Feb 24

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

もうすぐ2月が終わりますね。今月はいつもより忙しかったです。

  • 10:00〜12:00 トロンボのクラス(コンパス)受講
  • 12:30〜13:30 アリシア・マルケスの(バタとマントンのカーニャ)受講
  • 15:30〜17:00 クリスティーナ・ヘレン財団フラメンコ芸術学校のカンテクラスで踊る
  • 19:00〜 教授活動か自主練習。*レッスンの合間はセビージャ中を自転車で走り回り、土日も個人レッスンが入ったり、買い出し、家の掃除とてんてこまいでした。しかし充実した1ヶ月だったなと思います。トロンボのレッスンはいつも通り勉強になるし、アリシアにマントンの振付を習ったことで自分の踊りの幅が広がりました。同じマントンでも先生によって教えることが全然違います。誰が正しくて誰が間違っているという問題ではなく、全部勉強してしまえばよいのです。*

    そして今月始めた、「クリスティーナ・ヘレン財団フラメンコ芸術学校」(以下、“フンダシオン” 。スペイン語で“財団”の意味。HPはこちら→www.flamencoheeren.com)のカンテ(歌)コースの踊り伴奏クラスで踊る 。これは今月のヒット。フンダシオンで教えているギタリストから「カンテの生徒が踊り伴奏を学ぶクラスに踊りに来てほしい」と言われ、お邪魔するようになりました。カンテを習っている生徒さん達の中には、自分一人では上手に歌えてもコンパスにのせて歌えない人、パルマがたたけない人、踊りに合わせて歌うことができない人など、いろいろな人がいます。(難しいですよね)私がお邪魔したのは中級クラスと上級クラスで、中級では主に最初にパルマのたたき方、パルマをたたきながら歌うなどを皆で学んだ後、その日のテーマのカンテを踊り手に踊ってもらい、踊りと合わせる時にはどのように歌うのかというのを学びます。上級クラスではパルマがたたけることが前提になっているのか、すぐに踊り伴奏を始めていました。

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    それらのクラスで踊るのが私の仕事ですが、中級クラスではカンテの生徒さんに混じってパルマのたたき方も一緒に学ばせて頂きました。午前中にトロンボにもパルマを習っていますが・・・・その差が興味深い。トロンボがすごく強調するところをフンダシオンではほとんど注意しなかったり。そして同じことを説明しているのですが、説明の仕方があまりにも違うので、なるほど!そういう捉え方をするのか!と勉強になります。一つのことを多角的に見て説明できるようになれば、自分のためだけなく教授活動の時必ず役に立つはず。

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    そして肝心の踊り・・・これが意外と難しい。その日何を踊るのかはその日の先生や生徒さんの希望で決められるので、ある日はソレア・ポル・ブレリア、ブレリア、次の日はシギリージャ、ティエント、タンゴ、その次の日はタラントとアレグリアス・・・etcなどなど。つまり大体どれも踊れるようにしておかなくてはなりません。レトラもいろいろ、伸ばし方もいろいろ。同じ曲種でもたくさんのカンテを聴いていないと即興で対応できません。生徒さん達のパルマの勉強のためにエスコビージャも必要になりますが、長々やり過ぎても 仕方ないので短めにしたり。短くするのもただ切ればよいのではなく、音の流れや構成も考えながら即興で組み立てていくので結構難しい。そして緊張もします。自分がちゃんと踊れないと生徒さんの勉強にならないから。しかも小さいスタジオの中で15人くらいの生徒さん達にぐるっと囲まれてその中で踊るのです。多くの人が自分が歌わなくても録音していたり、録画している人までいます。みんなすごい真剣なのです。(学んでいるから当たり前か・・・)

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    即興が上手くいかなくて踊りが撃沈してしまって本当に申し訳ない時もあるし、先生も含めてみんな乗っけてしまう程いい踊りができてしまった時もあるし、いろいろ。自分の踊りに対して先生がその意味を生徒さん達に説明してくれることも多々あり、それも勉強になります。(だからテキトーな踊りはできない)その意図をきちんと分かって踊るのとただ振付だけを踊るのでは全然違うし、そのためには踊り手側の視点だけでなく、歌い手やギタリストからの視点も必要になるのです。いやはや。これまた自分のためにもなり、さらには教授活動にも役に立つこと間違いなし!

