Oct 21

みなさんこんにちは!いかがお過ごしでしょうか?

18日(月)に行われたセビージャ「LA CAJA NEGRA」でのライブは無事終了致しました。ありがとうございました。

↓ 写真:アントニオ・ペレス

普段はロック系のコンサートを行うバルらしく、ライムンド・アマドールも出演したことがあるそう。10月から毎週月曜フラメンコが始まるということで、今週は帰国前ぎりぎりで私が出演しました。ギターはウーリッヒ・ゴットワード“エル・リソス”、カンテはフランシスコ・チャベス“プラテアーオ”。気心の合った私たち3人のライブで、とても楽しみました。月曜ということでお客さんはそれ程多くはなかったのですが、フラメンコ好きが集まる濃い空間となりました。

初めて踊ったティエント。床がつるつる滑ったこともあり緊張しましたが、後半のタンゴ部分、個人的にはとても楽しんでしまいました。これが私のタンゴなのよ~!と実感しながら踊れて、すごくいい瞬間もあった・・・・記憶もあります。

2曲目はアレグリアス。合わせとは全然違う歌とギターが飛び出してきて、最高。これまた楽しんでしまいました。振付とは全然違う動きがどんどん出てきて、それをあれれれ~?と思う自分と、え~い、そのまま踊ってしまえ~と思う自分と。そういう時に客観的に自分の踊りを見ることはできないのですが、でもすごく自由を感じて幸せなのです。

ギターのリソもカンテのパコ(フランシスコの愛称)も大満足。また3人で共演できるといいな。

観に来て下さった方、応援して下さった方、みなさまどうもありがとうございました!

そして次の日にはセビージャを発ち、ローマに一泊、今朝成田に着きました。明日からは東京・中野での「第5回少人数制クルシージョ」の始まりです!まだ空いているクラスもあります。追加日時もありますので、ご興味のある方はこのHP「クルシージョ」でご確認ください。

ではお会いできることを楽しみにしております!みなさまもお元気でお過ごし下さいね。

2010年10月21日 ビックカメラに行ったら、あまりの商品の多さにめまいがしました・・・・藤沢にて。

Oct 17

2010.10.18 // カハ・ネグラ -(セビージャ)開演22時、入場料5ユーロ

Baile Cante Guitarra
  • 萩原淳子
  • フランシスコ・チャベス エル・プラテアオ
  • ウーリッヒ・ゴッドワード エル・リソス

みなさんこんにちは!いかがお過ごしでしょうか。

私はしばらく風邪で寝込んでいましたが、やっと元気になりました。明日セビージャライブの本番なのでなんとか治ってよかった・・・そして明後日は日本へ!なんだかいつも目まぐるしい毎日を送っているような気がします・・・

明日のライブではティエントとアレグリアスを踊ります。ティエントは生まれて初めて人前で踊るのです・・・・なんと、ソロでも群舞でも踊った事がなかったという・・・・よく驚かれますが。

新しい曲というのは緊張しますが、新しい自分を発見できるいい機会でもあります。カンテを聴いていると、そのカンテごとに人生があり、そのレトラ(歌詞)ごとにもまた人生があり、その言葉一つをとってもまたまた人生があり。それぞれに反応する自分の人生もあり、自分の内面がどんどん豊かに深くなっていく気がします。上手に踊れるか、踊れないかというのは別問題として、そうやって自分が深化(もしくは「真」化)できるのはカンテのお陰なんだなと思います。フラメンコバンザイ!!!

今回のギタリストは先月のセビージャライブで共演したウーリッヒ。ドイツ人で素晴らしいギターを弾く人です。そしてカンテはエル・プラテアオ。なんだか私たちはいい周波数を持っている気がします。いいライブになりますように。

そしてその次の日は飛行機に乗らなければ。どうか・・・寝過ごしませんように。

ではまたお会いしましょう。

2010年10月17日 あ〜やることがいっぱい・・・・セビージャにて。

Oct 14

みなさんこんにちは!いかがお過ごしでしょうか?

約1ヶ月に及ぶ世界的なフラメンコの祭典「ビエナル・デ・アルテ・フラメンコ・セビージャ2010」は10/9を最後に終了しました。今回のビエナルでは観に行きたかったけど行けなかった公演もたくさんあり・・・今日は最後のビエナル鑑賞記。私が観た残り2公演のブログになります。

このビエナルシリーズのブログは結構書くのが大変だったのですが・・・(これが本業じゃないので)でもたくさんの方から「ビエナルブログ、興味深いです」「楽しみにしています」とメールを頂き、じゃ、もう少しがんばってみるかということで、結局自分が観た公演は全部ブログにしています。これまで読んで下さった方、メッセージを下さった方、どうもありがとうございました!

ではではビエナル・ブログの開始です〜。

【ビエナル・デ・アルテ・フラメンコ・セビージャ2010公式HP】www.bienal-flamenco.org

と、そこにアップされている写真を撮っていらっしゃる

【ルイス・カスティージャさんのHP】www.luiscastilla.com

(以下、ビエナル公演の写真:ルイス・カスティージャ)

 

 

 

 

 

 

  • 10月6日(水)「CUANDO YO ERA・・・」マエストランサ劇場、エバ・ジェルバブエナフラメンコ舞踊団



エバ
・ジェルバブエナ。現代フラメンコ舞踊界の最高峰に位置する踊り手といっても過言ではないだろう。そのエバが率いる舞踊団の新作。前回の「Lluvia」での、彼女が最後に踊ったソレアが記憶に新しい。今回の公演でのエバの踊りで私の心に強く伝わったのは、マラゲーニャ。ペペ・デ・プーラがマラゲーニャを歌いながらゆっくり「ろくろ」をまわす。泥土の中で踊るエバ。(文章にすると変ですね・・・)

