みなさんこんにちは。いかがお過ごしでしょうか?
こちらセビージャはまた暑くなりました。日差しガンガンの毎日です。
お陰様で一昨日のフラメンケリーアでのライブは無事終了しました。これまで以上にたくさんのお客様にお越し頂き感謝しています。ありがとうございました!
・・・・がそれに比例してライブ中に携帯で撮影する人の数も増加・・・・大体セビージャのタブラオって写真も動画も撮影禁止にしています。ショーの最後数分だけ撮影タイムを作るタブラオもあるようですけど、基本的には撮影禁止。まあ当たり前といえば当たり前ですが、私が時々踊らせて頂いているこのフラメンケリーアというタブラオはどうもそれがゆるいようで・・・これまでのショーでも好き勝手に写真撮影や録画しているお客様(多分その大半は観光客)がちらほら目についたのですが、一昨日は、舞台に立った瞬間に、「ゲッ!!!!何なの、この携帯の数は!!!」とギョッとするほどお客様が携帯を構えていました・・・中には舞台真正面に立って、最初から最後までずーーーーーーっと録画していた人も。
ライブの最初はミゲル・ペレスのギターソロで始まり、大盛り上がり。壮絶テクニックを駆使したグアヒーラ。あれを聞いて興奮しないお客様はいらっしゃいません。(笑)その後は私のバタ・デ・コーラのガロティン。そのガロティンで舞台に立った瞬間に、その携帯の数に唖然としてしまったのでした・・・。それが影響したのかしないのか・・・ガロティンは始終不調。なんとなくギターとカンテと私がかみ合っていかない感じ。この流れを変えなければと精神力を強く持つものの、それも逆効果なのか、なんだか空回り・・・。にもかかわらず、なぜかお客様には大ウケ。踊りの中で私が止まる度に拍手が起きて、心の中では(「いやいや、こんなはずじゃないんです。こんな踊りに拍手しないで下さい!!!」)と叫びつつ、でも顔は笑顔、という複雑な心境でした・・・・。そしてそのままお客様大喝采の中、萩原は笑顔で挨拶をし、しかし舞台からの階段はどよーんとした気持ちでトボトボ降りたのでした・・・
なんであんなことになってしまったのだろう・・・っと歩きながら一瞬ぼーっと考えていたら、しまった!!!!そんな場合ではなかった!!!次の踊りの出番まで5分くらいしかない!!!早着替えをしなくては!!! だーーーーーーっと楽屋までの廊下を、ブラウスを脱ぎながら走り、次のソレアの衣装に着替。一昨日は夫のアントニオが写真を撮りに来てくれたので、着替をちょっと手伝ってくれたのですが、いや、あれはどうなんだろう。気持ちは嬉しいが、悪いけど一人で着替えた方がよかったような・・・(笑)
早着替えって本当に苦手です。いつまで経っても慣れません。(笑)踊り手が3〜4人くらい出演するタブラオであれば、踊り手同士で着替を手伝ったりしますけど、一人だと全部自分でやらなくてはならないから大変です。着替に時間がかかり過ぎて、自分の踊りまでの出番に時間が空き過ぎてしまうと、もちろんその間はギターやカンテで延ばしてくれるアーティストもいるけど、あまり長過ぎても明らかに着替えの場繫ぎっていうのがミエミエでお客様も冷めてしまう。ってなわけで、なるべくショーの流れを妨げないように早着替えするわけです。
ガロティンの時に着ていた黒のブラウスを脱ぎ、バタ・デ・コーラも脱ぎ、ふいてもふいても吹き出して来る汗にひっかかりながら、ソレアの衣装を着る。頭につけている花もイヤリングも靴も全部替え、化粧も多少直し、水分補給もする。1分1秒を争う時間との闘い。もちろん休んでる暇なんてありません。そんでもって衣装の上につける黒のシージョ(ショールみたいの)を、一緒に楽屋にいてくれたアントニオに「黒いの取って!」と頼んだら、・・・・・なんと、さっきガロティンの時に着ていた、そして今脱ぎ捨てたばかりの黒のブラウスを手渡された・・・・分かりますか?この状況?!
今脱ぎ捨てた衣装を、また着るってかあああああああ?!
叫びそうになる衝動をぐっと抑え、「黒いの」って言っちゃった私が悪かったんだ。確かにガロティンのブラウスも黒だし。と地球をひっくり返して考え直し、自分で黒のシージョをとる。つける。後ろの部分はアントニオにつけてもらってもよかったんだけど、いや、自分がつけた方が早いと思い直し、自分でつける。アントニオも私の殺気だっている雰囲気を察知しているのか、黙って隣に立っている。そして他の場所も安全ピンでとめている時に、アントニオが言った。
「あの歌い手はインマ・ラ・カルボネーラって言うの?」
・・・・この瞬間、怒りを通り越して異様な冷静さを保ってしまった私。
「アントニオ、彼女はインマ・リベーラで、ラ・カルボネーラとは別の歌い手なの。でも今、この状況で質問する内容ではないよね。」
そう静か〜に言うと、アントニオはささささーっと3メートルくらい後ずさりしました。それでよし。
そしてまたダッシュして舞台袖まで走る。私が着替えていた間にインマがティエントをソロで歌ってくれていた。私が到着した時にちょうどティエントの最後、タンゴに入っていたところだったのでセーフ。その時点でもまだ汗は引かない状況なんだけど、そのまま私のソレアに突入。その時には件の携帯撮影のことはすっかり忘れていたかなあ。確かに舞台の上で目に入ったと思う。でもガロティンの時ほど気にならなかったかなあ。インマのソレアは力強くて、それを受け止めるには自分も強く深くなっていかないと彼女のカンテで踊ることはできない。ソレアはやっぱり私の曲だなと思いながら踊ったのでした。
その後のフィン・デ・フィエスタもまあ普通に終わり、ライブ終了。帰り際のお客様に挨拶したら、みんな顔がキラキラして「おめでとう!」と声をかけて下さったり、握手されたり、ほっぺたにキスされたり。聞いてみたところ、フランス、ウルグアイ、アルゼンチンetc、いろいろな国の観光客の方々が多かったです。セビージャの知り合いのフラメンコ愛好家の方々や、セビージャの生徒さん達も来て下さいました。ありがとうございました。
でもね、やっぱりまた勉強し直さなければと思うのです。もちろんお客様に喜んで頂けて嬉しい。でも同じように、私も自分の踊りに納得したい。もしかしたらそれは生涯できることではないのかもしれないけど、でもやるからにはちゃんとやらなくては。人間だからいつでもどこでも思うように踊れるわけはない。完璧に踊ることなんてできないし、フラメンコには完璧なんてないのだけど(完璧な踊りはフラメンコとは言わないと思う。)、自分ができる限りのことはしたいと思います。それがどこかでちょっと甘かったんじゃないかな、今回は・・・。そんな気がするからです。
落ち込んでも仕方がないから、反省してまたスタートです!
では皆さんまたお会いしましょう。
写真:アントニオ・ペレス
2016年5月20日 セビージャにて。