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    自分の公演の準備などもあり全日は参加できませんでしたが、本当に勉強になりました。今週末から1週間へレス・フェスティバルに行き、その後3/5〜4/11までは日本に一時帰国するのでしばらくお休みすることになりますが、セビージャに戻ってきたらまたお邪魔したい!

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    ちなみにヘレス・フェスティバルの様子もブログアップしたいのですが、滞在するピソにはインターネットがないようです・・・町中でもどれくらい使えるかがよく分からないので(セビージャのネット事情はあまりよくないです。ヘレスはどうかな?)次回、またアップできる時までということで宜しくお願い致します!

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    2011年2月24日 セビージャにて。

Feb 20

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

木曜の「テ・デ・トゥリアーナ」ライブはお陰様で無事終了致しました。(ギター:フィティ、カンテ:エル・トゥリニ、踊り:アルヒロ、萩原淳子)前回のブログで、もう一人の踊り手を“男性舞踊手”とアップしましたが、女性でした・・・「テ・デ・トゥリアーナ」のライブでは男性舞踊手、女性舞踊手が一人ずつ出演すると聞いていたので、私が女ならもう一人は男と、勝手に思っていたのでした・・・しかしなんとアルヒロも同じ事を思っていたらしく、顔を合わせて「あれ〜女だ〜」とお互いにびっくりし、ゲラゲラ笑ったのでした・・・

当日はアルヒロがアレグリアスを踊りたいと言ったので、それじゃあ私はソレアかな。ということでソレアを踊りました。久しぶりのソレアで、やっぱり私の踊りはソレアなんだなと実感した次第です。ギタリストのフィティとは初共演でしたが、本当にいい瞬間がたくさんありました。こんなに踊りやすいギターってないんじゃないの、というくらいぴったり呼吸の合うギターでした。 トゥリニのソレアも重厚で、多分三者がそれぞれ光っていたのではないかな。ブレリアに入ってからは、それぞれの即興の掛け合いがあい、とても楽しかった。

ライブの次の日、観に来てくれた友達にこんなことを言われました。

「あんなにうるさい場所だったのに、よくあんなにすごいソレアを踊れたね。しかも、ジュンコが舞台に向かって歩いている時に男がジュンコの目の前を横切ったんだよ!信じられない!ひどい!」

・・・はあ?という顔をしてしまいました。 確かに最初はうるさかった。バル「テ・デ・トゥリアーナ」はグアダルキビル川沿いのベティス通りにあります。トゥリアーナ橋やヒラルダの塔を眺められるその通りは観光のメッカ。フラメンコはバルの奥の方で行われますが、入り口はライブ中も開放しているので通りにいる一般の通行人の騒ぎ声が筒抜けになります。私のソレアが始まった時、フィティのギターが始まった時、その騒ぎ声でギターが聞こえにくかった。そしてライブのお客さんが「シーシー」と静かにさせようとしている声も聞こえて来ました。そこまで。そこまでは確かに、私もうるさいなと思ったけど、それからはギターとカンテしか聞こえなくなったので、静かになったと思っていたのでした。でも実際は通りの騒ぎ声はずっと続いていたそうです。そして、私がお客さんの間を縫ってソレアを聞きながら舞台に歩いて行った時、ある男が私の目の前を横切った・・・・らいしのですが???全然知りませんでした。

自分が踊る時、ギターやカンテを聞き始めると、おそらく私の中で何かが起こります。その時の独特な感覚がある時は、あとは自分の身体から流れ出るものに素直に従えば、その時の踊りはきっとフラメンコなのだと思います。そしてそういう時の自分には恐らく余計なものは入ってこない。周りの騒ぎ声も私の踊りを阻むものも。