映像はこちら→803-eva-yerbabuena-se-mete-en-el-barro.html

エバのインタビューはこちら→800-eva-yerbabuena.html

今回の作品の中で「ろくろ」と泥土を使ったことに関して彼女はインタビューでこう答えている。

「人生において時間、不在、個人的経験というのは人を変えていく。それは陶芸家が土をこねて変えていくのに似ている。だからその土そのものを舞台のある場面で使うのが一番だと思った。うまく説明できないけれど、ものすごい強烈な感覚。最初に泥土を自分の身体に感じる。そしてその泥土が乾いていく。ある瞬間自分自身以上になることがある。異なる動き方、異なる感じ方を呼び起こす。すばらしい経験だった。自身から何かが引き出されることになる。そこにそれがあることすら自分では知らないのにね。」

あの時私が感じたものは、エバ自身すら知らなかった、エバの中から引き出されたものだったのかもしれない。自分が持っているものを、自分自身を自分が全て知っているとは限らない。むしろ知らないものの方に真実が隠されていたりする。でもその真実に近づける人は少ない。そしてその真実を引き出せる人も。ましてや舞台の上でそれができる人は・・・もっと少ない。エバ・ジェルバブエナという人はそれができる数少ない踊り手のうちの一人なのだろう。

そして舞踊団員のフェルナンド・ヒメネス。彼がピカ一だった。(ちなみに写真の男性舞踊家はもう一人のエドゥワルド・ゲレーロの方です。)フェルナンド君はスタイル抜群のエドゥワルドに比べると身長も低く、手足も長くない。ぱっと見た目感じでは確かにエドゥワルドの方がかっこいいのだけれど、私はフェルナンド君にOLE!を言いたい。彼が踊ったブレリア。チャップリン風の衣装をまとい、ピエロ役の彼は好きになった女の子に踊りで求愛する。でもピエロで あるがために彼女は見向きもしない・・・。そんな設定のブレリア。ピエロ役だから振付もコミカルだ。ちなみにコミカルな動きをコミカルに踊りこなすのは相当難しいはずだが、フェルナンド君はうまい。その舞踊技術レベルの高さにも驚くが、それ以上に、彼がどんなに彼女のことを好きで、それを伝えたくて踊っているか、それが痛い程伝わってくる。ヘロモ・セグーラが歌う「僕は悲しいピエロ。みんなは僕のことを笑うけど、僕は心の中で苦しんでいる。」という歌詞と相まって、私は本当に泣いてしまった。(今も思い出して涙を流す私。)

あのブレリアをフラメンコか、コンテポラリー・ダンスかという議題にかけるのはちゃんちゃらおかしい。そんなことはどうでもいい。重要なことはフェルナンド君は素晴らしい踊りをして、彼から発せられたものは私の心を貫いたということである。

そしてパコ・ハラーナの音楽。ギター。この公演の音楽をサウンド・トラック盤CDにできるんじゃないかな。・・・なんて変な提案だけど。素晴らしい音楽性。歌い手達も素晴らしかった。ペペ・デ・プーラ、ヘロモ・セグーラ、モイ・デ・モロン。

ただ個人的には、「モイの歌うソレアで踊るエバ」という最高の組み合わせ(私個人の好みですが)を期待していたので、それがかなわずがっかり。モイはこの公演の中であまり歌わなかったし、歌ったブレリアはすごくよかったのだけど、エバの踊るブレリアがあまりにも作り込み過ぎているような気がして、モイを十分に活かしていなかったような・・・。う〜ん、もったいないなと思ってしまった。

エバが最後に踊ったのはセラーナだった。それについて彼女はインタビューの最後でこう答えている。

「舞台のシーンを見て行った時に、セラーナが必要だと思った。セラーナの持つ特徴、ドラマティックさ。それは作品を作りながら決めた。そしていつも同じ曲種を踊らないように。繰り返さないように。自分がこれを伝えると決めて作っている。(今回)私はソレアを踊らない。ソレアを踊る事を決めた上で、作品が失敗に終わっても、ーそういうことだってあるでしょー、最後に私がソレアを踊れば観客はみんな満足、という風にはしない。私はそうではないから。そうはしないわよ。」

よく分かる。理にかなっている。舞台作品を創造するというのはそういうことだと思う。

・・・でもやっぱりエバのソレアを観たかった。虎屋といえば羊羹、エバといえばソレアだよ・・・・。

  • 10月8日(金)「BAILAR VIVIR」ロペ・デ・ベガ劇場、出演:ラ・モネタと舞踊団

    いいこと
    から書くか、悪いことから書くか・・・・。後味をよくするために悪い事から書くかな。悪い事・・・というより私の目で見て許せなかったことは、今回の公演に出演した3人の男性舞踊家。この3人ともブーブーブー。まず幕が開いて、この3人が舞台を縦横無尽に歩き回る。もうその時点であちゃ〜。なぜなら舞台で3歩も歩けば大体その踊り手の実力が分かるから。その後彼らがようやく止まってくれたのでよく見てみる。一人はなんだか子泣きじじいを縦長にした感じ。もう一人はお人好しの中村獅童。残る一人はまあまあカッコいい。長谷川初範似。ちょっと踊り始めたのでよく観察してみる。子泣きじじいはこりゃ、ひどい。こっちが泣きたいよ。この人の踊りは基礎がないまま、最近流行りの現代的な振付けの形だけ勉強してきた人特有の踊り。クルシージョの生徒さん達に是非見せたかった。「基礎をちゃんと勉強しないとこんなになっちゃいますよ」って。百聞は一見にしかず。この手の踊り手は、セビージャの舞踊学校の上級クラスに結構いる。ぱっと見た目上手に踊るしパソをとるのも早いので、たいてい1列目を陣取っている人達である。獅童の踊りは記憶にない。獅童なら獅童で凄みが出ると思うんだけど、「お人好しの中村獅童」だからインパクトに欠ける・・・。子泣きじじいよりはマシだったと思うけど、あの人踊ってたっけ?背が高いだけで、電信柱みたいな印象しかないんだけど・・・長谷川初範は3人の中ではまあまあ踊れる方だ。ルックスも悪くない。ただしこの人の踊りを見続けるのはキツい。なぜなら本人が「オレってかっこいいだろ、上手いだろ」というのをムンムンに出しているからである。あ〜いやだ。こういう男にロクなのがいない。美人は3日で飽きられるらしいが、カッコだけを売りにしている男なんて3秒で鼻つまみよ。なぜこんなボロクソに書くのか。それはこの“スーパートリオ”がこの公演をすべてぶち壊しにしてくれたから。ダビ・エル・ガジとミゲル・ラビの、それはそれは本当に素晴らしいカンテソロ(マルティネーテ)の時に3人が踊りで乱入してきてカンテぶち壊し。あまりにも踊りがひどいので目を閉じる。目を閉じても足音が聞こえてくる。どうしたらこんなひどい音が出せるのだろう。また、モネタが踊り終わるごとに3人が登場、彼女の踊りの余韻に泥を塗って行く。しかもモネタの最後のソロのソレアで、舞台にパルメーロとして座っていた。もう、その椅子に座っている姿を見るだけでげんなり。(いいアーティストというのは椅子に座っているだけでも分かるものである。)しかも予想通りのひどいパルマ。勘弁してほしい。極めつけは、ソレアの最後、ブレリアでモネタと一緒に踊っちゃった。

