みなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。
毎日毎日あっと言う間に一日が終わってしまいます。「第12回少人数制クルシージョ」(東京、8/18まで)も絶好調。教えるのは本当に楽しいです。教えるという行為自体が楽しいし、それによってあっ!と生徒さんが変わってゆくのを見るのも楽しい。自分が好きなことを教えて、それも好きで仕事になっているのだから、私は恵まれているのだと思います。みなさんありがとう。
さて、ご連絡が遅くなりましたが、4月「ハモンは皿にのせるだけでよい」公演(川崎市アートセンターアルテリオ小劇場にて)と、6月14日「第33回フアン・タレガ・フラメンコフェスティバル」(スペイン、ドス・エルマーナス)の踊りの動画をYouTube に一挙アップしています。前者はシギリージャ、アレグリアス・コン・マントン(ノーカット)、ソレア・コン・バタ・デ・コーラ、タンゴ(ノーカット)。後者はソレア・コン・バタ・デ・コーラです。全て、こちらのHP「ビデオ」にてまとめてアップしてありますので、どうぞご覧下さいませ。
→http://www.layunko-flamenco.com/JA/videos/
それと、こちらもご連絡が遅くなりましたが、2013年7号の雑誌「パセオフラメンコ」に上記 “ハモン公演” に関する公演忘備録がパセオ編集長小山雄二氏、井口由美子氏により執筆されています。
熟成するアルテ (井口由美子氏執筆)
じんわりとステージのあの温もりが甦ってくる。不思議なことにそれは日を重ねるごとに胸の奥に沁み込んで重みを増して来る。この味わい深いタイトルから想像する通りの、いやそれ以上の幸福感が舞台を満たしていた。萩原淳子さん自身の地道なフラメンコの歩みを、ハモン・セラーノ、スペインの山あいで熟成させて作られるというこの土地ならではの野性味ある生ハムの味わいに重ねたところに、彼女のユーモアある人柄を感じる。ロンダのコンクール優勝者である実力派バイラオーラ、萩原さんのフラメンコを始めて観たのは、昨年4月の高円寺エスペランサのライブだった。ロンダの荒涼とした光景を思い起こさせる普遍的怒りが、肚の底から湧き上がって来るような力強いソレアは今も忘れられない。その半年後、初めてのソロリサイタルでは、その怒りを寛容の優しさに浄化させた豊かな境地を見せてくれた。そして今回、そのような道程を経て来た彼女の正統派フラメンコの生命力はより輝きを増していた。その深みある踊りで共演者たちとの呼吸をひとつにして親密なアイレを創り上げていた。一年の間に行われた3回のライブにおける変容、これこそが熟成というものなのだと感じた。彼女はバイレという言語を、苦難を乗り越えながら徐々に自分のものにして来た。そんな努力で掴んで来たものだからこそ、その澱みのない意思の疎通は彼らとの壁を取り除き、誤解を解き、暖かなものを生む。ああこの自立共存の関係性こそがまさにフラメンコであり、人間同士のつながりの理想郷なのかも知れない。在スペイン10年という萩原さんの経験の重みをずしりと感じながらそんなことを考えた。
子育て中の主婦である平凡な自分が愛好家としてどのようにアートと関わって行けるだろうかということを模索している。それは焦りにもなる。出来ないこと、遅れをとっていること、解っていないことがどれほどあるかということばかりに気が取られてしまう。けれどこの「ハモンは皿にのせるだけでよい」という飾らないテーマに基づいた舞台に、暮らしもアートなのだ、ということに気付かされた。日々真剣に生きることでアートの素晴らしさを感じ取り、また逆にそんなアートに触れた感動を支えとしてそれを日常に活かし、明るく生きる姿勢に変えていく。そんな接し方をしていきたいと思う。
ミゲル・ペレス氏のギターはいぶし銀のような重みのある音色。あえて鋭い輝きを避け、鈍色の質感で奏でる高濃度のフラメンコが肌から伝わって来る。モイ・デ・モロン氏の朗々としたカンテ。フラメンコの伝統の深さを伝えながらも血の通った温かみが胸を打つ。彼らの音楽にはドラマティックな熱さの中にも上質な大人の余裕が漂う。そして、いつのときも誠心誠意でフラメンコに向き合う萩原さんの姿に、人生に逞しく対峙していく彼女の姿勢が重なる。信頼で結ばれた彼らの三位一体の舞台には、素朴だけれど極上のもてなしをするような快いアイレがあった。その記憶はこれからも心の中で熟成していくに違いない。
美味しいハモン (小山雄二氏執筆)
四十年前近くにバイラオーラ佐藤祐子がスペインから持ち帰ったプーロ(純粋)フラメンコの原石。永い歳月、たくさんの優れた踊り手たちの切磋琢磨を経ていま、バイラオーラ萩原淳子はその研磨にひと段落を与えたように思える。彼女が2010年スペインのロンダ市主催フラメンココンクールに外国人として初優勝した快挙はそうした成果のひとつだった。昨年10月、新宿エルフラにおける萩原淳子・日本初ソロ公演『魚の選び方を知った時』の恐るべき純度のプーロなステージを2012年マイベスト公演(5月号掲載)に選んだ理由もそこにある。
必要なものはすべて好ましい按配で揃っている。一方、必要でないものはすべて排除されている。エンタテイメント性さえ削ぎ落とされるから、一般的にはハードルの高い世界かもしれない。ただし真摯に生きる人々を「おや、これは?」と立ち止まらせる強烈な引力を持っている。そういう雑味のない純粋な瞬間の精緻な積み重ねが、ともすれば現代人が忘れがちなシンプルにして深く大きな感動を爽やかに運んでくる。誰の真似でもない誰にも真似できない萩原淳子の百パーセント等身大の端正にして薫り高き踊りは、いわゆるプーロフラメンコの上質な典型というべきものだろう。
そして今回、新百合ケ丘で開催された第二回公演タイトルは『ハモンは皿にのせるだけでよい』。いかにも萩原らしいユーモアのネーミングであり、プログラムには詩のような一文が添えられていた。
「ハモンは皿にのせるだけでよい 花もソースも飾りもいらない
ハモンは皿にのせるだけでよい でもそれが本物でなければ
切り方を知らねば
そして大切なことは それを誰かと共有すること
フラメンコもきっと同じ」
美味しい本物のハモンの味を知る人は皆そのように思う。本物のフラメンコの味を知るフラメンコ通も皆そのように思う。萩原淳子は本物のそれをさり気なく切り分け、その美味しさを舞台や観客席の仲間たちと共有する。
ちなみに7月号の表紙は今井翼くん。セビージャでお忍びで個人レッスンを受けているという噂を耳にしたのは数年前だったかな?どうもジャニーズの有名な男の子らしいという情報しか私にはありませんが、その今井翼くんが今月号の表紙になっています。ちなみに4ページ、師のマヌエル・ベタンソスと今井くん(馴れ馴れしいか???)の間でギターを弾いているのは、あれーミゲル・ペレスですよ。みなさん見て下さいね。そして来月号から今井くんとゲストの対談連載が始まるそう。そんなこんなでパセオの売り上げも急上昇とか。
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上記の公演忘備録は67〜69ページに掲載されています。是非お読み下さいませ♪
2013年7月11日 そういえば、今日、「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」に出演していた生田智子さんもフラメンコ始めたって言っていましたよ。