10年以上前にやはりソレアを踊った直後にお客さんから「大丈夫でしたか?痛くなかったですか?」と聞かれたことがあります。「何が?」と聞いたら「え、腕から血が流れていますよ」と言われたのです。え?!と思って自分の腕を見たら本当に血がたらたら。どうも踊っている最中にシージョ留めの針が外れ、それが腕に刺さりそのまま腕を動かしていたので針で腕をザザザと切っていたそうなのです。・・・ひえ〜と貧血を起こしそうになってしまいました・・・もちろんその時も全然痛みなんて感じなかった。(今ではもう、うっすらとしかその跡は残っていませんが、しばらくの間は跡が残っていたので本当は痛かったんじゃないかなと思います・・・。)

もちろんそれがいいか悪いかは分かりません。踊り終わった後に気付いたら歩けなくなっていて、その後1ヶ月半びっこを引いていた経験もあるから・・・。でもあの独特の感覚なない時は、確かに技術的には上手に踊れるかもしれないけど、ただソツなく無難に踊った、という結果になる場合が多い。なんなのだろう。ラジオのチューニングをするように、ギターとカンテに自分をチューニングさせる感覚。自分を集中させようと思って集中するのではなく、また何かを思い出したりストーリーを作って感情移入させるのでもない。ただギターとカンテを聴く。だからこそカンテとギターがいいものでないと。でもただよく弾けてよく歌えればよいという訳ではありません。なぜなら私達はそれぞれ人間だから。それぞれの、その人間としての何かがフラメンコを通してカチっと合った時、初めて私達はフラメンコの扉を開くことができるのではないかな。そしてその開かれた扉にすっと素直に入れる人が、同じフラメンコを共有できるのではないかな。

別の人がライブの終わった後に私にこう言いました。

「あなたのパソ、盗んじゃった♪」

「お好きなように。」私は答えました。そう、盗みたければ盗めばよいのだ。でもあなたは、何もフラメンコを学べない。フラメンコを感じられない。たとえパソを盗めても、その時は得したようでも、一番大切な瞬間を共有できなかったのだ。それはもう二度と現れない。それを自ら放棄したのだ。そして、あなたが盗んだそのパソは私のものと同じかもしれない。でも決して同じではない。なぜなら私のパソには私の歴史がある。これまでに私は何度もソレアを踊った。私の人生の中で何度も。その中で繰り返し繰り返し何度も涙を流し、そうして学びとったパソなのだ。

でも思い出さなくてはいけないことは、“私の”パソ、なんて本当はないのだ。フラメンコの長い長い歴史の中でそのパソは作られたのだ。誰のものでもない。本当は。でもその長い歴史に敬意を払い、自分の人生をかけて自分の命を吹き込めは、そのパソは自分に答えてくれる。いつも自分と一緒にいてくれる。そしてその命は誰かの心に伝わるはずだ。

フラメンコは電子レンジではない。長い長い時間をかけてやっとできるものだ。長い長い時間をかけてもできないかもしれない・・・自分の一生をかけても。でも続けていく。そのフラメンコに出会えたことだけで、私がこの世に生まれてきた意味があると思うから。

2011年2月19日 セビージャにて。

Feb 16

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?

今晩、セビージャの「テ・デ・トゥリーアナ」のライブに出演します。そこにいつも出演しているギタリストのフィティから声をかけて頂きました。カンテは過日のペーニャ・ピエス・プロモ公演で共演したエル・トゥリニ。なんと豪華な共演陣!踊りはアルヒロという男性舞踊手と私の二人。一人一曲ずつ踊るとのことですが、何を踊るのかはまだ分かりません。事前の合わせもないみたいです。さてどうなるのでしょう。楽しみです。

2012.2.16 // テ・デ・トゥリアーナ – セビージャ. 22:30H. 入場無料.

Baile Cante Guitarra
  • アルヒロ
  • 萩原淳子
  • エル・トゥリニ
  • エル・フィティ

ではまたお会いしましょう!