    あ〜この3人がいなければ・・・・なんでモネタはこの3人を起用したんだろう。自分の引き立て役?それとも何か借りでもあるのか・・・

    それ以外は全てすごくよかった。モネタはカスタネットでペテネーラを踊ったり、マントンとバタ・デ・コーラでサンブラを踊ったりと、彼女の新たな面をたくさん見せてくれた。タラントの歌ぶりの部分は気合いが入り過ぎて、でもその割にはカンテをちゃんと飲み込んでいない。(タラントを踊るのは難しいなと改めて思う)でもタンゴに入ってからすごくよかった。最後のソレアもマヌエラ・カラスコをかなり意識しているみたいだけど、でもよかった。その方向性が好きだ。

    ガジとラビもよかった。やっぱりラビはすばらしかった。(ミゲル・ラビのすばらしさは、このビエナルブログ①で詳しく書いています)会場からもカンテの好きな人の「OLE」がさかんに飛んでいた。そうだよね。いいよね。私も好き。そう思った瞬間が何度もありました。

    ギターのミゲル・イグレシアスとパコ・イグレシアスもよかった。音楽的にすごく素敵。よくを言えばもっと強くががががが〜と弾く瞬間があってもモネタの踊りがいきるんじゃないかなと思う。

    ゲスト出演したディエゴ・アマドールのピアノ。これもよかった。もう少し聞きたいくらい。

    今思ったけれど、私にとっての、今年のビエナルはミゲル・ラビに始まり、ミゲル・ラビに終わった。最後に彼のカンテで閉めることができてよかったのかもしれない。

    今年のビエナルは結構観た方だと思う。たくさんお金を使い・・・それはそれでキツいのだけど、観て勉強できることは数知れない。いろいろなことを考えた。そのうちの一部をブログにすることで自分の頭の中を整理することもできた。

    そして一流アーティストの舞台を生で観ることで、自分なんてまだまだまだなんだな、と改めて思う。ま、これでいっか、と妥協してしまう部分をそれじゃだめなんだ、と気合いを入れることができた。(でも気合いが入ったところでそれができるかできないかは別問題なんだけど。)私もがんばろう。自分のことを棚に上げて他人のこと言うのは簡単。じゃあ自分の踊りはどうなんだ?という話になってくるからね・・・(大反省)。

    来週の月曜日はセビージャでソロ・ライブを行います。小さなことからコツコツと。

    2010.10.18 // カハ・ネグラ -(セビージャ)開演22時、入場料5ユーロ

    Baile Cante Guitarra
  • 萩原淳子

 

  • フランシスコ・チャベス エル・プラテアオ
  • ウーリッヒ・ゴッドワード
    エル・リソス

 

そしてその次の日にはもうセビージャを発ちます。1週間の東京・中野でのクルシージョの後、妹の結婚式に出席するのです!

ではみなさん、またお会いしましょう。

2010年 10月14日 ちょっと風邪を引きました・・・みなさんもご自愛下さい。 セビージャにて

Oct 10

]みなさんこんにちは!今日も早速セビージャ・ビエナル鑑賞記第4弾です!

と行きたいところですが、昨日ある写真展を観に行ったら、このビエナルブログで紹介している写真家「ルイス・カスティージャ」さんがいらっしゃいしました。自己紹介をして「私の日本語のブログであなたの写真をお名前入りで載せているんですけど、よろしいでしょうか?」と伺ってみると、「もちろん!日本の人に私の写真を紹介してくているなんて、とても嬉しいよ!今度君のブログを見せて。私もホーム・ページを持っているんだよ。」とおっしゃっていました。

というわけでいつもご紹介している

【ビエナル・デ・アルテ・フラメンコ・セビージャ2010公式HP】www.bienal-flamenco.org

と、そこにアップされている写真を撮っていらっしゃる

【ルイス・カスティージャさんのHP】www.luiscastilla.com

を先にご紹介させて頂きます!ルイスさんはとてもいい方でした。このビエナル・ブログのおかげ(?)でお知り合いになれて嬉しかったです。もちろん、今日の写真も全てルイスさんのもですよ!

