすごくないですよ〜)

今年の振付けはソレア。3日間でサリーダ(出だし)、歌振り、ファルセータ、エスコビージャ、ソレア・ポル・ブレリアのファルセータまで終わりました。でも振付けだけじゃないですよ。舞台で踊るわけですから、フォーメーションもどんどん決めて行きます。うわ〜、頭がパンパン。残りの振付けはソレア・ポル・ブレリアの歌振り、エスコビージャ、ブレリア。今日が水曜日でしょ、ということはあと4日後には舞台で踊っているのです。信じられない〜

受講生は全部で25名くらいかな?今年は日本人も多いです。全部で8人くらいかな?それにしてもすごいのはハビエル・ラトーレ。それだけの人数、そしてしかもばらばらなレベルの受講生達を群舞集団にまとめあげて行くわけですから。どう考えても無謀。でもそれをやってしまうラトーレ・マジック。そのマジックに去年やられてしまったのは私だけではありません。昨年も受講してた人達も姿もちらほら見えます。みんな顔を覚えていて、わ〜なつかし〜!

昨年は今年以上に受講生のレベルの差が激しかったように思けれど、みんなすごくまとまっていていい空気が流れていたのを覚えています。今年はどうなるのかな・・・みんなそこそこ上手に踊る人達が集まっているけど、3日間終わって、なんとなく空気が固い気がする。お互いをライバル視しているというか、自分が上手いと思い込んでいるというか・・・そういう雰囲気って群舞に悪影響を及ぼすんですよね。全部で25名くらいいるわけですから、常に全員が舞台の上に乗っているわけではありません。袖に引っ込んでいる人と舞台で踊る人。舞台の上でも前列の人後列の人。中心にいる人、端にいる人。それをラトーレが決めていきます。昨年は割と均等に全員舞台に乗っていたと思うけど、今年はちょっとばらつきがあるかも・・・。3日間終わってまだほとんど舞台に乗っていない人もいます。残りの4日間でもう少し舞台に乗せてもらえるのでしょうか・・・・その人達は・・・

でも残念なのは、舞台に乗せてもらえないからといって(今のところ)、群舞を放棄してしまっている人がいること。自分の踊りらしきものを隅で練習してたり、あきらかに不服そうな態度を見せたり。気持ちは分からないでもないけど、自分が踊れなくても学べることはいっぱいあるのに。私は逆に、今の所は舞台に乗せられている立場だけれど、もしそうでなかったとしても、自分の踊りの練習はしないよな・・・きっと。不服そうな態度もとらないと思うな・・・だって、それって先生に対しての敬意というものを欠いているのではないかな・・・

そして、踊るパートが多い私(今のところ)。しかもエスコビージャではど真ん中にされてしまいました。どうしよう・・・不器用な私。振りつけられたものをぱっとすぐにできないのです。特にエスコビージャ。足は動いても、ブラッソ(手や腕の動き)をつけると、おかちめんこになってしまう。足だけならできる。ブラッソだけでもオッケー。それなのに一緒に合わせるとどうして、おたんこなすになるのか?しかも4日後だよ〜舞台は〜。ブログ更新している暇があれば練習しろ、と自分でツッこんでしまうけど。

そう言えば昨日、去年一緒にクラスを受けていた人がこんな事を言っていました。

「群舞ってフルーツ・ポンチみたいだよね。一つ一つの果物が合わさって、おいしいポンチになる。どの果物が欠けてもだめ。出しゃばり過ぎてもだめ。でも一つ一つの果物にそれぞれの良さがある。ハビエルはポンチを作るのが上手なんだよね。」

そうか〜!なるほど〜!本当にそうだよね。「フルーツ・ポンチ」という例えは思いつかなかったけど、そうだ、去年私が学んだことはそれだったんだ。だから今年もまたこのクラスを受講することにしたんだ。自分の踊りもちゃんと練習するけど、最終的にはおいしいポンチができればいいんだ。そうか〜、大切なことを忘れていた〜。思い出させてくれてありがとう。

がんばるぞ。学べることは全部学んで、できることは全部やって。あと4日間で私は変わるぞ。

ではまた後日、ご報告します!

2011年3月9日 ヘレス、お友達夫婦の家にて。

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