2012年2月16日 セビージャにて。

Feb 12

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

2/3(金)のペーニャ・ピエス・プロモ公演はお陰様で無事終了致しました。その前のペーニャ公演に引き続き、今回もたくさんのお客様にお越し頂き感謝しております。外国人フラメンコ留学生、日本人の留学生のみなさん、地元のフラメンコ愛好家、プロの歌い手達の姿も客席に見られました。誠にありがとうございました。

やはり緊張もしていましたが、前回のペーニャ公演よりもよかったと思います。床が結構すべったのと、歌い手のトゥリニのパルマが走りがちで、ちょっと危ない面もありましたが・・・。

共演ギタリストのミゲル・ペレスの言葉が印象に残っています。(一番嬉しかった言葉は自分の心の中にしまっておくことにして)ミゲルの言葉。

「カンテとギターを聴いて踊るということは、相手へ敬意を払うことだ」

何度も何度もこのブログでも書いていますが、ミゲル・ペレスというギタリストは本当に本当に素晴らしい人間性を持っていると思います。いつも舞台の上では私に寄り添ってくれて、舞台の外では大切な言葉を残してくれる。ミゲルと出会えたことに感謝しているし、彼が私と共演してくれることにも感謝しています。

そしていろいろな出会いもありました。ミゲルと一緒によく仕事をしている、ある歌い手がこの日観に来てくれていました。その歌い手とは私は共演したことがないのですが、彼は私の踊りがとても好きだそうで、彼が所属するあるカンパニーの踊り手に私を推薦してくれたそうです。そのカンパニーの練習には4月から参加することになりました。もしかしたらその話しは流れてしまうかもしれないけど(残念ながらよくあることです・・・)それでもなんだか嬉しいです。

次回出演するライブも、ギタリストのフィティから声をかけられました。マリア・パヘス舞踊団で活躍するフィティ。彼のギターには香りがあります。彼のギターを聴いていると自然と踊りたくなってしまう。そんなフィティと共演できるのはとても嬉しい!

2012.2.16 // テ・デ・トゥリアーナ – セビージャ. 22:30H. 入場無料.

Baile Cante Guitarra
  • アルヒロ
  • 萩原淳子
  • エル・トゥリニ
  • エル・フィティ

いろいろなことがあって、世の中にはいろいろな人がいて、悲しい思いをすることも多い。でもそんな中でも私の踊りを感じ取ってくれている人達がいるのだ、とひっそりと、でもしっかりと確認することができてよかった。。。

実はもう一つの出会いもあり、先週から始めた興味深いこともあります。それはまた次回ブログにて。お楽しみに!

2011年2月12日 セビージャにて。

Feb 3

2012.2.3 //  ペーニャ・ピエス・プロモ – セビージャ.  22:00H. 入場料5ユーロ.

Baile Cante Guitarra
  • 萩原淳子
  • エル・トゥリニ
  • ミゲル・ペレス

みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

今晩とうとうピエス・プロモでのペーニャ公演です。昨日、共演ギタリストのミゲル・ペレスと歌い手のトゥリニと合わせをしました。何度も共演しているミゲルと、今回初共演のトゥリニ。実はトゥリニには何度か共演しようとこれまでに試みたのですがスケジュールが合わず、今回やっと初共演となりました。いつも舞台の上にいたトゥリニ。昨日初めて近くで見たら何か似ている・・・鳥???「トゥリニ」じゃなくて「鳥似」???

・・・不謹慎にもくだらない事を考えながら合わせが始まりました。しゃべり出したトゥリニ。「ケ・・・ケケケケ?(ななななななな何?)」「コココココココ・・・コモ?(ななななななな何だって?)」やっぱりこの人は鳥なんじゃないかと思ってしまいましたよ。ま、そんなわけはないのですが、それよりトゥリニにはどもる癖があるのです。歌い手なのに?びっくり。歌い手なのにどもるの???

ところが。歌い出したらすごい。感動しながらタラントを聴きました。そしてアレグリアス。トゥリニはカディス出身の歌い手。あ〜この歌を聴いて踊れるのか。そしていつも素晴らしいミゲルのギターと。あとはどうでもよくなってきました。今まで自分をコチコチにしていたものが全部す〜っと溶けていくような感じがしました。

フラメンコってそういうものなのではないかな。少なくとも私の踊りは。誰がなんと言おうと。

そして今晩踊ります。

2011年2月3日 セビージャのとあるバルにて。