 

 

  • 9月30日(木)「HIBIKI este-oeste」マエストランサ劇場、小松原庸子スペイン舞踊団40周年記念公演

    【小松原庸子先生のインタビュー】(もちろんスペイン語で答えていらっしゃいます。)→
    775-yoko-komatsubara.html【公演の映像はこちら】779-hibiki-transforma-al-flamenco-en-nipón.html実はこの公演に本当は私も出演するはずだったのです・・・。庸子先生から「昨年の舞踊団マドリッド公演で踊った椅子を使った踊りとフィナーレのアレグリアスを踊ってほしい」との出演依頼を頂き、舞踊団スペイン公演に参加させて頂くのはサラゴサ万博、マドリッド公演に続き3度目になるはずだったのですが・・・練習日程がどうしても合わず、残念ながら今回は出演なりませんでした。これまでお世話になった舞踊団のみなさん。私は本当に群舞が苦手ですごくご迷惑をおかけしたと思うのですがみなさん親切にして下さって・・・。舞踊団外部のこんな私に声をかけて下さる庸子先生、縁の下の力持ちのスタッフのみなさん、いろいろなことを思い出すと、自分が出演する以上に緊張していました。客席で。「開演4分前です」という日本語のアナウンスが今日はなんだか誇らしく聞こえました。セビージャ最大の劇場「マエストランサ劇場」。お客さんは他のビエナル公演と比べると残念ながら少なめ。しかし、世界最大のフラメンコの祭典で日本の舞踊団が公演できるなんて本当にすごいことなのではないでしょうか。がんばれ、がんばれ、と誰にともなく心の中で唱えています。

    開演のアナウンス。しかしいつまでたっても客席の照明は落ちません。どうしたんだろう・・・。しばらくしてからプログラムの順番変更のアナウンスが流れました。この声はMさんだ!Mさんは舞踊団のスタッフの方。どんなに忙しくてもいつでも誰にも笑顔で応対して下さる。そのMさんの笑顔を思い出した時、上がらない幕の後ろからどどどどっという大きな音が。その瞬間私は昨年のマドリッド公演の初日を思い出す。共演のスペイン人の女性舞踊家の叫び声。彼女の衣装が見当たらないらしい。もう本番は始まっている。彼女はそれ着て今、舞台に出なければいけないのに。泣き叫ぶ彼女。衣装部屋と楽屋を走り回る舞踊団員と私。ああ!どうか、そんなことにはなっていませんように!!!!

    大丈夫。遅れたけど無事開演。照明が素晴らしい。衣装も美しい。舞踊団の群舞がさらに映える。今回の舞踊団員のほとんどの方とマドリッド、サラゴサでご一緒している。もうこうなると、いつものようにただの観客として観ることができない。がんばれがんばれがんばれ〜!

    ドランテスのピアノも英哲さんの和太鼓も英哲さん以外の太鼓軍団も素晴らしかったのだろうけど、私の意識は舞台の上にない。その裏にある。みんなちゃんと着替えられますように。緊張していませんように。がんばれがんばれがんばれ〜!

    庸子先生から踊ってほしいと言われた椅子を使った踊りが始まった。この中に私もいたはずだったのかな、なんてちょっと思ってしまう。自分が踊るのと踊るはずのものを客観的に観るのはこんなにも違うものなのか。もし踊っていたとしたら私はちゃんと自分の役目を果たせたのだろうか?そしてアレグリアス。マントンとバタ・デ・コーラを使っている。それらを扱い一人で踊るのだって難し。しかもそれを群舞として合わせるなんて。バタ・デ・コーラの高さ、角度、滞空時間、マントンの動き、それを群舞で合わせるのは至難の業だろう。そして位置取り。マエストランサの舞台は広いと言っても、出演者全員が舞台に乗っている場合、きちんと位置取りをしないと、きっとバタがぶつかる。マントンのフレコがひっかかる。

    公演前々日にセビージャ入りし、すぐにお稽古、本番を迎えたみなさんは、この公演後メキシコ公演へと旅立ってしまいました。舞踊団の方は慣れっこになっているこのハードスケジュール。でも身体には気をつけてほしい。そしてスタッフのみなさんも。舞台に立つこともなく、拍手をしてもらうこともない。でも舞台は踊り手だけでは成り立たない。「40周年」を迎えた小松原庸子スペイン舞踊団。私が生まれる前から存在してる舞踊団。40年という年月の重み。そして最後に、日本フラメンコ界のの先駆者のお一人として闘い続けていらっしゃる庸子先生。

    このブログを読んでいるフラメンコ練習生も私も、きっとみんながんばっている。いろいろなことと闘いながら。でも本当に大変なのは、道を切り拓くことだ。私が歩いている道はすでに誰かが切り拓いてくれたものなのだ。それを忘れて自分だけがんばっている気になっている私。そんな自分を恥ずかしく思う。

    がんばろう。そうして歩いていく跡が私の道になるのかもしれない。小さな小さな道だろうけど。

  • 10月1日(金)「NEGRO COMO LA ENDRINA」ホテル・トゥリアーナ、出演:イネス・バカン、ペドロ・ペーニャ、ペドロ・デ・マリア、コンチャ・バルガス、他

【公演の映像】787-vargas-peña-y-bacán.html

会場の「ホテル・トゥリアーナ」は実際にはホテルではない。普通に人が住んでいる。そのパティオ(中庭)に設置された屋外舞台。ここでのビエナル公演はたいてい夜23時過ぎに始まる。この公演は23時半。ビエナル期間中住人はベランダに飾り付けをし、そしてそこからフラメンコ公演を楽しむ。なんという贅沢。(左の写真には身を乗り出してフラメンコを楽しむ二人が映っていますよ。)22時以降音を出してはいけない、という法律で長年続いていたフラメンコ・フェスティバルがなくなってしまったというドイツ。日本でも住宅地でこんなに夜遅くフラメンコにしろコンサートにしろ行われるなんて考えられない。フラメンコが文化として生活に根付いている土地。ここでは他の劇場公演よりも圧倒的に地元の観客が多い。ハレオが全然違う。劇場での舞台作品を観るのもいいが、こういうフラメンコ公演もいい。照明や衣装がシンプルな分、アーティストの実力が問われる。個性が光る。

レブリーハの歌い手、イネス・バカン。すごく好きだ。観客のOLEを引き出すために大声を張り上げたり、(わざと)苦しそうな表情をしたり、そんな小細工する歌い手もいる中、イネスの歌は本当に彼女の心から出ている。シンプルで真実だ。ウトレーラのギタリスト、アントニオ・モジャ。彼のギターもそうだ。同じ薫りがする。

数年前、私はとあるプライベート・フィエスタに出演していた。そこでいつも弾いていたのがモジャだった。私はモジャのギターで1年半の間、何度も何度もソレアとアレグリアスを踊った。自分の踊りがいい時もあれば悪い時もあった。モジャのお陰で、ギターとカンテが自分の身体に入って身体から出て行くということを知った。そういう時、モジャは目を真っ赤にしてギターを弾いていたし、終わった後立ち上がって私をぎゅっと抱きしめてくれた。そしてそうでない時、ただ技術的に上手にしか踊れなかった時、モジャは私に何も言わない。何人かのお客さんは「君はバイラ・ビエンだね(上手に踊るね)」と言っていた。

いろいろなフラメンコがある。アーティストは自分の可能性を広げたり、それに伴いフラメンコの表現方法としての可能性も広がっていく。でもそれは表現「方法」だ。「方法」の前に、自らが表現するものがなければ。そしてその表現するものは一人一人の内面にある。内面が真実に迫っていれば迫っているほど、そこから溢れ出るフラメンコは「プーロ(純粋な、という意味)」なのだと思う。

「表現」とは、芸術というのを突き詰めて考えた時、厳密には何かを「表に現す」ことではない、と私は考える。内面にあるものが自分の中にとどめておくことができずに、ある瞬間をきっかけにそれが外に溢れ出ること。「表に現れて」しまうことなのではないか。フラメンコの原点というのは、そういう意味では芸術の極地にあるのではないか。いかに美しく見せるか、どれだけ難しく新しいことを行うか、もしくは逆にいかに自分が「プーロ」であることを見せつけるか、を競うことは、なんと虚しいことなのだろう・・・・。

  • 10月3日(日)「FLAMENCO SCHOOL MUSICAL」アラメダ劇場、ラウラ・ビタル・カンパニー  

    この公演は全くのノーマークだった。タイトルからして・・・「フラメンコ・スクール・ミュージカル」?きっと子供向けのフラメンコ・ミュージカルなんだろう。ところがどこからか招待券を頂き、日曜の夕方ならまあ、暇だし、行ってみるかと軽い気持ちで劇場に着く。

    すごい熱気。親子連れで満席。私は最後列の座席に座るしかない。入り口で頂いた公演プログラムを見てうなる。この公演はすごい。まずプログラムがビエナル公式用のものと、子供用のものと2つあるのだ。内容は同じ。でも子供用のものは、写真や字がカラフルで大きい。紙もつるつる光っている。確かにこっちのプログラムを見る方が公演への期待が高まる。そしてその出演者を見て驚く。この公演は当たりだ!!!踊り手に「JUAN AMAYA」の名前がある。フアナ・アマジャじゃないよ。フアン・アマジャ。 「EL PELON(エル・ペロン)」という日本人をナメたアーティスト名を持つこの踊り手は、ただの踊り手ではない。アルティスタだ。アルテ(フラメンコの芸術性)を持つ人。日本ではあまり知られていないのだろうけど、こちらには想像を絶する程の踊り手がまだまだいる。

    開演。座長の歌い手ラウラ・ビタルは「タナ・モンタナ」と称する「フラメンコ・スクール」の先生役として登場。この学校はフラメンコで子供を教育をする特別な小学校。その生徒達が小学生クイズ選手権出場することになる、というストーリー。開演前、降りたままのどんちょうの前でラウラがそれを説明する。それまでざわついていた客席の子供達はシーンとなる。一生懸命聞いている空気が伝わる。見えないけど彼らの目はきらきらしているだろう。(ま、私もだけど)

    どんちょうが上がって大笑い。写真上のバスが目の前に飛び込んで来た。舞台下手前方にはギターのエドワルド・レボジャールとパーカションの人がいる。彼らのブレリアのリズムで、ラウラはアンダルシア8県の地方の特色、その土地で生まれたカンテを紹介するレトラ(歌詞)で歌って行く。うまくできている。会場の子供達が楽しみながらフラメンコについて学べるようにできている。これはすごいわ。会場から大きな拍手がわき起こる。

    スクールバスは学校に到着。バスの黄色い車体が解体されると、その裏側は教室の壁になる。ラウラは クイズ選手権に向けて授業を進める。コロンビアーナ、グラナイーナ、ファンダンゴを歌っているのだが、歌詞でストーリーを表している。(ミュージカルだからね。)

    体育の授業になる。先の踊り手ペロンは体育教師役。カンティーニャスを踊る。時々バスケットボールをパスしながら生徒達も群舞で参加。動きは準備体操なのだが、不思議なことにフラメンコに見える。時としてペロンのアルテが炸裂。もちろんこの作品の中という限られた枠内ではペロンの全てを見ることはできない。それでも客席最後列まで伝わるペロンのアルテ。やはりこの踊り手はすごい。

    そしてこのペロンを起用したラウラ。えらい!!!上手な踊り手はいくらでもいる。サパテアードをだだだだ〜と打って子供達をびっくりさせることだってできたはずだ。でもあえてペロンを起用したラウラ。あなたは偉い。子供用のフラメンコだからって、子供にフラメンコが分かる訳ないだろう、なんて見くびってはだめだ。子供は大人以上に感性が豊かだ。そして偏見がない。アルテをアルテとして受け止めることができる。そして最初の出会いというのはとても大切だ。フラメンコ劇場公演を観るのが初めての子供達だっている。そんな子供達が初めて見るフラメンコの踊り手・・・それがペロン・・・いい。いい。とってもいい。

    こんなに何度も会場から拍手がわき起こった公演は初めてだ。私も本当に心から拍手していた。出演者も会場もみんなが一体になった公演。終演後誰もが笑顔だった。子供達が飛び跳ねている。皆幸せに溢れていた。

2010年10月10日(日)次回、ビエナル鑑賞記最終回となります! セビージャにて。

Oct 9

みなさんこんにちは!

早速ですが、前回ブログに引き続くビエナル鑑賞記第3弾です。

「ビエナル・デ・アルテ・フラメンコ・セビージャ2010」公式HPはこちら→www.bienal-flamenco.org

以下写真はこのHPから引用しています。(写真:ルイス・カスティージャ)

  • 9月25日(土)「Tomatito en concierto」マエストランサ劇場、出演:トマティート

マエストランサ劇場は大きい。舞台と客席最前列の間にオーケストラ・ピットがあるため、なんだか遠く感じる。でもこの劇場の穴場の席は「1ºTerraza」という席で、舞台正面の「Patio de Butaca」の両脇にある。両脇なんだけど、「Patio de BUtaca」よりもかなり高い位置にあるので、すごく見やすい。下手に「Patio de Butaca」の後ろの方の席をとるくらいなら、この「1ºTerraza」で観る方が私は好きです。そんなに見やすいのに、お値段もお手頃。

というわけでこの公演はその「1ºTerraza」の席に着く。そしたら偶然お隣が踊り手の松彩果ちゃんだった。二人で公演プログラムを見ながら、今日の踊りは誰なんだろうね〜、なんて話す。トマティートの公演には大体踊り手がゲスト出演してちょっと踊る 。なぜか今回のプログラムにはトマティート以外の出演者の名前が書いていない。

トマティートといえばブレリア!私は彼のブレリアが大好きだ。音の一つ一つがキラキラしていて立っている。あのコンパス感。彼のブレリアを聴いていると血液が沸騰してくるんだよ〜。これはブログでは表現できない。ごめんなさい。そのブレリアが始まって、隣の彩果ちゃんと私はのりのりになっている。踊り手がパルメーロ(手拍子でリズムを司る人)として出て来た。「ホセ・マジャだ」彩果ちゃんがつぶやく。「うんうん」とすかさず頷く私。アンダルシアのおじちゃん、おばちゃんが隣に座って一緒にハレオをかけるのも素敵だけど、異国で同じ国の人が隣にいるのも嬉しい。

3人の歌い手がカマロンの歌を次々と歌っていく。あ〜、私はカマロンの歌を生で聴いた事がない。彼はすでにこの世にはいない。トマティートのギター、カマロンの歌・・・CDで聴くだけでも大興奮してしまうのに、生で聴いたら私は卒倒してしまうかもしれない。

ホセ・マジャの踊りもよかったな〜。身体的に恵まれている。モデルのように背が高く手足が長い。舞台に立っただけで観客をぐっと引き込むことができる。以前エバ・ジェルバブエナが言っていた。「背が高いことと『大きい』ということは違う。背が高くてもただ高いだけの人は、『大きい』のではなくて『長い』人」 。名言。それ以来、背の高い踊り手を観る度に彼女の言葉を思い出す。残念ながら「長い」人を見かけてしまう今日この頃・・・この日のホセ・マジャは「大きな」人だった。

 

 

 

9月27日(月)「パストーラ」ロペ・デ・ベガ劇場 主演:パストーラ・ガルバン

 

OLE OLE OLE y OLE!この公演は本当にOLE! よくぞやってくれたパストーラ!ありがとう。

公演の映像→768-color-y-sencillez-en-el-baile-de-pastora.html

2年前のビエナルで上演した「Francesa」。拍手喝采だったけど私は好きではなかった。兄イスラエル・ガルバンの振付による作品で、あれだけの身体能力で踊ったパストーラは確かにすごいけど、彼女自身が見えてこなかった。「じゃあ、パストーラ・ガルバンという踊り手は、人間はどこにいるの? 」という疑問を私は持ってしまった。

今回の公演も振付は兄のイスラエル。でもパストーラ全開の舞台。だって公演名が「パストーラ」だよ。「Triana Pura」を意識した公演みたい。でもそれをできるのはパストーラだから。パストーラに習ってパストーラの振付を踊る人は結構多い。日本でも。でも彼女レベルの身体能力とコンパス感、フラメンコ性がなければそれは無理だ。本人はムイ・フラメンカのつもりで踊っているのだろうけど、その薄っぺらさは見え見え。残念ながら。パストーラは全てにおいて傑出している。その傑出具合を兄イスラエルの振付が最大限に引き出したように見えた。そんなイスラエルにもOLE! だ。

そしてギター、カンテにもOLE!である。ラモン・アマドールのギター。素晴らしい。この人のギターを聴くと他のギタリストがなんだか可哀想になってきてしまう。(もちろん可哀想でないギタリストもいますが)なんと深い音なのだろう。「上質のハモンは切ってお皿に乗せるだけでいい。そのお皿には花もソースもいらない。 フラメンコも同じだよ」と言っていたのはとあるギタリスト。ラモンのギターはそれだ。その通りだ。彼の手がギターに触れた瞬間にフラメンコ波が押し寄せてくる。私がギター練習生だったら迷わずラモンに師事する。踊り手である私は・・・いつか彼と共演できる日が来るだろうか・・・・・来てほしい。

カンテはホセ・バレンシア(ホセリート・デ・レブリハ)とダビ・ラゴス。この二人を揃えるところもすごい。ホセ・バレンシアは先日のブログでも紹介した、アンドレス・マリンの公演でコンチャ・バルガスに歌った歌い手。この日もすごかった。この人がちょっと歌うだけで、舞台はこの人の色に染まってしまう。中途半端な踊り手だったら完全に彼に持って行かれてしまうだろう。この日の彼のソロのソレアが素晴らしかった。そして今波に乗っているダビ・ラゴス。別の日で彼のソロ・コンサートもあったが私は残念ながら行けなかった。ソロで歌ったマラゲーニャがすごかった。この人もいい。二人とも好きだ〜!!!

パルマのボボテ。彼がパルメーロとして出ている舞台で、ちょっとボボテうるさいな、というか目立ち過ぎというか・・・正直そういう印象を持ってしまったことが過去に何度かあった。過去踊り手だったという自尊心が見え隠れしてパルメーロに徹する事ができないのかな・・・なんて思ったけど・・・でも今日はそうは思わなかったよ!みんな一体になっていたからかな。最後にちょこっと踊るボボテもいいね。

とにかくみんなよかった!終わりそうでいつまでもなかなか終わらない最後。その「しつこさ」もアンダルシアのおばちゃんみたいだ。(そこがまたいいところなんだけどね。)しつこいと東京では嫌われる。みんなさらっとした人間関係が好きだから。他人と深く関わりたくない。でもここではしつこくしないと冷たい人間と思われてしまうのだ。

欲を言えば、今度はパストーラ自身が振付,構成した舞台を観てみたい。それでこそ本当の「パストーラ」。パストーラの、パストーラによる、パストーラのための 「パストーラ」!!!!!

  • 9月28日(火)「ALGO」セントラル劇場、主演:コンチャ・ハレーニョ ごめんなさい。なんとこの公演で私は眠ってしまいました・・・・。これじゃブログにならないよ〜。ということで覚えているところだけ・・・。

    舞台上手前方の床に赤いひらひらのついた大きな布というか絨毯みたいのが置いてありました。その回りを黒い服を着た、恐らくギタリストや歌い手達が囲んでその布を見下ろしています。赤いひらひらのついた布・・・なんだか巨大伊勢エビの殻みたい、と思った瞬間それが本当に動き出す。びっくりした〜!どうも布の下でコンチャ・ハレーニョがもぞもぞ動いているみたい。

    舞台が暗転になってその間にギタリスト達が伊勢エビを持ち去ったらしい。舞台上手前方にコンチャが残される。すると今度は下手上方から白い布が垂れ下がっていて、コンチャがそれに巻き付いたり離れたり・・・。(これでバイクに乗ったら月光仮面?)なんだろうこれは。あれ〜、私、フラメンコの公演を観に来たんじゃなかったっけ????

    今度はバタ・デ・コーラとアバニコで登場。(写真左)身体の動きもバタの動きも美しい。技術的にどこをとっても優等生。でも何か伝わってこない。彼女自身が伝えたいこと、彼女のエネルギーみたいのが見えてこない。感じられない。う〜んと思っているうちに、だんだん眠くなってしまったらしい。この踊りの最後の拍手で目が覚めた。

    その後は本当に睡魔との闘い。ほとんど記憶にないのです・・・・(写真右の黄色い衣装なんて、全く記憶にない・・・)公演が終わった後、一緒に観に来ていた生徒さんに聞いてみた。「私眠っちゃったんだけど、公演どうだった?」すると「実は私も・・・眠くてガム噛みながら観てたんです。」だって。あれま〜。

    というわけで家に帰ってみてネットで調べる。公演前の彼女のインタビューを発見。→ 771-concha-jareño.html それを聞いてみると、どうも私が見た最初の「伊勢エビ」と「月光仮面」は彼女が内面に持ち続けていた「恐怖」を表していたみたい。それを表に出す必要性を感じた、表に出す事で癒すことができる、悲しみや苦しみは変わらないのだけど。というような内容のことを話していました。なるほど〜。確かに言われてみればそうともとれなくもない・・・。

    ちなみに、バタ・デ・コーラとアバニコの踊りの映像もありました。→773-jareño-reinventa-el-baile-flamenco.html

う〜ん、それにしても眠ってしまって本当にごめんなさい。インタビューを聞いていると、その後にミロンガ、ロンデーニャ、マルティネーテも踊ったらしい。残念。そっちの方が本当は観たかった・・・・今度はちゃんと観るようにしよう。だから許してね。

2010年10月7日 新しいブーツがほしい今日この頃。セビージャにて。

Oct 3

みなさんこんにちは!

早速ですが、前回ブログに引き続くビエナル鑑賞記第2弾です。

「ビエナル・デ・フラメンコ・セビージャ2010」公式HPはこちら→www.bienal-flamenco.org

以下写真はこのHPから引用しています。(写真:ルイス・カスティージャ)

  • 9月20日(月)「La Pasión según se mire」ロペ・デ・ベガ劇場、出演:アンドレス・マリン、コンチャ・バルガス、ホセ・デ・ラ・トマサ、ローレ・モントージャ他 個人的にはアンドレス・マリンの踊りはあまり好きではありません。彼の踊りを観ていると、どうしても私の脳裏にはイスラエル・ガルバンがよぎってしまう。でもこの公演はよかった!!!アンドレス・マリンの踊り云々ではなく、舞台作品としてのアイディア。そしてゲスト出演で踊ったコンチャ・バルガス!この人は本当に・・・・アルティスタだ。出て来ただけで。もちろん踊り出したら・・・・!!!!!!そして忘れてはならないのは、このコンチャに歌ったホセリート・デ・レブリハ(レブリハのホセという意味)。彼のカンテなくしてあの踊りはなかったと思う。コンチャの踊りなくして彼のカンテもなかった。コンチャが生まれ育った土地、レブリハはセビージャとヘレスの中間くらいにある村。ものすごいアルテのある土地だ。そのレブリハの二人が生み出したフラメンコ。ヘレスのブリリアも素晴らしい。でもレブリハのブレリア(ロマンセ)も私にとっては格別。そしてカンティーニャスも。カディスのアレグリアスがあり、レブリハやウトゥレーラ(この村もアルテに溢れている)のカンティーニャスもある。フラメンコとはなんと豊かな芸術なんだろう!アンドレス・マリンはコンチャを最大限引き出すためにホセ・バレンシアを呼んだのかもしれない。きっとカンテが好きな踊り手なのだろう。 そのフラメンコにOLE!である。
  • 9月21日(火)「Sonerías」マエストランサ劇場、出演:ファルキート、他

 

 

今年のビエナルのチケットは例年よりも数ヶ月早めに売り出されて、私は遅れをとった。気づいた時には観たい公演のほとんどが売り切れになっている。インターネットというのはすごい。ファルキートの公演もそう。がっかりしていたが、9月に入ってからなんとなくビエナルのHPを見ていたら、売り切れたはずの公演のチケットが数枚売りに出されている。しかもすごくいい席!なんで〜?招待席のあまりなのかな?なんでもいいけどとにかくすぐ買う。そうして買えたファルキートのチケット。あ〜、観たい、ファルキート。いつもより3割増着飾ってマエストランサ劇場に向かう。

マエストランサ劇場満場の観客の熱気が幕を開ける。みな私と同じ気持ちだろう。しかし・・・舞台奥に設置されているバルのカウンター。そしてそれに当てられる照明。見た瞬間にいやな予感が・・・。あまりにも安っぽい。マエストランサ劇場で、ファルキートの公演でこれはないだろう。そしてその予感が的中し始める。舞台正面の客席奥からファルキート一行が歩いて舞台へ。その演出も手垢がついている。期待が失望に変わり始める。で、でも・・・ファルキートの踊りを見さえすれば!!!一縷の希望をこれから始まる舞台にかける。

キューバ音楽とフラメンコのフュージョンというアイデアが悪いのではない。そんなフュージョンはフラメンコでない!というつもりもない。そんなことよりも、舞台全体がてんでばらばらだ。ファルキートの他に出演した4人の女の子達。ファルキートの生徒なのかな。サパテアードは確かにすごい。でも舞台に立っている時の、なにもしていない時の、品性というか踊り手としての品格というかそういうものが全くない。がんばって踊っているのはよく分かるけど、あんなに足が動いてすごいなと思うけど・・・その存在が舞台の格を確実に落としている。ファルキートはなぜ彼女達を起用したのだろう?

全体的にフラメンコの舞台というより、安っぽいミュージカルみたいだ。振付、構成、照明、舞台転換、全部が。ミュージカルが悪いわけではないのだけど、それはファルキートがすることではないだろう、というよりそうあってほしくない。最高級の100%バージン・オリーブオイルがほしくてそれを買ったのに、中身がひまわり油だったら・・・・?でも油は色を見れば大体わかる。フラメンコの舞台はチケットを買い、席に着き、幕が上がるまでは分からない。

そして肝心のファルキート。何を踊ったっけ?タラント少しと、4人の女の子達とそれぞれセビジャーナスを踊って・・・・。あ、グアヒーラもあったっけ?にしても、ほんのちょっとしか踊っていない。フィン・デ・フィエスタのブレリアも4人の女の子達が皆一人ずつ踊ったのに、ファルキートは踊らなかった。なんで?みんなあなたの踊りを観たくてここにいるのに。

最後にすごいことが起こった。アーティスト達が一列に並んでいる。何が始まるんだろう?そろそろ本当にファルキートの踊りが観たいよ。と、その時ファルキートが言った。「muchas gracias.(どうもありがとう)」。・・・・一瞬の沈黙。マエストランサ全体の沈黙。ええええええええっ!もしかして、これで終わり????だってまだちゃんと踊ってないじゃん!そりゃないでしょう!!!ぱらぱらと拍手が起こり始める。誰一人として舞台が終わったことが気づかなかったはず・・・こんな公演ってあり?しかもファルキートだよ。

一体なんだったんだろう、という疑問を持ち会場を後に。マエストランサ近辺はフラストレーションの渦になっている。ちょっと考えてみた。もしかして、ファルキートはあの舞台をブロードウェーとかで上演したいのかな・・・「フラメンコ・ミュージカル with ファルキート」????・・・・う〜ん、それだったら理解できる。あの舞台。

にしても、どうしようこのフラストレーション。仕方がないので友達とサルサを踊りに行っちゃったよ〜。あ〜あ〜。

  • 9月24日(金)「Mujerez」ロペ・デ・ベガ劇場、 出演:フアナ・ラ・デル・ピパ、ドローレス・アグへータ、ラ・マカニータ 、他今日こそ!と期待してロペ・デ・ベガ劇場にかけつける。私の好きなドローレス・アグヘータ。好きというか・・・・この人の歌は心に届く。血管の中に入り込み、彼女の歌は私の全身をかけめぐる。上記主演の3人が舞台に立ちトナーを一人ずつ歌う。マカニータもよかった。でもドローレスの歌を聴くと涙が自然と出てしまう。気づいたらそのマカニータも涙をぬぐっている。そして続く全員のファンダンゴ。 涙が乾ききらないうちに、またどんどん涙が出てくる。そして最後のブレリア。今日来ることができてよかった。以前私のクルシージョの「マルティネーテ」クラスで、ドローレス・アグヘータのCD「La Hija del Duende」の中のトナーを使ったことがある。生徒さんのほとんどが誰もドローレスの名前も知らない。クラスの中で踊ることをやめ、ただ聴いてみる。みんなしーんとしている。「そんなことより早く踊り教えてよ」と心の中で思っている人もいるかもしれない。でもいいのだ。私は自分が教えたいことを教える。振付だけほしい人は他のクルシージョに行けばいい。そしてそこで歌われていることを訳してみた。もちろん日本語に訳すと(しかも私の訳だし・・・)ニュアンスがかなり変わってしまうのだろうけど、ただ“ミュージック”として歌を聴くのではなく、その歌い手が何を伝えたいのか、少しでも感じてほしかったから。カンテはその人の人生から出てきている。その人そのものでもある。特にドローレスの歌は。クラスの後、しばらくしてからある生徒さんから言われた。「あのCDを探してみたんですけど、廃盤になっているそうです。」・・・・・・・・・・そんなことってあるのだろうか。すごくショックだった。でも別の生徒さんが言っていた。「『MUJEREZ』のCDはあります。」おお!もっともっと歌を聴きたい。そう切に感じた夜だった。2010年10月3日 セビージャにて。